米型の自由と民主主義のたそがれ【森島 賢・正義派の農政論】2022年4月4日
ウクライナ紛争が米露間の争いであることは、誰の目にも明らかである。米国は戦略目的を隠し、米軍を陰に隠している。その代わりにウクライナ軍を最前線に出し、実戦部隊の尖兵にして露軍と争っている。
米国の戦略目的は、米型の自由と民主主義で世界を覆いつくすことである。そうして、搾取の場を全世界に拡大することである。
当面の戦術目的は、この戦略目的の実現に立ちはだかるロシアを孤立させるための包囲網を作ることである。そのためのNATOの東方拡大である。ウクライナは、その餌食になろうとしている。
だが、この戦略は破綻している。だから、この戦術も破綻するだろう。
米型の自由と民主主義は、かつての栄光を失い、いまや落日の時を迎え、残照の中に哀れな姿をさらけ出している。

上の図は、親米国と親露国の国民所得を、過去50年間について表したものである。
ここでいう親米国とは、ウクライナ紛争にかかわって、先月の国連総会で行ったロシア非難決議に賛成した米、欧などの国である。親露国とは、棄権したり欠席して賛成しなかった露、中、印などの国である。
親露国の人口は、世界人口の58%という大多数である。このことは、本欄で以前に述べた。ここでは、もう1つの、国力の指標である経済力をみた。
◇
親露国の経済力の、過去50年間をみよう。いまは、50年前と比べるて格段に増加した。ことに最近の増加率が大きい。
このことは、親米国の経済力、つまり国力が、最近になって急速に衰えていることを意味している。米国をはじめ親米国の、かつての威光は、いまや見る影もない。
米型の経済と、その基礎にある社会思想は、米型の自由と民主主義だが、この思想は、その歴史的な役割を終え、いまや、歴史の舞台から退場すべき運命にある。
ウクライナ紛争は、この思想の見苦しい最後の悪あがきである。
◇
米型の自由は、目先のカネのために何もかも、正義さえも捨てて、カネに狂う亡者の文化を蔓延させた。そういう自由だった。その結果、国民の間に経済的格差を生み出した。そして、この格差が社会全体に広がり、国民を分断し、深刻な対立を生み出した。これでは、社会は成り立たない。
また、米型の民主主義は、富者のための民主主義に堕落した。政治の指導者は、貧者をふくむ国民の全体が選んで決めるのではなく、富者から与えられた選挙資金の多寡で決めるようになった。これは、民主主義ではない。
米型の自由と民主主義を、東方に拡大し、全世界に広めたいのなら、このような実態を反省し、どのように改革するのかを示さねばならない。
◇
最近の報道が伝えているが、バイデン大統領から極悪人呼ばわりをされているプーチン大統領の、国内での支持率が上がっている。独立系調査機関の調査では83%と圧倒的な多数である。政府系調査機関の調査でも79%と大多数である。露国では、米型の自由と民主主義は、これほどまで強烈に嫌われている。
だからといって、米型の自由と民主主義の対局にある中露型の自由と民主主義に、問題がないわけではない。米露は互いに切磋琢磨しなければならない。
◇
ウクライナ紛争は米型の自由と民主主義と、中露型の自由と民主主義との争いである。ここで武力を使ってはならない。武力による紛争は、ただちに止めねばならない。
日本は、そのために何をするのか。親米国の中に、どっぷりと浸かっていていいのか。
(2022.04.04)
(前回 ウクライナ紛争で親露派が減らない理由)
(前々回 ウクライナ紛争は米型の自由と民主主義の東方拡大だ)
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