中露は旗幟を鮮明にせよ【森島 賢・正義派の農政論】2022年5月23日
ウクライナ紛争は、米欧と中露の争いになっている。
米欧は、ウクライナに武器と軍事情報を、ふんだんに与えている。
ウクライナの近年の軍事費は、約59億ドル(2020年、世銀)だが、米上院は、その6.8倍の400億ドルを、ウクライナへの軍事支援費として、承認した(先週19日)。G7は、198億ドルの支援を決めた(先週20日)。
これでは、ウクライナとロシアとの軍事紛争ではない。米欧とロシアとの軍事紛争である。
一方、中国をみると、中国は、ロシアを制裁しないというだけではない。米欧によるロシア制裁を批判している(先週19日のBRICs会合)。
いったい、ウクライナとロシアは何を争っているのか。激しさだけは伝わってくるが、争点が分からない。それぞれの後ろ盾である米欧と中露は、何を旗幟に立てて争っているのか。それぞれが、旗幟を高く掲げて、鮮明にしたらどうか。そうしないと、世界中に混乱を広げるだけだ。
争点は、ロシアを仮想敵国にしたNATO軍事同盟の東方拡大を認めるか否か、という点にあるという。だが、それは表面的な争点にすぎない。
深層にある根深い争点は、米欧型という極めて特異な自由と民主主義を認めるか否か、という点にある。
上の図は、当面の争点であるNATO軍事同盟の軍の配置図である。軍をロシア国境の近くに配置して、ロシアを包囲していることが分かる。
この地図の上部にあるのが、フィンランドとスウェーデンだが、両国とも先週18日に、NATO加盟を申請した。認められれば、西北側からもロシアを包囲し、圧迫することになる。
その上、ウクライナが加盟すれば、南側のロシア包囲網を縮めて、より強く圧迫できる。
米欧の当面の狙いは、ここにある。
だが、それは当面の狙いである。根底にある狙いは、米欧型の自由と民主主義の旗を掲げて、中国をも包囲する包囲網の強化である。先週からのバイデン大統領の日韓歴訪の唯一つの目的は、これである。そして、その底にあるのは世界制覇である。
◇
さて、米欧が掲げる自由と民主主義という怪しげな旗だが、それは、ひと癖もふた癖もある、特異な米欧型の自由と民主主義に過ぎない。普遍的でも何でもない。それは、深刻な格差をもたらしているし、それによって、国民を分断している。それに加えて、地球温暖化をもたらしている。
ウクライナ紛争にしても、プーチン大統領の権力欲や狂気が原因だとする言説が、報道の自由という名のもとで罷り通っている。後世の歴史家は、その浅薄さを嗤うだろう。
◇
米欧型の自由と民主主義の腐敗の根本的な原因は、経済活動の、野放しの自由にある。
その結果、米欧型の自由と民主主義に苦しめられている人は、世界中のどこにでもいる。その大多数の人たちは、米欧型の自由と民主主義に批判の声を上げている。世界は、米欧型の自由と民主主義に対する怨嗟の声で満ち溢れている。
◇
米欧型の自由と民主主義は、歴史の或る一時期に、泡沫のように現れた特殊な自由と民主主義だし、世界の或る一部の人達だけが信奉しているものに過ぎない。とうてい普遍的なものではない。やがて泡沫のように、跡形もなく消え去るだろう。
これが普遍的だとするなら、人類は絶望するしかない。
では、米欧型の自由と民主主義に対置するものは何か。
◇
それは、共同体的自由と、共同体的民主主義のもとで決めた経済活動の共同体規律を基礎に置く自由と民主主義である。これは、協同組合主義に近い。
ここには、資本主義の宿痾(しゅくあ)である格差はない。だから、分断の経済的原因はない。環境破壊もない。環境破壊をもたらす経済活動は、厳しい共同体規制のもとにおかれるからである。
中露は、こうした正義の旗を立て、世界に問うべきである。
どちらを採るかは、それぞれの国民が決めることである。反対派を武力で屈服させることを、歴史は断じて許さないだろう。
(2022.05.23)
(前回 「れいわ」の見識をロシア非難に見る)
(前々回 NATO東漸、中露西漸)
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