【リレー談話室・JAの現場から】消費者に選ばれる乳製品を2020年2月20日
◆2020年幕開け
2020年は東京オリンピック開催となり、皆さん大きな期待を持ってスタートしました。北海道も札幌でマラソンと競歩の開催が決まり、開催場所の仲間入りとなりました。一方、オリンピック後の経済状況を不安視するコメントも出ており、2020年は世の中の大きな動きがある年かもしれません。さらに、1月中旬から大きな騒ぎとなっている新型コロナウイルスによる肺炎の拡散が、今後社会にどのような影響を及ぼすのか見当もつきません。
伝染病に対する防疫は、人畜を同一にしてはいけませんが、基本となる考え方は同じで、口蹄疫や豚熱などのウイルスには、初動から徹底することが求められており、畜産の業界では当然のことです。今回のコロナウイルスに対する中国政府、WHO、日本政府の初期対応はまちまちで絶対に拡散させないことを前提にした対応であったかどうか疑問が残ります。
物事は、ネガテイブになりすぎると何もできなくなってしまうことも多々ありますが、防疫や人の生命に関わることは、限界以上の取り組みをする姿勢が重要ではないでしょうか。
◇ ◇
酪農畜産の状況は、乳価が100円を超えて3年が経過し、乳牛などの個体販売価格もいくらかは下がったものの、従来の価格の2倍の水準が維持されています。当然、酪農家の経済状況は安定し、施設や機械の導入については、畜産クラスター事業による国の後押しもあり積極的に行われています。さらには、自家用車や住宅など生活面にも大きな投資がされました。
北海道は昨年の夏は、一昨年と大きく違い、好天が続き乳牛の基礎飼料となる牧草やトウモロコシサイレージが総じて豊作であり、秋口以降順調な生乳生産がなされており、この年度の生産量は409万tと初めて400万t突破の見通しが発表されています。次年度はさらに増産基調で423万tを見込んでいます。
本州の酪農基盤が低下していますが、2020年度は、全国で2017年と比較し20万tあまりも増産することになります。だがコロナウイルスによる伝染病リスクや東京オリンピック後の経済の減退が予想される中で、消費者に全量消費して頂けるかどうか大きな不安を覚えます。
過去に大きな生産調整が3、4回行われていますが、その構図はここ最近の酪農情勢が非常に近いと感じられます。いずれも酪農基盤強化を官民挙げて取り組み、酪農家が一生懸命働いた結果、生産拡大となることは想定の範囲内でしたが、その後の経済の落ち込みの影響で消費者の財布のひもがゆるむことがなく、生乳の行き場が失われています。
10年前にはその打開策としてチーズ奨励を優先したものの、その影響で数年後にはスーパーの棚からバターが消え社会問題に発展し、消費者に対して食を安定的に供給するという責任を果たすことができなくなった裏目の施策もありました。
TPPや日・EUのEPA,日米貿易協定で海外の乳製品に対する関税が徐々に低下し、安価で輸入しやすい環境が整っています。そのような中でちょっと高いけど国産で安心、安全な製品を安定的に提供することで消費者に選択される環境づくりが急務と感じています。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
令和7年度スマート農業アクセラレーションサミット開催 JA全農2025年12月22日 -
【人事異動】ヤマタネ(2026年1月1日付)2025年12月22日 -
シンとんぼ(173)食料・農業・農村基本計画(15)目標等の設定の考え方2025年12月20日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(90)クロロニトリル【防除学習帖】第329回2025年12月20日 -
農薬の正しい使い方(63)除草剤の生理的選択性【今さら聞けない営農情報】第329回2025年12月20日 -
スーパーの米価 前週から10円上がり5kg4331円に 2週ぶりに価格上昇2025年12月19日 -
ナガエツルノゲイトウ防除、ドローンで鳥獣害対策 2025年農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2025年12月19日 -
ぶどう新品種「サニーハート」、海水から肥料原料を確保 2025年農業技術10大ニュース(トピック6~10) 農水省2025年12月19日 -
埼玉県幸手市とJA埼玉みずほ、JA全農が地域農業振興で協定締結2025年12月19日 -
国内最大級の園芸施設を設置 埼玉・幸手市で新規就農研修 全農2025年12月19日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】「経済関係に戦略性を持ち込むことなかれ」2025年12月19日 -
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日 -
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
α世代の半数以上が農業を体験 農業は「社会の役に立つ」 JA共済連が調査結果公表2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日


































