闊達な会議は「否定しない」ルールで進めよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2022年10月25日
JAの会議は、意見が出ない、時間が短い、前例踏襲
A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次
コンサルタントの立場で、いろいろな組織の会議に出席を要請されます。最近の特徴は、意見が多く出る元気な会議が多いことです。会議の運営方法や進行に工夫があり、全員参加型を意識していることが要因かな、と思います。
でも、JAの会議に関しては、どのような会議であっても、総じて大人なしく、静かで、ほとんど意見が出ない、という印象が強いです。理事会でも、最近は、喧々諤々の議論は少ないと聞きます。私がJAのコンサルを始めた頃は、施設の整備計画や農業振興計画などの調査結果や提案説明の際は、非常勤理事から質問攻めで、説明者の席にまで詰め寄られ、キツイ質問を浴びせられました。まだ、若造でしたから、やむなく髭をたくわえることにしたのですが・・・。
以前も本コラムで書きましたが、とにかくJAの内部会議、支店や事業所などでの朝礼やミーティング、学習会などを時々拝見させてもらっての印象は、時間が短く、しかも内容が乏しい、率直にいって工夫がないと思います。いつもの顔見知り同士の会議やミーティングだから、特段問題ないと、サッと終わってしまうようです。問題や課題のない職場なんてあり得ません。現代は、日々進化です。みんなで課題を見つけ出し、改善を重ねていく、そのための話し合う場、機会は重要です。
あるJAの支店での夕方のミーティングについて、何店かの状況を聞きました。月に一度、開催される職場のミーティングは、最初に、所属長や職場リーダーが伝達事項などを手短かに話します。そのあと、みんなから意見や提案を求めるのですが、まったく意見が出ない。そこで、進行役の職員は、再度意見はないか聞き、出ないので、先の伝達事項を再確認して、10分余りで終わったそうです。
これって、ミーティングとはいえませんね。「集まって話合いを行うこと」がミーティングです。物事を検討して決定するのが会議です。ミーティングは、いろいろな考え方を集め、情報の交換、共有を図る場です。伝達事項は文書にすれば済むことですが、ミーティングは、みんなが集まり、それぞれが持っている情報や意見を出し合い、話し合うところに意味があるのです。
これは、明らかに準備不足と進行役の職員、所属長の問題です。進行役の職員は、ミーティングの前に所属長と打ち合わせを行い、課題を決めて情報の収集、話合いを行うことで、1週間ほど前に、全員に簡単な意見や意向を記入してもらうペーパーを配布し、集計しておく、せめて、この程度の準備は行ってほしいですね。これで、最低限のミーティングになります。場当たり的な開催は禁物です。
意見や提案がどんどん出る会議にするためには、「否定しない」
JAに限った話ではないのですが、一般に、職場の会議で意見や提案が出ないのは、日常的な職場内でのコミュニケーションが不十分で、会議以前の問題だ、といわれます。普段から、役職や勤続年数に関わりなく、思っていることを自由に話し、提案できる職場風土があれば、職場会議やミーティングでの話合いで、自分の考えを話すことに躊躇しないはずです。いつでも自分の意見が言える、黙って聞いてくれる上司や先輩職員がいる職場が大切です。これは、安心して働ける職場の一要素です。
もう一つ、会議などで意見を言わない最大の理由は、思っていることを言ってください、と言われたので自分の考えを話したら、「何考えているんだ」、「何年、JA職員やってるんだ」と否定的なことを言われてしまった。それ以来、会議では、一切話をしないことにしています、というものです。
何か話をすると、「それは、おかしい」とか、「そんなことはない」、「それは、あなたに問題がある」などと、否定する人たちがいます。せっかく、考えて話したのに、否定された途端、「次から、二度と話をしない」となってしまいます。
このような職員が一人でもいると、他の若手・中堅の職員に伝播し、「余計なことを言わない方がいい」空気が全体を覆い、まったく意見が出ない状況を作ってしまいます。
こうした職場の会議における課題は、職場長や職場リーダーのみなさんの行動や発言における注意深さ、工夫の仕方で解決できると思います。そして、「どんな意見も否定しない」というルールを全員で確認し、厳守することです。その場合、ベテラン職員は我慢が必要ですが・・・。
よく「自由闊達な会議を!」などと言われますが、JAの職場の会議には活かしてほしいキーワードです。「自由闊達」とは、「のびのびとした広い心で、小事にこだわらないこと」という意味ですから、どんな考えや意見であっても受け入れること、否定しないこと、疑問を投げかけたりしないこと。どんな考えや提案でも、Facebookで使われる「いいね!」で受け止めることです。
否定しないで、表情を変えず、メモに書き留めましょう。
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。
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