レインボー米をパックごはんで作れないか依頼した米穀業者【熊野孝文・米マーケット情報】2021年10月5日
「銘柄米だけじゃ面白くないんで、パックご飯でレインボー米を作れないですかね」と米穀業者が切り出した。場所は委託製造も行うパックご飯メーカーの東京事務所。対応したメーカーの取締役は一瞬キョトンとしてから「何ですか?それは」と質した。「虹のように7色の色が付いたご飯ですよ」。そんな色付きのご飯があったら手巻き寿司パーティーでも文字通り色を添えて賑やかになるだろう。
このところ米穀業者が自社のオリジナルパックご飯をメーカーに委託製造を依頼するケースが増えている。背景には自社で扱う産地ブランド米の売れ行きが芳しくなく、まずは消費者に手に取ってもらうべく手軽に食べられるパックご飯して試しに食べてもらうことを狙いにしている。具体例を挙げると新潟のコメ卸は「新之助」や「佐渡米」を原料米にしたパックご飯を作ってもらいそれを大手ドラッグストアで8月から販売を始めた。新之助のパックご飯は、包装容器のデザインも精米袋と同じデザインで、これを使用して販売しているのはこのコメ卸だけ。デザインにもこだわるが、売り場にもこだわっており、このパックご飯はパックご飯の売り場には置かれておらず、精米売り場に置いてある。あくまでも試食用という位置づけで、売価も3パック入りで398円と一般的なパックご飯よりかなり高め。それでも売り出し始めて1カ月程度だが、販売担当者は「リピーターが付き始めた」と喜んでいる。
もう1社は山梨県のコメ卸で、地元のブランド米「武川米」をパックご飯にして販売し始めた。3パックが入った茶色の包装袋には山梨県の地図上に武川米の産地を示し「山梨県を代表する銘柄米です」と記されている。パックご飯を委託して自社PBで販売しているところは他にもあり、大手食品卸もこぞってそれらの商品を投入している。
レインボー米を依頼した冒頭の米穀業者は、自社で販売するよりもパックご飯をふるさと納税用の商品として考えている。地元自治体の委託を受けて地元で生産される銘柄米をセットにしてふるさと納税商品として紹介したところ今や牛肉と比肩するほどの人気になり自治体の税収アップに貢献している。納税商品として生産者から買い入れる玄米の価格も高く、しかも自治体はそれらで得た税収を使い、無料バスを運行、農産物直売所まで走らせ直売所の売り上げ向上に貢献しているほか、コロナ禍では飲食店が地元の農畜産物を使用すると価格補填するという事まで行っている。精米だけではなくパックご飯も加えればさらにふるさと納税商品として人気が出るのではないかと言うのが自治体と米穀業者の読みだが、さすがに無菌パックご飯でレインボー米を製造するのは難しい。
無菌パックご飯はその名の通りクリーンルームで無菌状態にして製造するため、精米以外の豆や肉類と言った具材を混ぜて製造することは菌の問題でかなりハードルが高い。ただし、レトルトや冷凍米飯であればそれが可能で、依頼を請けた側はそうした説明を行った。一般的なワンパック180gの無菌パックご飯であれば、必要とする精米は42gで、これに容器代や製造コストなど諸経費を加算すると最もコストがかかるコメの原価がキロ300円だとすると1パックのコストは72円になる。最低受託ロットは600ケース1万4400パックからだが、大手メーカーが委託を受ける際は7万パックから10万パックが最低ロットになる。自治体の中にはJAS有機米を原料にした玄米パックごはんを自県産米アピールのために製造委託を考えていたところもあったが最低ロット数が大き過ぎて断念したところもあった。
コロナ禍で伸びた商品のなかに「パックご飯」が入っている。企業リポートの中にはパックご飯が1000億円市場に育つと予想しているところもあるなどこの商品に対する関心は高い。
実際、既存のメーカーは相次いで製造ラインを増設しているのに加え、新規に参入した企業もあり今や年間10億食も売れるまでになっている。一歩間違えれば供給過剰で乱売合戦に陥りかねない市場とも言えなくもないが、メーカー側の経営者は「インスタント麺に比べればパックご飯の1人当たりの消費量は少ない。まだまだ伸びる」とあくまでも強気である。
メーカーの中にはハードルが高いと思われた豆ごはんを製造、市場投入したところも出始めた。製造技術の進歩で1年間保存が可能な比内鶏パックご飯やあさりご飯、グリーンピースごはんなどが無菌パックご飯で出来るようになるかもしれない。そのときにはレインボー米もパックご飯も売り場で彩を添えていることになるだろう。
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