【小松泰信・地方の眼力】アベに刃物は持たせるな2020年3月11日
高知新聞(3月6日付)には、興味深い記事多数あり。
コラム「小社会」によれば、「貧しさゆえに恋愛と結婚、出産を諦める若者たちを、韓国では『三放世代』と呼ぶ」そうだ。「少子化日本にも同じ空気は流れていよう」とし、「格差是正は映画の中にとどまらず、今やグローバルな課題。これを諦めることだけはしたくない」と、訴える。
◆なぜか岡山二段重ね
社会面に目を転ずれば、岡山関連の褒められない記事が二段重ねとなっている。
上段には、「服飾大手社長セクハラか」の見出しに、当事者石川康晴社長の写真付き。岡山市に本社を置く、ストライプインターナショナルの社長に関するセクハラ疑惑問題。2018(平成30)年12月、当時の取締役が4件の疑惑を提起したことで査問会が開かれた。そこでは、被害者とされる社員の申告がないことなどからセクハラは認定されず、「女性社員との......距離の近さに問題がある」として、「厳重注意」となったそうだ。
石川氏は、翌19年3月から内閣府の男女共同参画会議の議員も務めていたが辞任する意向を表明した。
なお朝日新聞DIGITAL(3月6日18時53分)によれば、6日時点でもセクハラ行為については認めてはいない。同日開かれた臨時取締役会で「一連の報道でお騒がせしており、会社への影響を考えて辞任したい」と申し出たとのこと。ただし、同社株式の40%を保有し、オーナである立場は変わらないようだ。
下段には、「加計 韓国不当不合格報道」の見出し。設置をめぐる疑念が今も消えることのない、加計学園が運営する岡山理科大学獣医学部(愛媛県今治市)の入試において、韓国人受験生が不当に扱われたことを3月5日発売の週刊文春が報道した。これに関して、5日の参院予算委員会で石川大我議員(立憲民主党)が質問。同学部の設置問題に深く関与していた萩生田光一文科相は、「大学側に事実関係の確認と速やかな回答を求めた」と答弁。同日、学園側は「入学選抜試験は一貫して適正に実施している」とのコメントを出した。
週刊文春の記事は、「獣医学部獣医学科が昨年秋に実施した推薦入試で韓国人受験生8人の面接試験が一律で0点とされ、全員不合格になった」ことを報じたものである。
ほぼ一年前まで大学教員として、いやになるほど推薦入試に関わった者として、8人の受験生が全員0点であることは信じられない。8人が同一国籍であることから、不合格に導く極めて強い意思が働いたことが容易に想定される。
◆緊急事態宣言は劇薬
そして、高知新聞の社説は、新型コロナウイルスの感染拡大への対応を巡り、安倍晋三首相が法整備に乗り出すことを決め、野党5党の党首に協力を要請したことを取り上げている。法改正の基本は、2013(平成25)年施行の新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象に新型コロナウイルス感染症を追加することである。
社説子は、首相が宣言する「緊急事態宣言」が「人権や経済的私権の制限という『劇薬』を伴うこと」に、強い危機感を滲ませ、「あえて法改正し、追加する根拠は不透明だ」とする。さらに「安倍首相は既に、イベントやスポーツの自粛や小中高校の一斉休校を要請し、さまざまな混乱を経て実施されている。首相はこれらの判断を政府の専門家会議に諮らずに、政治判断で決めた。現在の措置には科学的根拠もない」ことを指弾し、「劇薬の使用には慎重なうえにも慎重でなければならない」と、くぎを刺す。
◆「本音のコラム」三連発
東京新聞の「本音のコラム」においても、3人の識者が連続してこの問題に厳しい声をあげている。
3月9日、宮子あずさ氏(看護師);科学的根拠無き号令を「政治判断」と胸を張る現政権の幼さには愕然とするばかりである。この乗りで緊急事態を宣言され、私権が制限されるのは恐ろしいことだ。独善を避けるための手順も踏まず、科学的根拠を軽んじる人間に、これ以上の権力を与えてはならない。
3月10日、鎌田慧氏(ルポライター);水際の防疫に失敗して全校休校の強行。官房長官も文科相もアッと驚く暴政(非正規労働者の死活問題)だった。いま、どさくさまぎれに「緊急事態宣言」を伴う法律を強化しようとする。憲法改定の重要な柱「緊急事態条項」導入。油断も隙も内閣だ。
3月11日、斎藤美奈子氏(文芸評論家);大地震であれ感染症であれ、すべての自然災害は人災化する。だから戦争や政治的な動乱に似るのである。権力はそこにつけ込む。緊急事態だ非常時だという文言は魔の囁き。注意したほうがいい。
◆「伝家の宝刀」を持たせていいのか。アベだぜ!アベ、ヤベェ!
当該法の改正案は3月10日に閣議決定され、国会に提出された。11日に衆院内閣委員会で審議入りし、13日の参院本会議で成立する見通し。毎日新聞(3月11日付)によれば、「国会審議では、緊急事態宣言の発令要件や、発令後に可能となる外出自粛要請などの『私権制限』にどう歯止めをかけるかが焦点となる」とのこと。ここでも熟議なき審議か。
同紙で川本哲郎氏(同志社大教授・刑事法)は「特措法で多くの私権制限が可能となるが、実際に強権発動の必要性はほぼないと見ている。イベント自粛や一斉休校など首相の要請を、多くの人が聞き入れているためだ。最後のとりでとしての強制力は必要だと思うが、行使は慎重な姿勢が要請されるので、監視していく必要がある」と、楽観的なコメントを寄せている。
東京新聞(3月11日付)で水島朝穂氏(早稲田大法学学術院教授・憲法学)は、「『緊急事態宣言』は国民の憲法上の権利を制限する恐れがある。......手段の副作用が極めて大きく、宣言を発する要件も明確ではない。......。首相はすでに2月に大規模なイベント開催や営業自粛、小中高校などの一斉休校要請を専門家会議や関係閣僚との協議を経ずに唐突に打ち出した。特措法改正はこれらの強引な手法を事後的に正当化する。検察官の定年延長などで無理筋の法律解釈をしてきた首相が『解釈ではなく立法が必要』というのは解せない。現行法を駆使して感染症対策に取り組むべきだ」と、懐疑的なコメントを寄せている。
西村康稔担当大臣が、「万が一に備えて準備するものだ。......そういう事態にならないことを望んでいる。まさに伝家の宝刀であり続けてほしい」と語っていた。西村氏には想像したくないことだろう。狂気の主が凶器を手にして狂喜乱舞する地獄絵図を。
「刀」だからこそ、「劇薬」だからこそ、持たせていい人かそうではない人かを峻別しなければならない。
明治生まれのばぁちゃんも言うてたよ(島田洋七風)、「あぎゃんオトコにゃ、刃物はもたすんな!」って。
「地方の眼力」なめんなよ
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