コロナ感染者の選別が始まった【森島 賢・正義派の農政論】2020年12月14日
K県は先週、コロナ感染者を入院させるときの「入院優先度判断スコア」なるものを発表した(資料は文末)。病床が足りないし、医療要員が足りないため、感染者の全員を入院させることができないからだという。
いよいよ、感染者の選別が始まった。これは、戦場の第一線にある野戦病院での患者選別(トリアージ)と同じである。いよいよ日本で、患者選別が始まった。
ここで、これ自体を批判するつもりはない。緊急事態のなかで、これは止むを得ないことだろう。
ここで批判したいことは、ここまで医療体制を追い込んだ政治である。こうした事態になる可能性が高いことは、すでに10か月前から分かっていた。だが、政治は医療体制の拡充を怠ってきた。
ここでは、政治が負うべき、この責任を追及したい。

上の図が、「入院優先度判断スコア」である。読者諸氏は、試みに自分のスコアを計算したくなるだろう。
ちなみに筆者が感染したばあい、どうなるか。無症状ならは5点未満になって、入院できなくなる。無症状のマイナス1点が原因である。このマイナス1点がなければ5点になって入院できる。ここが筆者の生死の分かれ目になるかもしれない。残念なことだが、これは私怨である。
◇
同じような患者選別を検討している地方自治体は、全国の各地にある。感染が蔓延している事態のなかで、感染者を公平に治療するためには、止むを得ないことだろう。だが、当然のことではない。コロナ対策の失敗である。
このような事態に追い込んだ政治の責任は重い。多くの国民を、こうした事態に追い込んだ責任は、検査と隔離と治療の体制の整備を怠り、コロナ対策に失敗した政治にある。
いまからでも、絶望的に遅いというわけではない。国民は、絶望しているわけにはいかない。政治は、このようなコロナ対策を根本的に再検討して、医療体制の拡充に、全力を投入しなければならない。
◇
医療体制の拡充を怠ることは、コロナが始まったときから一貫して続いている対策の基本方針だった。いまの体制を墨守するという大方針である。
この大方針のもとで、当初から検査を制限してきた。海外からの帰国者以外は、検査さえもしなかった。そうして感染者を市中に放置し、感染を蔓延させてきた。こうした検査の制限が、いまも続いている。その結果、無症状の感染者を放置し、市中に充満させて、市中感染を拡大している。
◇
こうした検査の制限に加えて、最近は、K県の対策にも書いてあるように、感染者に対して、自宅療養を推進する、といっている。
政治は、家庭内感染が感染経路の大きな部分を占めていることを知っているのだろうか。家庭内感染が市中感染の大きな感染源になっていることを知っているのだろうか。そうまでして、医療体制の拡充を怠り、医療崩壊を招いている。
◇
また政治は、医療崩壊から脱出する唯一つの方法は、外出の自粛だ、といって国民に自粛を要求している。しかし、そうではない。医療体制の拡充こそが医療崩壊から根本的に立ち直る、唯一つの方法なのである。
政治は、自分の責任である医療体制の拡充に全力を傾け、その上で、当面の危機を乗り越える対策として、国民に対して自粛を要請しなければならない。
◇
政治が、こうした基本姿勢に立ち帰らないかぎり、感染拡大が続き、医療崩壊はますます深刻になるだろう。
いま、政治がなすべきことは、検査の徹底であり、医療崩壊を阻止するための隔離、医療体制の拡充である。
これは、政府だけの責任ではない。野党にも、政府の責任を追及しきれていないという点で、責任の一端がある。
(2020.12.14)
(前回 コロナの夜明けは近い)
(前々回 論文を書くことは恥をかくこと)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【26年度畜酪決着の舞台裏】加工補給金上げ12円台 新酪肉近で全畜種配慮2025年12月22日 -
配合飼料供給価格 トン当たり約4200円値上げ 2026年1~3月期 JA全農2025年12月22日 -
鳥インフルエンザ 岡山県で国内8例目2025年12月22日 -
【今川直人・農協の核心】農協の農業経営をめぐる環境変化(3)2025年12月22日 -
日本産米・米加工品の輸出拡大へ 意見交換会「GOHANプロジェクト」設置 農水省2025年12月22日 -
令和7年度スマート農業アクセラレーションサミット開催 JA全農2025年12月22日 -
「JA全農チビリンピック2025」小学生カーリング日本一は「軽井沢ジュニア」2025年12月22日 -
農政無策【森島 賢・正義派の農政論】2025年12月22日 -
【人事異動】ヤマタネ(2026年1月1日付)2025年12月22日 -
国産食肉シンポジウム「国産食肉が食卓に届くために」開催 日本食肉消費総合センター2025年12月22日 -
岡山県鏡野町と「災害時における無人航空機による活動支援に関する協定」締結 福田農機2025年12月22日 -
「英国The Leafies 2025」粉末緑茶「あらびき茶」が金賞受賞 鹿児島堀口製茶2025年12月22日 -
「かごしまスマートファーマー育成セミナー」令和7年度の受講生募集 鹿児島県2025年12月22日 -
日本トリム 農業用電解水素水整水器を活用 いちご「肥後こまち」販売開始2025年12月22日 -
宅配インフラ活用 地域を見守り子育て応援 九十九里町と連携協定 パルシステム千葉2025年12月22日 -
大分県大分市佐賀関大規模火災お見舞い金100万円を拠出 コープデリ2025年12月22日 -
新春は「いちごと洋梨のケーキ」丹頂鶴をフルーツで表現 カフェコムサ2025年12月22日 -
障害者雇用支援のエスプールと持続可能な農業モデル構築へ概念実証を開始 食べチョク2025年12月22日 -
滋賀県日野町と農業連携協定 生産地と消費地の新たな連携創出へ 大阪府泉大津市2025年12月22日 -
ブラジルCOP30から世界の気候危機を知る 現地イベント報告 パルシステム連合会2025年12月22日


































