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【小松泰信・地方の眼力】キー・ワーカーへの敬意と評価2020年4月8日

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【小松泰信・(一社)長野県農協地域開発機構研究所長】

 安倍晋三首相は、新型コロナウイルスに対処する緊急事態宣言について事前報告した4月7日の衆院議院運営委員会で、今回のような緊急事態に対応するために、憲法改正による緊急事態条項導入も国会で議論する必要があるとの認識を示した。これに対して、衆院憲法審の野党幹事らは、与党が求める審査会に当面応じないことを確認した。
 「コロナ危機に乗じて、終息の後は改憲論に弾みをつけたいとの意図が透けて見えると受け取られても仕方がない。これでは政府と国民の真の信頼関係は生まれない」とは、北海道新聞(4月8日付)の社説。惨事便乗好きの首相ならではの言動には要注意。 

地方の眼力・本文用画像(小松泰信先生)◆飲食業を営む息子からの続報
 店は4月5日から閉めている。12日までの予定だったけど5月6日迄は、居酒屋は開けたら悪みたいな感じ。固定費としては従業員の給与と家賃。店を閉めても、従業員には休業補償で6割は出してあげなくてはいけないので雇用調整助成金を申請準備中。2~3ヶ月でおりるとの噂。家賃は交渉してるけど減額はほぼダメ。預けてる保証金から引いてくれと言ってるけど難色だね。公庫から4900万円、銀行から3000万円借りた。無利子だ、低利率だとはいえ結局は借金。休業要請と従業員の給与補償はセットで出して貰いたい。家賃の救済制度も。大家も支払い返済があるから家賃の身入りがないと焦げついちゃうよね。無利子だろうがなんだろうが借金して延命治療してるだけ。


◆彼我の違いに驚く
 「スーパーと薬屋と自転車屋以外は、飲食店を含めて町中のすべての店が閉まっているのでベルリンはとても静かだ。この状態がいつまで続くのか。閉店を続けるとつぶれてしまうような個人経営の小売店、飲食店、ヨガ教室、ライブハウス、本屋などは、簡単な手続きをするだけですぐに補助金が貰える。フリーの俳優、ミュージシャン、作家などもイベントがキャンセルされて経済的に苦しい場合は申請すれば9000ユーロの援助金がすぐに口座に振り込まれる、という手紙が先週組合から来た」と、ドイツの対応の一端を教えてくれているのはベルリン在住の作家多和田葉子氏(東京新聞夕刊、4月3日付)。これだけですべてが分かるわけではないが、彼我の違いが大きいことは十分伝わってくる。


◆地方紙が鳴らす警鐘
 北海道新聞(4月8日付)の社説は、日本で行政府に都市封鎖(ロックダウン)の権限はないのに、小池百合子都知事が当初、都市封鎖の可能性に言及した結果、「不安にかられた人たちが東京から感染者の少ない地方に移動する動きが加速し、感染リスクを拡散した―との指摘がある」ことを紹介し、「危機の際に重要なのは指導者が正確で詳細な情報を伝え、国民に共有してもらう対話の姿勢だ。不用意な発言が大きなマイナスをもたらした典型例」とする。
 また、「東京都は宣言を受けて休業要請を幅広い業種に出す方針だ。ただでさえ経営難が深刻になっているところに、企業や店に与える損失は計り知れない」にもかかわらず4月7日の記者会見で首相が、「要望の強かった休業に伴う直接の損失補償は行わない考えを改めて示した」ことを取り上げ、「収入減の中小企業、個人事業者には給付金を支給するが、十分ではない。休業要請と補償は一体であるべきだ。痛みを強いるようなやり方は不安と不信だけが残る」ことを指摘する。
 中国新聞(4月8日付)の社説は、感染者数が世界2位のスペインでは、首相が「不要不急の経済活動をやめるように」と言い渡し、労働者には2週間の自宅待機を求めたことを示し、「対岸の火事ではないと心得るべき時である」とする。
 「『貯金がなく、生活が立ちゆかない』『収入減で家賃が払えなくなる』...。労働問題に取り組む東京のNPO法人には、このままでは路頭に迷いかねないと不安がる、悲痛な声が働き手から寄せられている」ことを紹介し、「減収分を切れ目なく穴埋めする、迅速な支援策」を強く求めている。
 さらに、「自民党内からも、はや追加策を望む声が聞こえる」としたうえで、「国内総生産(GDP)の2割に及ぶ」「世界的にも最大級」と自賛を繰り返す首相に対して、「数字にとらわれず、足元で上がり始めた働く人たちのSOSに耳を傾けるべき」と苦言を呈し、「雇用と家計を支える追加の手だてを惜しんではならない」と、檄を飛ばす。


◆平時のゆとりこそが緊急時の対応力 
 西日本新聞(4月2日付)において、ブレイディみかこ氏(保育士・コラムニスト)が展開するイギリス事情を踏まえた論考もまた示唆に富んでいる。キー・ワードはまさに「キー・ワーカー」。医療従事者、警官、教員、保育士、介護士、公共交通機関職員、スーパーマーケット従業員などの、地域に必要不可欠なサービスの従事者を指している。
 今回のコロナ禍で、「非常時に『鍵となる勤労者』と呼ばれるほど重要なサービスを提供する職業が、おしなべて低所得の仕事ということ」に気づき、「これらの人々の年収は、大企業や銀行幹部の報酬と比べるとシュールなほど少額だ」と、驚嘆する。
 「『緊縮VS.反緊縮』とか、『大きな政府VS.小さな政府』とか、識者や政治家は大きな言葉を使って討論する。だがこの非常な状況で立ち上がってきているのは末端で働く人々の力だ。社会に欠かせない『キー・ワーカー』たちの重要性だ。ならば政治は、この人たちとこの人たちの職場に投資しなければならない」と、断じる。そして、「新型ウイルス危機はやがて去る。しかし、それは人々の経済や財政に対する考え方を大きく変えるだろう。私たちは気づいたからだ。平時のゆとりこそが緊急時の対応力だということに。そしてどんな仕事が社会の真の屋台骨であり、不当に過小評価されてきたかということに」と、重要な課題を剔出(てきしゅつ)する。 


◆どうなる『強制終了』された資本主義のあと
 毎日新聞(3月30日付)で、山田孝男氏(同紙特別編集委員)はまず、ドイツのメルケル首相が国民に訴えたビデオメッセージで、スーパーマーケットの従業員、つまりキー・ワーカーをねぎらったことを「新しい現実に見合っている」と評価する。そして、「富裕層と貧困層、先進国と途上国――の格差是正は長い間、グローバルな課題でありながら、富の再分配は滞ってきた。気候変動とウイルスが、格差や地球環境問題に無頓着な拡大膨張志向の資本主義を『強制終了』させつつある――ように見える」と、慎重な筆致で世界のこれからの有り様を展望している。
 キー・ワーカーに敬意を払い、正当に評価することが、「格差の無効性」を人々に気づかせ、格差無き社会と世界の構築への第一歩となる。忌まわしいコロナ禍の中だからこそ、発見できるものもある。V字回復という餌で簡単に釣れると思うな国民を。
 「地方の眼力」なめんなよ

 

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小松泰信氏のコラム【地方の眼力】

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