コロナ第8波の現状(1/22)伊藤澄一 日本協同組合連携機構(JCA)客員研究員【リレー談話室】2023年1月24日
日本では1月6日に累計感染者数が3000万人を超え、22日に3200万人に達した。9日には死者数が6万人を超え、22日に6.5万人に達した。昨年の12月下旬からの1ヵ月で1日の死者数300人以上が23日を数え、500人を超えた日もある。3年で8回目の拡大波を形成したコロナ禍は、4年目に突入した。
■世界トップの死者数
日本の第8波の死者数は、連日世界トップを続けている。1週間の対100万人の死者数は、1月21日時点で日本が22.4人と高い数値が続いている。因みにイギリス20.7人、オーストラリア14.6人、アメリカ11.9人、ドイツ11.1人となっている(札幌医大フロンティア研ゲノム医科学)。また、10日のNHKの報道では、死者数は60代以降で97%となっている。クラスターの発生件数も増加しており、高齢者福祉施設で7割近くを占めている。第8波は隠れ感染者が全年齢層で増えていて、実際の感染者数は第7波を超えているとの専門家の指摘もある。基礎疾患をもつ高齢者の感染対応が遅れて、犠牲者が増える異常事態が常態化している。各地の医療崩壊が顕著で医療従事者が次々と感染して、職場離脱している。そんななか、感染症の指定が2類相当からインフルエンザ並みの5類に移行する動きとなっている。
通常年と異なる死亡数値の増加(超過死亡)も昨年は、10万人近くあったとみられ、日本はコロナ禍の隘路に入り込んでいる。オミクロン株の感染力は強く、感染者数が増えると比例的に死者数が増える。さらに強い感染力をもつ変異株もアメリカで拡がっている。免疫もすり抜けるようだ。一方で、日本の第8波では人々の日常に現実逃避のような諦観が見られ、コロナウイルスは国民のマインドをも重症化させている。
■医療現場と高齢者にしわ寄せ
私事になるが、不覚にも昨年11月にコロナ陽性が判明した。前日に37℃の発熱があって、翌日に38.5℃の高熱となった。頭痛とひどい喉痛がともなった。唾液嚥下の際には喉を焼かれるような痛みがあった。65歳以上なので保健所マターの患者となり、1週間の自宅療養に入り病状の報告をした。家庭の主治医に連絡すると、「悪化するようなら、65歳以上は抗ウィルス薬が使えるから」と助言されたが、発熱外来での早めの措置で熱は下がり、4、5日続いたひどい喉痛も緩和に向かった。こうした自分の体験から、基礎疾患のある高齢者の死者数が多いのは、喉の激痛、咳による気管支や肺へのダメージもあると思う。寝たきりだと食事はできず、体力の消耗が急激に進むだろう。
どうして罹患したのかは、わからない。実は感染する直前に妻が38℃を超える発熱と激しい咳込みなどの症状で寝込んでいた。手元の抗原検査キットは陰性で、喉痛もなく市販の解熱剤も効いたため、コロナを疑わなかったという。その後の薬局でのPCR検査でも陰性であった。通販の抗原検査キットには精度に問題があり、PCR検査にも検査日のタイミングがあるようだ。異変の前に、どう動くか考えておくことが肝要だと思う。
報道にもあるが、コロナに感染しても若い人はすぐに治癒してしまい、高齢者も重症化しないで済んでしまうケースが多い。感染確認なしのまま隠れ感染者となって、感染拡大の要因となっている可能性がある。現在、数値的には国民の3割近くが感染していると見られる。第8波の惨状にも関わらず、2類相当から5類指定にして経済を回そうとの政治の無策ぶりは、医療現場と高齢者にとって苛政となりはしないか。犠牲者増もあり得る。
私どもは1カ月ほど体調に違和感があったが、以降は復調して日常生活にもどった。医療現場はやむなく症状に応じた優先(トリアージ)を選択するが、そこに行きつくまでの患者の病状と変化は個々に異なる。情報が少ない高齢者は、悪化直前まで我慢してしまう。医療のとるトリアージはそこにたどり着いた人の話だ。しかし、その前に患者自身に実質の「トリアージ」を迫る国や政治には危惧を覚える。
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