【JCA週報】二つの世界大戦の時代を生き抜いた荷見安はIDACA設立で何を目指したか(小林寛史)2022年10月31日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、本機構の協同組合研究紙「にじ」の最新号である2022年秋号に寄稿いただいた「二つの世界大戦の時代を生き抜いた荷見安はIDACA設立で何を目指したか」です。
二つの世界大戦の時代を生き抜いた荷見安はIDACA設立で何を目指したか
アジア農業協同組合振興機関(IDACA) 小林寛史
はじめに
小林 寛史氏
パラダイム・シフトという言葉をしばしば耳にする。パラダイムという概念は、米国マサチューセッツ工科大学のトマス・クーン教授が1962年に初めて使ったと言われ、後に「一時代の支配的な物の見方や時代に共通の思考の枠組を指すようになった」(広辞苑(岩波書店))とされている。
パラダイム・シフトが起こる契機としては、発明や革命が考えられ、本特集の主題である「戦争」も世界にパラダイム・シフトをもたらし得るものである。本稿では、20世紀前半の二度にわたる世界大戦によるパラダイム・シフトに、わが国を含むアジアの農協がどのように対処したのか、そのなかで1963年に全中が設立したIDACA(アジア農業協同組合振興機関。現在は一般財団法人)がどんな役割を担ったのかを考察する。
第一次大戦後の国際協調機運と喫緊の課題だった世界経済活性化
第一次世界大戦は1918年末に終了した。戦時中、ヨーロッパ諸国に代わってアジア市場の民需に対応した日本は、海外市場の拡大で経済成長を遂げ、1920年に債務国から債権国に転じた。この間、財閥が力をつけ、金融、造船、金属、化学工業に進出した一方、農業部門では価格低迷や輸入農産物との競争激化が顕在化した。1920年の就業人口に占める農業人口の割合は51.7%と過半である一方、国内総生産額に対する農林業生産額の割合はわずか35.0%だった。実際、農業者の所得水準は、重工業部門に支えられた都市部に比べて3~4割程度だった。
大戦後の日本経済の好調は長く続かず、 1920年に株価が大暴落し、多くの銀行が破綻した。ヨーロッパ諸国のアジア市場への輸出が回復するなか、日本の輸出は失速した。1923年には関東大震災が起こるなど経済・社会は激動に見舞われ続けた。
その頃の国際社会は、世界経済を復興させ、飢えや貧困を解消していく必要があるという点で考えが一致していた。国際連盟は1927年5月に各国の民間人代表をジュネーブに招聘して国際経済会議を開催し、その結果を、同年10月から行われた政府間の輸出入禁止制限撤廃会議に勧告することで国際貿易のルール化作業に民間の意見を反映させようとした。
以下の章立ては下記のとおりです。JCAのウェブサイトにて全文を掲載しておりますので、ご覧ください。
・協同組合間取引を議論した国際経済会議
・組合員への情報開示が戦後の農業発展の基礎に-ブラジル日系農協の経験-
・その場にいなければはじまらない
・スピード感をもってアジアの協力体制を構築した荷見安・全中会長
・荷見安が考えた国際化のなかでの農協の進むべき道
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