シンとんぼ(3)化学農薬使用量のリスク換算値とは?2022年7月30日
前回「みどりの食料システム戦略」KPI2030年目標(農林水産省)の1番目のKPI「農林水産業のCO2ゼロエミッション化(2050)」を検証していたつもりが、KPIの②農林業機械・漁船の電化・水素化等の技術の確立、③化石燃料を使用しない園芸施設への完全移行にまで踏み込んでしまっていた。KPI自体は、②が「自動操舵システムの普及率50%」、「高性能林業機械の電化等による技術実証・プロトタイプ実証」、「小型沿岸漁船による試験操業を実施」というもので、2040年に技術確立するための通過点的な位置づけのようだ。
③については、「加温面積に占めるハイブリッド型園芸施設等の割合50%」というもので、ヒートポンプや地熱や焼却場熱再利用を利用する施設など、化石燃料を使用しないでも加温できる施設の拡充を急ピッチに進めないといけなさそうだ。新たな設備投資でも収支が成り立つ作物を中心に進めることになるだろうが、前回も放言したが国の補助がカギになりそうだ。
再利用温室効果ガス削減のためのKPIはもう1つあり、「④農山漁村における再生可能エネルギーの導入を目指す」というものだ。これは結構曖昧で、2030年も2050年もKPI自体は「導入を目指していれば良い」ので、目標達成は簡単かとも思えそうだ。ただこれは、国がよくやる「状況に応じた課題の設定」とかいうやつで、再生可能エネルギー活用に関するテクノロジーの開発・実証状況によっては、KPIが新たに具体的なものにすり替わって行くのではないかとシンとんぼはみている。以上が温室効果ガス削減に関するKPIである。
次に出てくるKPIのテーマは「環境保全」である。その最初のKPIは⑤化学農薬使用量(リスク換算)の50%削減(2050)というものだ。これをみて思ったのが20年以上前に起こった無登録農薬問題に端を発して、農薬取締法の改定やネガティブリスト制度からポジティブリスト制度への転換が行われた時と似てるなということだ。あの時も、論調は「農薬は危ないものだから使用量を減らさなければならない」「減らすには使用回数を半分にしよう」などと、「なぜ回数を半分にすれば安全・安心につながるのか」といった根拠・エビデンスが明確に示されないまま、各都道府県の防除関係の先生方は減農薬栽培歴の作成などに振り回されていた。
我々トンボも随分擁護してもらった記憶がある。つまり、「トンボが減ったのは農薬のせいだ!なので水田に撒く農薬を減らさなければならない」などというあれである。けど実際は、除草剤が撒かれた田んぼでも俺らのヤゴは平気で生きていたし、指標とされるホウネンエビ君も普通にいたけどなあ・・・。それよりも、治水だ用水整備だということで、水路や畔がコンクリで固められて、住みよい我が家が奪われたことの方が我々の生息域への影響が大だったように思う。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日