子どもを愛し、能力を高める【小松泰信・地方の眼力】2023年8月2日
「るいは友を呼ぶ」とはこのことか。自民党女性局のメンバーがフランス研修中に撮影した、楽しげな写真が評判になっている。「3才からの幼児教育の義務教育化、少子化対策、政治における女性活躍などの課題について、仏国会議員や行政担当者と意見交換」をしたそうだ。「異次元の研修」による「異次元の成果」を期待する。

少子化に歯止めかからず
総務省は26日付で住民基本台帳に基づく2023年1月1日現在のわが国の人口を公表した。日本人の人口は1億2242万3038人で、前年より80万523人(0.65%)減少し、14年連続マイナス。減少幅は1968年の調査開始以降最大。また、これまで増加を続けていた沖縄県も減少。初めてすべての都道府県で減少した。出生数は過去最少の77万1801人。
昨年初めて減少した東京圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)は2年連続のマイナス。減少数は約3万8千人増の約7万2千人。
外国人は299万3839人で28万9498人(10.70%)増加。これは、3年ぶりの増加である。
外国人を含む日本の総人口は、51万1025人(0.41%)減の1億2541万6877人で10年連続減少。
不可欠な自治体間協力
「道内はとりわけ深刻だ。509万人と前年より5万人減り、500万人割れが迫る。減少数は11年連続で全国最多だ」と悲痛な筆致で記されているのは北海道新聞(7月28日付)の社説。
「少子化対策は必要だが一朝一夕に効果は上がらない。人口減少を前提とした持続可能な地域づくりを急ぎたい」として、自治体間の「人口減を補う協力」が肝心とする。
北海道内でも展開されている、総務省が推進する「中心となる市と近隣の市町村が連携して、生活機能を補完し合う『定住自立圏構想』」を深め、協力分野を広げていくことを提案している。
また、全国で住民登録している外国人が過去最多となり300万人に近づいていることや、北海道における外国人住民が4万4210人で、8583人(24.09%)増加となっていることから、「単なる労働力と見るのではなく、地域や職場の仲間、生活者として受け入れ、協力してまちづくりを進める視点が欠かせない」として、「日本語教育の充実はもとより、有期の在留資格を見直し、家族を帯同して無期雇用で働ける制度を広げる」ことなど、外国人が働きやすい制度や環境を整えることを求めている。
いまだ東京圏一極集中是正されず
「事態をより深刻に受け止め、『こども未来戦略方針』に盛り込んだ少子化対策を、早期かつ確実に実行してもらいたい」と、現政権に檄を飛ばすのは産経新聞(7月26日付)の主張。
前年に減少に転じた東京圏の日本人が、今年も減ったことから、「東京圏にも、いよいよ人口減の波が押し寄せつつある」と危機感を募らせ、「人口減が本格化しても、東京圏には日本経済の牽引役が求められる。活力を維持する新たな成長モデルの構築は急務だ」とする。
他方、東京圏の1都3県すべてで「社会増」が続いていることから、「一極集中が是正されたわけではないことに留意」し、災害リスク軽減などの観点から、一極集中の緩和に取り組むことを訴える。
「基地開設で人口増加」がそんなに嬉しいか
もちろん市町村の段階を見れば、人口が増加しているところもある。そのひとつが、沖縄県石垣市。
八重山毎日新聞(7月12日付)によれば、中山義隆石垣市長は11日、市制施行76周年の10日に住民基本台帳人口が初の5万人を達成したと発表した。同日付で5万1人。5万人達成の大きな要因について中山市長は「3月の自衛隊駐屯地開設もあるが、それ以降もコロナ禍からの経済回復で仕事などで移住者が入ってきている」との認識を示した。
市民課によると、5月11日時点で駐屯地開設に伴う隊員とその家族の住民登録者数は637人。同市の今年1月1日現在の人口は4万9530人であることから、駐屯地の開設が5万に押し上げた大きな要因となったことは間違いない。
市は5万人達成を祝すセレモニーや、「祝!人口5万人達成 ギネス記録挑戦&石垣島大BBQ祭り」を行うそうだ。
この慶祝ムードに対して、同紙(7月19日付)の社説は、増加を続けていた沖縄県の人口も減少に転じたことや、県内15の離島市町村の人口減少推計を重く受け止め、「増えてきた県外からの移住者も基地ができた石垣島には愛想をつかし、敬遠しないとも限らないではないか」と冷静な対応を求めた。
そして、宇都宮市にある廃校目前の小学校が、「小規模特認校制」を導入し、県外からの児童募集や行政の移住促進策など、地域と一体化して再生していく姿を描いたドキュメンタリー映画『奇跡の小学校の物語』を紹介する。そこから、「学校を取り巻く地域の力、魅力がポイント」と指摘し、石垣島の人口問題を解消するために、「少なくとも明確なのは『基地のない自然豊かな島にしよう』ではないか」と、問いかける。
小学生の声を聞き、そして活かす
「地元のまちづくり 小学生の声も反映せねば」と題した社説は山陽新聞(7月31日付)。
まず、岡山県和気町の佐伯小の児童らによる、廃校になった小学校の活用への取り組み。同町の旧山田小は2017年に現在の佐伯小に集約され、校舎は使われなくなった。21年、通っていた児童らが「思い出の詰まった母校を取り壊さないでほしい」と団結し、雑草が伸び廊下などに鳥のふんなどがあった校舎の清掃を始めた。これに賛同した住民も加わり、再利用を訴えてきた。
さらに、児童らは写真展などの催しを行い、活用策を町教委に提案。これに住民らも呼応し、お返しに交流イベントを開催。今年2月に児童らは、商店がなく買い物に困っている地域のために、会社や農家に商品を販売してもらう会まで開いたそうだ。
この他、真庭市が、市内の公園の基本構想・計画案に、地元の小学生が提案したアイデアを取り入れたこと。美咲町の小学生が、町特産の卵について、町外へのPR策を町幹部らに提案し、検討されていることが紹介されている。
社説子は、「自分たちが生きる将来を左右する地元のまちづくりに、当事者である子どもの声を反映することは重要だろう」とする。小学生の時から、地域に目を向け、問題意識を持ち、解決策を提起し、実現にこぎ着ける。このプロセスを経験した児童の将来が楽しみである。子どもの数を増やすことは容易ではない。しかし、子どもを愛し、能力を向上させることは可能である。
「地方の眼力」なめんなよ
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