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【JCA週報】協同組合理念の明確化と貫徹のために(3/全6回)(一楽輝雄)(1978)2023年4月3日

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「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、本機構の前身の一つである協同組合経営研究所が発行した「協同組合経営研究月報」No.292(1978年1月)に掲載された一楽輝雄理事長(当時)の「協同組合理念の明確化と貫徹のために」です。
ボリュームの関係から6回に分けて掲載いたします。途中で他の掲載を挟んだ場合はご容赦ください。

協同組合理念の明確化と貫徹のために
「協同組合理論と現代の課題」研究会のオリエンテーションからー(3/全6回)

一楽輝雄 協同組合経営研究所理事長

1.協同組合とは何ぞや
(1)その目的と理想(1)
(2)競争原理対協同原理(2)
(3)相互扶助と自主独立(3)
2.協同組合原則について
(1)加入脱退の自由(3)
(2)民主的運営(4)
(3)出資金の性格(5)
(4)剰余金処分の合理化(5)
(5)事業活動に優先する教育(学習)活動(6)
(6)系統組織対連合組織(6)

1.協同組合とは何ぞや(つづき)

(3)相互扶助と自主独立
わが国の今日の実情からは、相互扶助原理を提唱するに当っては、その前提として自主独立の精神の強調が肝要である。民衆自身の力によって民主化を実現した社会においては、自主独立の精神が民衆の身についているであろうが、わが国では外圧によって制度的民主化が強行されただけであるから、自主独立の精神が民衆の意識を支配するには至っていない。

各人の意識において、自主独立の精神が確立しないままでの民主主義が、ただ形式的な民主主義社会を実現するにすぎないのと同様に、自主独立を前提として具備しない協同活動は、多数の組合員を一定の方向に引き連れるためにこそ能率的な役割を演ずる。

わが国の協同組合運動における致命的欠陥は、自主独立の精神の昂揚ということを怠ってきたことであろう。同じ相互扶助とはいっても、自主独立のための相互扶助と、依存主義のための相互扶助とは大へんな違いである。

政府から補助金や低利資金の供給を受けることを、協同組合の力によって獲得した政策と称えたり、民衆が自らの自治で可能なはずのことを行政に任せたままで、そのやり方に何がしかの注文をつけて、それをもって政治的要求を実現した、とお手柄にするということが、わが協同組合運動においては通用している。

本来は出資金によって賄うべき資金は、これを組合員に出資させることこそ、協同組合が民主的組織であるということの実を挙げるための要件の第一であるにかかわらず、これを怠って安易に他からの資金の提供に依存している。

組合員はたいてい何十万円または何百万円の預貯金を持っているのに、せいぜい数万円程度にしかならぬ出資所要額の何割に相当する金額しか出資していないのが一般である。不足分は貯金として預かった資金を使ったり、組合員に引き受けさせた組合債によって吸収した資金を使うのは、まだ好ましい方として、これを組合員以外からの借入金に依存するのは、例外的なこととして、他に方法のない場合は別として、一般的には理屈に合わないことではないか。

組合員として、進んで出資すべき出資金を、その一部分だけ出資して、不足分は役員の責任で調達させるというようなことをそのままにして、組合の主人公は組合員であるとか、組合の運営は組合員本位でなければならない、というようなことを組合員に向って言うのは、筋が通っていると言えるであろうか。

行政や企業にできるだけ依存しないで、自らの力で物事を処理するためにこそ協同組合は結成するものである。それが行政や企業の下働きをすることをもって甘んじるのは、組合員の権利を伸張する所以ではなく、その反対である。自主独立は、協同組合運動にとっては、相互扶助の理念よりも、更に根底の理念でなければならない。

2.協同組合原則について

いったい協同組合原則という言葉が存在するのがいいことなのか、悪いことなのかをこの頃疑問に思うことがある。協同組合原則6カ条などと事務的に書いてあると、それが協同組合が協同組合であることの十分の条件であるかの如くに考えられがちである。

6カ条の原則などは、一つ一つとしては実務的なものであり、それに重要性があるのではない。むしろ、この6カ条の原則が出てくる根底の考え方こそが重要である。この6カ条を機械的に実行することが大切なのではなくて、その思想的背景を尊重することが大切であり、その適用には、相当の弾力性があってよい。

また、それぞれの原則はただ1つの思想から出ているから、どの原則が大切だとか、大切でないとかいうことはできない。原則の6項目自体は必ずしも記憶しなくともよい、忘れてもよいであろう。その基本になる思想、考え方が大切である。

尤もこの基本的な考え方というものはこれこれである、と取り立てては原則検討委員会の報告書においても説明されていない。それはちょうど野球を見るために球場に集まった人びとは皆野球のルールを心得ているから、アンパイヤがルールの説明をする必要がないのと同じであろう。協同組合哲学を共通にもった人びとが論議するわけであるから、改めて協同組合哲学とは何ぞやと、正面から書く必要はないわけである。

しかしその論議の中には随処に考え方の片鱗が出てきている。そのつもりで読むならあの報告書の全体から協同組合の物の考え方、理念、哲学といったものは、十分に感得されるはずである。原則を形式的、事務的に解しないという趣旨で、それぞれに関連して留意すべき点を挙げてみれば、次のような問題がある。

(1)加入脱退の自由
いわゆる組合員の公開性が原則の第1にかかげられているが、これは組合員について、人種的、宗教的、政治的等の差別を一切してはならないということである。同時に組合に加入した以上は、必ず組合員としての義務を履行しなければならないということも意味している。

組合に対して忠誠を尽す意志のない人までも組合に加入を許さなければならないのではないということを強調している。互いに連帯して行動する意志のある人に対しては、制限をしないで加入を認め、同志の輪を拡げていかねばならないというのである。

どんな人でもいい、ただ組合員の数を増やすという意味での門戸開放ではない。もちろん現実には、最初から自覚した人ばかりが組合に加入するわけではない。例えば生協でいえば、単に商店よりも安い価格で物が買えることを期待して加入するのが多いというのが実態であろう。そういう人びとにも、だんだんと協同組合理念に目覚めさせ、協同組合思想を身につけさせる見込みがある限りにおいて、組合員とすべきである。

(続く)

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