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「減点主義」を改め「加点主義」の組織に変換しよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年9月26日

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日本社会の「減点主義」を、笑いにした「減点パパ」

A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次

このコラムの読者で、三波伸介と中村メイコが司会し、NHK総合で放映されていた「お笑いオンステージ」をご存じの方は、どのくらいおられるだろうか。この番組が始まったのは、1972年(昭和47年)4月、放送終了は10年後の82年(昭和57年)4月。この番組内に、人気の「減点パパ」のコーナーがあった。

三波とゲスト(子供などの家族)が登場、パパの顔の特徴、面白おかしいことなどを聞きながら、三波が大きな紙にパパの似顔絵を書き上げる。そこへ、パパを呼び、子供や家族に「パパのダメなところ」、やめてほしいこと」などを聞く。似顔絵の顔の回りに「?」の札をどんどん付けていく。「?」だらけの"減点パパ"。

そのあと、子供がパパについての作文を読み上げる。すると、三波は一転、似顔絵に最大の「○」の札、小さな「○」をたくさん付けて、めでたし、めでたし。

一般に、日本は減点主義の社会で、欧米は加点主義の社会といわれていた。日本は、マイナス面やダメなところを見つけ出し、それを徹底的に改善する減点主義。「KAIZEN」は、国際的な共通語になり、品質の高い商品づくりに大きく貢献。日本企業や経済の成長の重要な要因とされた。

日本の減点主義は、島国で集落共同体型の社会なので、ダメなところを修正して、周囲との協調性を重視する社会だからだ、という説も目にした。そして、会社組織のなかにも、家庭にも、この減点主義は残っているという。職場では、上司は部下のダメなところを探して評価、減点し、人事評価に反映する。面談などで指摘し、減点を少なくするよう、改善を求める。さて、部下は何を思い、どう行動するだろうか。

一方、職場での雑談で、「あなたの奥さんは、採点すると何点?」といった質問に、「うちは80点かな」と答え、その理由で、ダメなところをいくつか挙げる。ここまでなら問題ないが、この話を奥様に話したらどうなるか。笑ってやり過ごす女性は、よほどできた人だし、少ないはずだ。「何言ってんのよ!!」と怒り出し、物が飛んでくるかも。

「減点主義」は前向きなチャレンジ精神を殺しかねない

上記の話について、「うちの奥さんは、とってもできることが多い。あれも、これも、いろいろ挙げて80点だな」、この話は、家に帰って奥様に話ができそうだ。これが、加点主義、加点思考である。

同じように、職場での課題への取組み状況の検証や確認を考えてみよう。課題の目標に対して、どこまでできているか、何ができていないか、何が問題か、を職場で話し合ったとしよう。その際、1から10までの目盛りの付いた簡易なスケールを頭に描いてほしい。私は、いつも、この10の目盛りのスケールを持ち歩いてください、とお願いしている。

話合いでの減点主義は、できていないことを挙げてみて、現時点では、50点とか60点と評価し、何が問題でダメか、どうしたら問題を解決できるか、といった話になるだろうが、ここから先に話がなかなか進まない。なぜなら、意見やアイデアを出しても失敗したくない、チャレンジする気持ちが生まれないので、意見が出しにくいのである。

しかし、加点主義では、話合いのなかで、できていることを挙げてもらって加点していき、みんなで確認するので、前向きに点数を上げるためには何が必要か、のアイデアや意見を出しやすい。とくに、強調したい点は、スケール目盛りで現状が「5」だったとすると、「これを、1ポイント上げて、「6」にするためには、どんなことに取り組んだらいいだろうか」と、問いかけると、具体的で前向きな、即実戦可能な提案やアイデアの意見が出される。

人の評価も同じで、本人に向かって、ダメなところを挙げ、その減点によって「あなたは7点」だと伝える。さて、本人は納得し、前向きに自分の変革にチャレンジしようとするだろうか。これからは、失敗やマイナスな評価になることはしないと考える。さらに、上司の評価ポイントに不信を持ち、信頼関係も失いかねない。

逆に、加点主義は実績に対する評価だけでなく、失敗はあっても、日頃取り組んでいること、出来たこと、チャレンジしたことを加点する。本人の高いモチベーションを維持でき、新しいチャレンジも前向きに捉えられる。明日から行動に移してくれそうだ。

JAの職場改革や業務変革、難しいかもしれないが、人事評価においても、加点主義の導入、変更を真剣に考えてもらいたい。JAの職員と組織を伸ばすために。

減点主義の「悪習」を、加点主義で改善しよう!

JAの会議に出席していて気になることがあるが、これは、減点主義に由来していないか、と思う。具体的な話をすると、会議に提出される提案書について、意見を求められ、話をする人の多くは、提案書を作成した役職員へのリスペクト(敬意)がないこと。ダメなところを最初から指摘するという減点主義だ。会議は、最初から沈む。答える職員の意欲も削がれてしまう。だから、会議は静かで、議論は貧困になる。

民間企業では、提案された資料に対して、社長であろうが、幹部社員であろうが、会議内では、発言者は冒頭、担当したスタッフをねぎらう発言をし、とくに、印象的で評価できる良い点を最初に挙げる。続いて、問題や課題、評価の違いについて質問をする。これが一般的だ。したがって、この質問に対して返答するスタッフは、「良い質問をありがとうございます」と話してから、返答を始める。好循環が生まれ、会議は勢いづく。

何度も書くが、JAは「人の組織である」。若い職員といえども、リスペクトは必要であることはいうまでもない。人や組織の成長や発展を考えるなら、加点主義への変革は必要だ。組織全体でも、各職場でも、各家庭でも・・・。

本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)より、『コラム名』を添えてご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。

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