ウクライナ紛争は米型の自由と民主主義の東方拡大だ【森島 賢・正義派の農政論】2022年3月22日
ウクライナ紛争が泥沼化して、毎日、多くの人たちが犠牲になっている。一刻も早く解決しなければならない。そのために、世界中の人たちが知恵をしぼり、力を合わせて解決し、緑の穀倉地帯を再生せねばならない。
だが、そうしようとしていない。
紛争の原因を分かっている人が少ないからである。最近は、プーチン大統領の乱心が原因だ、という人さえでてきた。そこで、社会科学的な思考を停止する。
ウクライナ紛争の原因は、NATO(北大西洋条約機構=軍事同盟)の東方拡大なのである。米欧の多くの国が、ことに米国が、ウクライナにまでNATOを拡大し、米欧側に取り込もうと考えている。
これに対してロシアは、NATO東方拡大を軍事的なロシア包囲網の強化だとして、安全保障の点で重大な脅威と考えている。
これが、ウクライナ紛争の、表面的な原因である。だが、その深層には、米型の自由と民主主義の東方拡大がある。
上の図は、ウクライナ紛争に対する各国の立ち位置を示している。それをみるために、国連が今月の2日に行った、ロシア非難決議案に対する投票結果を、地図で示した。丸の面積は、その国の人口数に比例させている。
◇
図の中の丸の面積を合計すると、青丸は42%で、赤丸は58%である。このことは、先々週の本欄で指摘した。
青丸を米型の自由と民主主義を信奉する親米派とし、赤丸を嫌米派とすれば、嫌米派は58%の大多数で、世界の各地に広がっている。
嫌米派は、ことに東欧に多い。このことは、米型の自由と民主主義の東方拡大が嫌われていることを意味している。
これが、世界の深層にあって激しく流れる潮流であり、それがウクライナ紛争で露わになった。ウクライナ紛争は、この激流が水面近くに表れた現象である。その真の原因は、この激流にある。
◇
なぜ、米型の自由と民主主義は、世界の58%の人たちから嫌われるのか。これほど多くの人たちに嫌われるのか。
58%の人たちは、米型の自由と民主主義を、真のものと考えていないからである。
◇
米型の自由と民主主義の、もう一層下にあるのは米型の資本主義である。それらの全体が、米型の社会の総体を形作っている。
どのように形作っているか。
いま米国には、社会全体に格差が深刻に広がっている。国民が分断されている。差別もある。
そうした社会の総体を牛耳っているのが、陰に隠れていて表に出てこない資本家である。
◇
彼らは、米型とは違う自由と民主主義を認めない。異なる価値観を否定する。これは、自由でもないし、民主主義でもない。
そのように東欧の人たちをはじめ、世界の58%の人たちは考えている。そして、こうした米型の社会が、自国にまで広がることに反対している。つまり、ウクライナ紛争にみられるような、米型社会の拡大に反対しているのである。
いま、世界にとって必要なことは、互いに相手の価値観、社会観を認めあい、互いに欠点を矯正しあうことである。
◇
日本はどうか。
ウクライナのゼレンスキー大統領が、日本の国会で、明日オンライン演説をするようだ。米欧から武器をもらって戦争している最高責任者が、日本の国会で演説するという。その内容は、日本も火に油を注いでほしい、というものだろう。
いったい、国会議員の誰が、どんな世界観で、激励の拍手をするのだろうか。そして、誰が拍手をしないのだろうか。
(2022.03.22)
(前回 ウクライナ紛争の深層)
(前々回 農政はコロナ禍、ウクライナ紛争に何を学ぶか)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】なぜ多様な農業経営体が大切なのか2024年3月28日
-
全国の総合JA535から507に 4月1日から 全中2024年3月28日
-
消える故郷-終りに、そしてはじめに-【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第284回2024年3月28日
-
岩手銀行、NTT東日本、JDSCが「岩手県の『食とエネルギーの総合産地化』プロジェクト」を共同宣言2024年3月28日
-
「日曹コテツフロアブル」登録変更 日本曹達2024年3月28日
-
適用拡大情報 殺虫剤「プレバソンフロアブル5」 FMC2024年3月28日
-
飼料用米を食料安保の要に 飼料用米振興協会が政策提言2024年3月28日
-
肥料袋の原料の一部をリサイクル樹脂へ置換え 片倉コープアグリ2024年3月28日
-
【人事異動】農林中央金庫(4月1日付)2024年3月28日
-
純烈が熱唱 新CM「おいしい雪印メグミルク牛乳 ゴクうまボトル」公開2024年3月28日
-
むすびえ「ウェルビーイングアワード 2024」活動・アクション部門グランプリを受賞2024年3月28日
-
「物流の2024年問題」全国の青果センターの中継拠点化で「共同輸配送」促進 ファーマインド2024年3月28日
-
ポストハーベスト事業 米国子会社を譲渡 住友化学2024年3月28日
-
農業の「経営技術」を習得 無料オンライン勉強会を隔月で開催 ココカラ2024年3月28日
-
森林由来クレジット販売プラットフォーム立上げ第一号案件を売買全森連×農林中金2024年3月28日
-
新規需要米に適した水稲新品種「あきいいな」育成 耐病性が優れ安定生産が可能に 農研機構2024年3月28日
-
食品ロス削減に貢献 コープ商品6品を3月から順次拡充 日本生協連2024年3月28日
-
最適な雑草防除をサポート「my防除」一般向け提供開始 バイエルクロップサイエンス2024年3月28日
-
国産和牛が当たる 「春の農協シリーズキャンペーン2024」4月1日から実施2024年3月28日
-
れんこん腐敗病の課題解決へ JA大津松茂と圃場検証を実施 AGRI SMILE2024年3月28日