COVID‐19対策は「誰でも、何度でも、無料で」【森島 賢・正義派の農政論】2020年8月17日
COVID‐19対策をみていると、政治は国民の生命を守るという最も重要な責任を、放棄しているとしか思えない。
対策には検査が必要不可欠で、それを基礎資料にして事実と科学に基づいた対策を採るべきだが、国民の生命を軽視する非人間的な政治が、それをさせない。検査が不十分だから、いま全国にどれ程の数の感染者がいるのかさえ、政治は分かっていない。専門家も分かっていないし、だれも分かっていない。これでは対策の立てようがない。
政治は、偶然(と言ったほうがいいだろう)に見つかった感染者を、不十分に隔離し、不十分に治療しているだけである。
心ある専門家たちは、いらいらしているだろう。彼らは、検査を充実して、実態に基づいた実効性のある科学的な対策を提案したいだろう。しかし、それができない。非人間的な政治が、不十分な検査しかしていないからである。そうして、国民に苦痛を与え続けている。
それは、病苦だけではない。外出自粛という生活上の苦痛でもあるし、営業自粛という経済上の苦痛でもある。
そうした中で、いま、大きな第2波が日本全体を襲っている。そして多くの専門家は、これに続いて秋には、より大きな波が襲うだろうと予想している。

上の表は、東京都が先週末に発表した、いわば公認の感染者だけの療養状況である。つまり、「誰でも、何度でも、無料で」という検査体制のもとで陽性になった感染者の状況ではない。政治が、きわめて強く制限した現行の検査体制のもとで、公認された感染者だけの状況である。
そうした不確かで偏りのある資料に基づくものではあるが、この表から分かることがある。
その1つは、感染者のうち半数以下の44%の人たちしか、入院させられて隔離され、治療を受けていないことである。まさに非人間的である。
もう1つある。表の4行目の「入院・療養など調整中」は、自宅以外で療養しているわけではないだろう。つまり3行目と足し算して、ほぼ半数の48%が隔離されず、市中の自宅にいることである。そうして家族に感染させている。
上の図は、前の表と同じ資料、つまり不確かで偏りがある資料に基づくものだが、東京都での新規感染者の感染源の推移をみたものである。一時は夜の繁華街、いわゆる夜の街が大きな感染者源として注目をあびた。だがいまは、それに代わって家庭内感染が急増している。そうして、市中感染の主要な感染源になっている。
これは、重大な問題である。
◇
感染症対策の基本中の基本原則は、多くの専門家がいうように、また、WHOのテドロス事務局長の発言を引き合いにだすまでもなく、「検査、隔離、治療」である。
だが、日本のCOVID‐19対策は、これに逆らっている。先ずはじめに行うべきことは、徹底した検査であるが、それを行っていない。だから、大勢の感染者が市中にいて、家庭内感染などの、したがって市中感染の感染源になって、感染を止めどもなく拡げている。何故そうなっているのか。
◇
1つは、いまの検査体制では、大量の検査はできないからだ、と政治がいう。ここには、こんどのCOVID‐19災害が100年に1度ほどの危機であるという認識が、政治にないことが分かる。
もう1つは、いまの隔離・治療体制では、大量の検査はできないからだ、と政治がいう。大量に検査をすれば、大量の感染者がみつかり、その人たちを隔離し治療することができなくなる、というのである。
それなら、大量の隔離病棟を新しく作り、治療のための大勢の医師、看護師や、大量の器材を確保すればいい。しかし、政治はそれをしない。ここでも政治の危機感はみられない。
検査体制にしても、隔離・治療体制にしても、100年に1度ほどの大改革をすればいいのだ。COVID‐19は100年に1度ほどの大災害だ、というのだから。しかし政治は、そうしていない。旧態依然とした体制を改革しないでいる。そうして、国民の生命を軽視する反国民的で、非人間的な政治を続けている。
◇
改革のための第一歩は、「誰でも、何度でも、無料で」という、検査体制の抜本的な整備だろう。そうして感染者の全員を隔離すれば、市中に感染者はいなくなる。そうすれば、陰湿な外出自粛や経済を破壊する営業自粛などは不必要になる。社会活動は、以前と全く同じに回復できる。
若者たちは以前と同じように、エネルギーを思う存分に爆発できるし、中・高齢者たちも以前と同じように、感染の心配をせずに、社会で充分に活動できるようになる。国民1人あたり1万円以上に相当する税金のムダ使いになる「GOTO何とやら」も不必要になる。
これに成功したのがニューヨークである。東京の世田谷区でも、そこを目指した改革を始めた。
◇
こうしたCOVID‐19対策について、日本では与野党の間で議論さえ行っていない。ここに、日本の政治の深刻な危機がある。
中国でも、米国でも、政治指導者は、「これは戦争だ」といっている。米国では11月の大統領選挙での主要な争点になっている。
しかし日本の政治には、こうした危機感がない。政府、与党にもないし、多くの野党にもない。つまり、危機から脱出しようとする政治勢力が結集されていない。ここに、日本のCOVID‐19災害の真の深刻さがある。そして、これは日本の政治の中枢にある腐敗部を、集中的に暴露したものである。
(2020.08.17)
(前々回 新型肺炎対策にみる中央集権制崩壊の予感)
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