経済事業を黒字にする方法【原田 康・目明き千人】2020年8月25日
農協の経済事業の収益構造を分析して黒字とする方法について、具体的な事例の紹介を含め農林中金総合研究所の機関誌「農林金融」の8月号に主席研究員の尾高恵美氏が書いておられる。
販売事業が黒字と赤字の農協の特徴として、担当者一人当たり、集荷場一ヶ所当たりの取扱高、事業管理費など部門収支の損益分岐点の分析に焦点を当てて収支改善の提案をしておられる。合併による大型化は販売担当者の人数、配置や集荷場の統廃合など地域の特徴にあった再編が不可欠である。これには収支の基礎となる損益分岐点を明らかにして事業収益と事業管理費の改善策が必要となる。
具体的な例として、和歌山県JA紀の里の事例を挙げておられる。紀の里は柿や桃などの果樹地帯である。合併前の選果場は10ヶ所あったが施設の老朽化も含めて新しい施設への統廃合、どこに置くか、販売担当者の体制などの改善が必要となった。
販売力の強化をするために組合長直轄の「選果場再編対策室」を設置して選任担当者を置いて農協が原案を作り、各支所の品目別生産部会やいろいろな部会、懇談会の場で組合員との話し合いを持った。
選果場などの施設の内容、運営、コスト、場所などを管内の果樹生産の5年後、10年後を想定した。コストも新設統廃合した場合の投資額も1kg当たりの品目別選果コストを比較した。販売も従来は支所別にやっていたが「紀の里ブランド」として本所に統一した。新しい選果場では顧客の要望に応じたパッケージも出来るものとした。選果場の経費も組合員の応益負担を原則とし利用料金も公平にするために品目別に基準を統一した。
このような販売の統一、選果場の運営など、特に選果場の集約には何度も時間かけて組合員と直接に話し合いをする中で、組合員から販売体制の必要性が改めて強調をされるようになった。
尾高さんは直接指摘をしてはおられないが、赤字を信用事業や共済事業の利益で穴埋めせずに損益分岐点を出して分析、改善策を具体的に提案して組合員と話し合いをして黒字にして販売事業の強化をする努力が必要である。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日