コロナ難民の続出【森島 賢・正義派の農政論】2021年8月16日
表題は、遠い外国のことではない。日本で実際に起きていることである。
日本ではいま、コロナに感染しても入院できず、自宅に閉じ込められて医療を受けられない人が続出している。政府が、重症者以外は入院させないことにしたからである。その結果、コロナ難民が続出している。
感染の中心地である東京をみると、PCR検査の陽性率が通常の5%をはるかに超えて、4倍の20%以上になっている。このことは、通常の4分の1以下しか検査していないことを意味している。
だから、PCR検査を増やせば、新規感染者は数倍に激増する。つまり、PCR検査を受けることができて、新規感染者と認定される人は、実際の新規感染者のごく一部である。その数倍の、実際の新規感染者がいて、認定されないまま、認定された軽症者とともに、医療を受けられずに、市中に放置され、医療難民になっている。
この実態は、東京だけではない。全国に広がっている。
こうした実態のなかで、政府は、医療体制が逼迫しているからといって、大部分の感染者を難民化させている。そして、国民に対して外出の自粛を要求するばかりである。
それだけではない。感染爆発の原因は、自粛が不充分だからだ、といって、その責任を国民に押し付けている。
医療体制が逼迫しているのなら、検査と隔離と治療の体制を拡充し、整備すればいいのだ。だが政府は、それをしない。
検査を数倍に増やすべきだが、それをしない。隔離体制は全く不十分で、自宅療養を強制し、感染者を市中に放置している。そうして、満足な治療もしない。
◇
いまのコロナは、水疱瘡と同じ程度の強い感染力をもっているデルタ株である。だが、水疱瘡と違って、特効薬はない。ワクチンはあるが、政府は充分に確保することを怠っている。そうしたなかで、認定された感染者の大多数と、膨大な数の未認定の感染者が市中に放置され、感染源になって感染爆発を起こしている。
いま、政府が緊急に行うべきことは、全国的に検査体制を拡充し、感染者を隔離して、治療を行う体制を整備することである。これをコロナ対策の基本に据えて実施することである。今からでは遅い、などと言ってはいられない。
国民に対する外出の自粛要請は、その後でいい。政府が、この基本対策を実施すれば、国民は政府を信頼して、自粛要請に応えるだろう。
◇
こうしたなかで、自宅療養者をゼロにすることを目指し、それを実現している県がある。福井、山梨、和歌山、島根、徳島、佐賀の6県である(厚労省、8月11日)。
政府のコロナ対策は、感染者は自宅療養することを基本方針にしているが、この6県は、これとは逆で、感染者の自宅療養をゼロにすることを基本方針にして、それを実現している。厚労省がいう、いわゆる「自宅療養者等」の人数だけでなく、「療養先調整中」の人数を含めてゼロを実現している。
◇
これらの6県では、感染者の全員が病院に入院しているわけではない。一部は「宿泊療養者」で、不充分かもしれないが、感染者の全員に医療がゆきとどいている。
福井のように、近い将来の医療逼迫に備えて、体育館に臨時病床を作っている県もある。
このように、自宅療養者をゼロにすることは、実行しようと思えばできるのである。だが、政府は実行しようとしない。軽症者だけとはいえ、逆に自宅療養を基本原則にしている。
これでは、コロナ難民の続出は止められない。
◇
だが、止める方法はある。福井などの6県のように、県民のためのコロナ対策に転換すればいい。政府も国民のためのコロナ対策に転換すればいいのである。
そうすれば、多くの国民は、外出自粛の要請に応えるだろう。その結果、全国でコロナ難民の続出を止めることができる。そして、コロナ禍は、終息へ向かうだろう。
(2021.08.16)
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