コロナ対策は福井に学べ【森島 賢・正義派の農政論】2021年8月30日
コロナ危機のなかで、政府はその基本対策に、軽症の感染者の自宅療養を据えた。東京都は、この基本対策に忠実に従い、感染者の大部分(84%、下表参照)の人たちに医療の届かない自宅療養を強制している。
それとは対照的に、福井県は自宅療養ゼロを目指し、それを実現している。
結果は、対照的である。
東京は、深刻なコロナ禍に陥っている。いまや、医療崩壊の状況にあって、入院できず、医療を受けられないまま、自宅で死を迎えるコロナ患者が続出している。
だが福井には、そうした悲惨なことはない。
上の表は、福井と東京の感染状況を比較したものである。人口が違うので、人口千人当たりにしたものが、下の3行である。
このうち、累積の陽性者数を見ると、福井は東京の約7分の1である。死亡者数を見ると、福井は東京の約4分の1である。
◇
このように、福井と東京とでは、コロナ禍の程度が、まるで違う。この違いは、コロナ対策が、まるで違うことによる。つまり、自宅療養に対する考えの違いである。
福井は自宅療養者数をゼロにしているが、東京は感染者の大多数に自宅療養を強制している。
この違いは、何処から来るか。
◇
コロナ禍が爆発的に蔓延する中で、医療が逼迫することは避けられない。
そうした中で、福井は臨時の医療施設を作り、医療の供給量を増やして、感染者の全員に必要な医療を迅速に施している。入院できず、治療も受けられずに、自宅に押し込められて、治療も受けられない感染者はいない。
だが、東京は違う。医療が逼迫しているからといって、医療の供給量を増やそうとせずに、大多数の感染者を自宅に蟄居させて、必要な医療を施さない。そして、多くの感染者を自宅で死に至らせている。
◇
ここには、人の生命を何よりも重要と考えるか否か、という世界観の違いがある。それを判断する目印しは、今のばあい、臨時の仮設病院を作って、必要な全ての感染者に治療を施すか否かである。
もちろん、病院さえ作ればいい、というわけではない。そこでの医療体制を整備することが不可欠である。この点でも福井は成功している。
◇
福井では、県当局はもちろん、保健所、大学病院、医師会、看護師会などの人たちが侃々諤々の議論をして、コロナのための医療体制を作り、臨時の仮設病院の運営に全面的な協力をしている。中小病院の医師や看護師たちは、当番制でこの仮設病院で治療や看護に当たっている。
このようにして、運営に当たる人たちは、医療を志した初心に帰り、それを思う存分に貫いているようだ。
◇
福井の、このような成功をもたらした中心部には、知事の社会観があるし、世界観があるし、政治観があるだろう。だが、それだけではない。その中心部には、医療関係者全員の民主主義に基づく、そして責任感に基づく徹底的な議論があるようだ。時には、喧嘩と間違われるような、激しい議論にもなるようだ。
こうした議論では、人の生命が最重要という、当然のことだが、人間性に溢れた議論になる。もしも仮に、一部の人が邪悪な思惑を持っていたとしても、すぐに露見して、皆の顰蹙をかうだけだろう。賛同は得られないだろう。
◇
このように見ると、福井の成功は、大多数の医師と看護師など医療関係者の、そして大多数の県民が支える民主主義の輝かしい勝利である。
これと比べると、東京は対照的である。いったい、東京には、人間味の溢れる豊かな民主主義はないのか。我利我利亡者ばかりで、「1人は万人のために、万人は1人のために」という正義の思想はないのだろうか。
(2021.08.30)
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