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公共交通網の整備は国づくりの要諦【小松泰信・地方の眼力】2023年10月4日

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10月3日JR西日本は、岡山県と広島県を結ぶ芸備線の一部区間68.5キロについて、赤字が続くことから、ローカル線の存続やバスへの転換などを話し合う「再構築協議会」の設置を国に要請した。改正地域公共交通活性化再生法が、1日に施行されたことを受けてのもので、設置要請は全国で初めて。

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公共交通に対する国の責任

毎日新聞(10月4日付岡山版)は芸備線に関係する三者のコメントを載せている。
JR西日本広島支社の奥井明彦副支社長は「利用しやすい交通体系の構築が最優先。存続や廃線を前提にせず、最適な交通体系を構築していきたい」と述べた。

広島県の湯崎英彦知事は「地域公共交通のあり方に国の関与を求めてきた我々の主張が一定程度、実現した仕組みになっていることは評価したい」としたうえで、「一部区間だけでなく広域的な観点から、ローカル鉄道と沿線の活性化を含めた幅広い議論がなされるべきだ」と主張。2018年に島根県江津市と広島県三次市を結ぶJR三江(さんこう)線の廃線後、バス路線に置き換えられた沿線地域が「非常に厳しい状況」にあるとし、小規模自治体にとって公共交通の経費が増加すると、医療や子育て、介護などの予算を圧迫する可能性があると指摘。人材確保を含めて「重い負担になる」と訴えた。

岡山県の伊原木隆太知事は、協議会への参加を正式決定したわけではないとことわったうえで、国からの意見聴取には「新見市や広島県と相談しながら返答したい」と述べ、国には「自治体とJRの立場が大きく乖離している問題に国が関与することで、行司としての役割と同時に、ギャップを埋められるよう支援してほしい」と要望した。

両県知事間に、公共交通に対する国の責任に関する認識の違いが感じられ興味深い。

鉄路維持かバス転換か

「その名の通り、地域公共交通の『再生』につながるのか」で始まるのは、山陰中央新報(10月1日付)の論説。

再構築協議会での検討方向について、「第三セクターや上下分離方式による鉄路維持か、代替バスへの転換」と見ている。
鉄路維持の場合、11年の豪雨で被災したJR只見線の会津川口―只見間(27.6キロ)を参考例に上げる。「JR東日本は鉄道再建に難色を示しバス転換を推したが、観光利用を重視する沿線自治体が鉄路での再開を要請」し、福島県が線路や駅舎を保有、JR東日本が運行を担う、「上下分離方式」で昨年10月に運行を再開した。JR東日本の負担は軽減したが、県や地元自治体が毎年約3億円を負担することに。

バス転換の場合については、「18年3月末で廃止されたJR三江線(江津-三次)の沿線自治体はバス転換を選択。『小回りが利き利用しやすい』という触れ込みだったが、実際の利用は低迷し、路線撤退が相次ぐ」ことから、「危うさが潜む」と、湯崎広島県知事と同じ懸念を示している。さらに、バス業界における「慢性的な運転手不足」と、来年に控える「運転手の時間外労働の上限が課される『2024年問題』」に言及し、「永続的に代替交通としての役割を担える保証はない」とする。

只見線が再生モデルとなるための課題

只見線が1日に全線再開通1周年を迎えたことから、「鉄路による地域振興のモデルとなるよう、利活用をさらに推進しなければならない」とするのは、福島民友(10月1日付)の社説。

11年ぶりに復旧した会津川口駅―只見駅間の1キロ当たりの1日平均乗客数は被災前の1.6倍となったものの、観光目的の乗客の増加に比べ、過疎化が著しいため沿線住民の利用に大きな変化はないなど、手放しでは喜べない状況を記している。

同区間の平日の運行は上下線で各3本。運行時間は朝晩と、午後2~4時台。週末などに臨時列車が運行されているが、駅を降りると、次の列車まで長時間待たなければならず、沿線自治体や住民は増発、ダイヤの見直しなどを求めているとのこと。

また、「鉄道に乗るだけでなく、乗客が途中下車して散策や飲食を楽しみ、宿泊することで経済の波及効果が生まれる」として、乗客を沿線の観光地、車両の撮影スポットに誘導する2次交通の整備が急務とする。
(小松注;2次交通とは、拠点となる空港や鉄道の駅から観光地までの交通のこと。シャトルバス、乗り合いタクシー、レンタル自転車などが主な交通手段)

厳しい状況にある2次交通

「タクシーや鉄道、バス業界の運転士不足が福井県内でも深刻化している。来年3月の北陸新幹線県内開業が迫る中、2次交通を担う人材の確保は喫緊の課題」とするのは福井新聞(9月27日付)の論説。

今年6月末時点の福井県内の法人タクシーの運転手は929人。2019年3月末比で18.8%減。「長引く景気低迷に新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけた」と分析する。各事業者とも新幹線開業後の客足にも期待し、車両数はおおむね維持しているが、「車はあるが、人がいない状況。非常に悩んでいる」と嘆き節。

福井鉄道も運転士不足を理由に、10月14日のダイヤ改正において一部の路線で約2割の減便を決めている。同社では近年、運転士の離職が相次ぎ、社員の負担が重くなっている。ビジネスチャンスが到来しているとはいえ、「労務環境改善のため減便に踏み切らざるを得なかった」そうだ。
「地域交通の維持は福井の地域社会の維持に直結する」と、危機感を募らせる。

国の責任転嫁を許さない

新婦人しんぶん(9月30日付)で可児紀夫氏(愛知大学地域政策学研究センター研究員)は、「アメリカ、欧州などでは交通を『経済的な価値を優先した事業』として捉えることなく、国、州、自治体、企業が公共交通をささえる財政制度の仕組みを確立(させたこと)」を紹介している。公費負担の理由は「市民の利便性向上と社会的利益の増進」。利便性の向上で、さまざまな社会的効果と幸福への波及を目指している。

日本の公共交通の政策は「経費の最小化、自治体負担の赤字補填が中心」、世界は「社会全体の利益(環境・教育・健康・福祉・観光など)の最大化を目指す」と、彼我の違いを教えている。

公共交通網が劣化したり寸断されているところに、人は安心して居住することはできない。地方創生とか地方の活性化を語るなら、公共交通網をより良きものに整備しなければならない。それは、国づくり、国土保全の要諦である。国が第三者の顔をして、その責任を果たさず、地元自治体や交通を担う事業体、さらには地域住民に責任を求めることを許してはならない。

「地方の眼力」なめんなよ

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