(333)「無色の緑」はどんな色?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年5月26日
大昔、大学で言語学の初歩を学んだ際の例文に、「Colorless green ideas sleep furiously.」という英語があります。今から半世紀以上前に世界的に有名なノーム・チョムスキーという言語学者が書いた本の中に記されているものです。
世の中では、生成型AI(人工知能)のChatGPTが各所で注目を浴びている。このニュースを最初に聞いたのは昨年末だが、その際、冒頭に掲げたチョムスキーによる例文を思い出した。生成型AI(以下、AI)が、あらゆる状況に正確に対応できる文章を作り出せるようになるまでに、我々に残された時間はどのくらいだろうか...と考えてみた。
AIが人間の知性を大きく上回る転換点のことを「シンギュラリティ(singularity)」という様だ。やや古くなるが、総務省の「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会報告書2015」(注1)が今でも公開されている。この31頁には、1台のPC(これももはや古い言葉かもしれない)が人間の能力と等しくなるのが2029年、同様に1台のPCが全人類の能力を超えるのが2045年...という図が記載されている。
報告書が出た当時から見れば2029年は10年以上先だが、2023年の現在から見れば6年先に過ぎない。現在の高校生が大学を卒業する頃、である。10年以上前からこうした意識を持っていた人達には当たり前でも、いざ現実に誰でも使える形で世の中に出てくると、やはり衝撃は大きい。
ところで、冒頭の文章は日本語に直せば「無色の緑の考えが猛烈に眠る」とでもなろうか。文学的な書き物の中で何かの比喩として用いられる場合を除き、普通は何のことだか意味がわからない。ただし、あくまで英語の文法上は完璧という例だ。
過去半年の間に流れたAIに関する様々なニュースやコメントを見ると、回答レベルの精度を紹介したものから、AIを用いて文書作成することの是非、さらにビジネスや教育現場での活用の是非まで色々である。恐らく今後も議論は続いていくであろう。
使用の是非については価値観や倫理観、さらに各国・各企業・各組織・各個人が置かれた環境や具体的な使用の状況とも関係があるため、簡単には言えない。ただし、多くの人は世の中のあらゆる仕事のやり方が良くも悪くも大きく変わる可能性を秘めていることは何となく感じているのではないだろうか。
そういえば、このコラムで「将来残る仕事」としてオズボーンとフレイの論文を紹介したのは5年前である(No.070、071)。その当時はまだここまでAIが実用的ではなく、彼らの論文も漠然とした「将来の仕事」の種類に対する期待と不安を掻き立てるような内容であった。
ところが、その後わずか5年の間に手元の携帯電話で誰もが活用可能になるまで変化している。これが今後、どこまで私達の生活を変えるかは正直全く予想できない。
現実を見れば、多くの人は携帯やパソコンを常に使用している。これに精度が各段に向上したAIが標準装備として付くのもそう遠い将来ではないであろう。
当面の過渡期においては企業や教育機関なども「AIで作った報告やレポートは認めない」という対応でも何とか乗り切れるかもしれない。また、著作権との関係も課題となろう。だが、将来的にAIが自動車、パソコン、携帯電話と同じレベルで普及した場合、もはや好き嫌いではなく生活必需品になる可能性すらある。その場合、我々は拒絶ではなく共存し、いかにこれを使いこなすかを求められる状況に否応なしに巻き込まれていく可能性が高い。
それでも我々は、人間として「選択の自由」をしっかりと意識・確保した上で使いこなすことが重要である。「無色の緑」のような文法的には正しくても、意味のない言葉や文章の価値をどう判断するか、それこそが求められるからだ。
* *
5月の仙台は「無色の風」が吹いていますが、新緑の香りが一杯です。
(注1)総務省「インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する研究会報告書2015」 https://www.soumu.go.jp/main_content/000363712.pdf#page=3 (2023年5月25日確認)
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