コロナ:あと半年の我慢か【森島 賢・正義派の農政論】2020年12月21日
コロナのワクチンが開発され、世界の各国で接種を始めた。中国、ロシア、英国、米国、カナダでは、すでに始めている。EUなども、今年中に始めるようだ。
日本は遅れているが、春には一部で接種を始めるらしい。接種を希望する全ての国民に行きわたるまでには、しばらく日数がかかって夏になるだろう。コロナ禍は、それまでの我慢だという。
コロナの終息は、ようやく近づいてきたようだ。そうなれば、コロナは普通のインフルエンザと同じになる。
だが、安心はできない。どんな副反応があるか、まだ分かっていない。また、それまでに、どれほど深刻なコロナ禍を受けるのか分からない。
先週も連日のように、記録的に多くの新規感染者があったし、多くの死者がでた。Googleの予測では、4週間後の毎日の新規感染者数は、いまの2.4倍になると推計している。
当面、全力を傾けて行うべきことは、死者数を減らすことであり、新規感染者数の増加を防ぐことであり、治療薬による重篤な副作用や治癒後の後遺症による苦痛をやわらげることである。
経済の回復は、その後でいい。株式市場は半年先のコロナ終息を予想して、いま活況を呈しているようだ。
あと半年間、じっと我慢していればいいのか。そうではない。
いま、全国の各地で医療は崩壊の寸前にある、といわれている。だが、そうではない。すでに医療は崩壊している。感染者の多くを隔離できずに、市中の自宅で療養させている。そうして、市中感染の主な感染源にして、感染を広げている。これは、医療崩壊以外の何ものでもない。
これは、政治がこれまでに作ってきた劣弱な医療体制の問題である。だから、政治が責任をもって、作り直さねばならない。
上の図は、OECDに加盟している各国の医師数と看護師数を人口1000人当たりでみたものである(出所は文末)。
このうち医師数をみると、加盟36か国中28位で、恥ずかしいほど少ない。いっぽう看護師数をみると、北欧を除く各国と同じ程度である。
こうした状況で、日本は医療崩壊が起きている。これは、医療体制の問題である。
◇
この図で分かることは、医師数の不足と、看護体制の不備である。日本には、国家の危機に即応する医療体制がない。このことが、コロナ禍のなかで露わになった。
欧米諸国には、人口当たりでみて、日本の10倍以上の数の感染者がいる国が多いが、医療が崩壊している、ということはない。
ここには多くくの問題がある。一例を示そう。検査の問題である。
行政が検査するばあい、業者に1万8000円支払っている。しかし、東京駅の近くには1980円で検査できるところがある。約10分の1である。だが、この検査結果を行政は認めない。ここには行政部局の既得権益と、それに伴う利権が疑われる。これは、まさに体制の問題である。
本論へ戻ろう。
◇
政治は、コロナ禍のなかで医療体制の整備を怠ってきた。現状の医療体制を守ることだけを重視し、感染拡大を阻止するための対策を、国民の社会活動の自粛だけに依存してきた。
それだけではない。現状の医療体制を守るためとして、検査を制限し、感染者を市中に放置してきた。だから、市中に何人の感染者がいるのかさえ、全く分かっていない。
そのうえ、一部のいわゆる専門家は、市中にいる感染者の数を減らそうとしていない。市中に放置されている感染者を検査して見つけ出し、隔離して、その数を半分に減らせば、新規感染者の数も半分に減らせる、という理屈が分からないように装っている。感染症対策の基本は、早期の検査と隔離というが、そのことを知らないように振る舞っている。そうして、現状の医療体制を墨守する、という政府の基本方針に無批判に追従し、国民に対して行動の自粛を居丈高に要求している。
これらの結果、コロナを蔓延させて、医療崩壊を招いた。
医療崩壊の原因は、ここにある。
◇
だからといって対策の基本方針は、それほど早急に修正できない、などという評論家がいる。だが、そんな呑気なことを言ってはいられない。
今からでは遅い、などと言ってはいられない。今後、コロナによる重症者や死者が爆発的に増えようとしている危機のなかで、感染症対策の王道に立ち返り、政治は、検査と隔離と医療の体制整備を最重要課題にして、ここに全ての政治力と財政力を集中しなければならない。
それは、今後10年以内に襲うことが予想される新々型コロナへの備えにもなるだろう。
新年は、歴史に例を見ない陰鬱な正月になるのだろうか。だが、政治が心を入れ替えれば、明るい春がやってくる。それに希望をつなごう。
皆さん、よいお正月を。
(2020.12.21)
(前回 コロナ感染者の選別が始まった)
(前々回 コロナの夜明けは近い)
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