農政はコロナ禍、ウクライナ紛争に何を学ぶか【森島 賢・正義派の農政論】2022年3月7日
コロナによる世界規模の災禍が小康をみせている。その中で、世界を揺るがすウクライナ紛争が始まった。新しい世界秩序を目指す激動が始まった。
コロナ禍は、このままで終息するとは思えない。第7波が襲来するかもしれない。その後、終息するとしても、数年後には、また新しいコロナがやって来るだろう。
ウクライナ紛争は、世界史の画期になって、新しい世界秩序が形成され、今後、数10年の間つづくだろう。その間、激動がつづく。
こうした激動のなかで、日本の農政は、国民の生命を守るための食糧の確保を忘れている。そうして、食糧の輸出とか、生産の効率化とか、古く、倒れかかった柱にもたれて惰眠を貪っている。
上の図は、ウクライナ紛争について、先月、国連総会で行われたロシア非難決議案の投票結果である。
多くのマスコミは、3分の2以上の国の賛成で採択された、と報じている。ロシアは、このような圧倒的な圧力に屈して、間もなく撤退するだろう、と続く。
そうなるだろうか。
詳しくみると、大国の中国やインドは賛成していない。
そこで、米欧など賛成した国の人口を合計した数と、露中印など賛成しなかった国の人口を合計した数を比較してみた。それが、上の図である。
人口は、すべての社会的力の源泉である。
◇
この図をみると、賛成した国の人口の合計は、42%にすぎない。残りの58%のうちの多くは、反対もしなかったが、賛成もしなかった。消極的に反対した、といっていい。
消極的に反対したのは、武力の使用に賛成しなかったからだろう。外交努力に期待したからだろう。
この図から分かる、このような状況のもとで、ロシアは、それほど容易に引き下がらないと予想できる。ウクライナに武器を与え、後ろ盾になっている米欧も引き下がらないだろう。対立は長びくことになる。
その行きつく先に、何があるか。
◇
世界の秩序は、冷戦後の米国の一極体制が終止符を打ち、新しい秩序を模索しだしたようだ。それは新冷戦といっていい。
いま世界は、こうした歴史的転換点に立っている。以前の冷戦のような米ソ対立という単純なものではない。冷戦後の米国一極体制を経て、混沌とした激動の新冷戦へ向かう世界秩序の転換である。
以前の冷戦と違うことは、米国の弱体化であり、中国の台頭である。そして、図から見えるような親米欧派の減退であり、親中露派の伸長である。
◇
新しい世界秩序の中で、日本はどんな立ち位置に立つか。これまでの対米従属の危うさが、今後、露呈するだろう。そして、農政は?
農政は、今後に予想される長い激動のなかで、いまこそ食糧の安保体制の確立を、その主柱に据えねばならない。それは、食糧のエネルギー自給率の、腰を据えた抜本的な向上である。
コロナをみると、いま日本は、ワクチンのゼロ自給が原因で、悲惨な状況に陥っている。
食糧にしても、ワクチンにしても、それを供給する全責任は、政治が負うべきことである。
(2022.03.07)
(前回 無謀なコロナ楽観論)
(前々回 万人のための医療へ)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日