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女性の管理職を増やし「JAの組織変革」を急ごう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2023年10月10日

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働く女性にやさしい会社はメリットが大きい

A・ライフ・デザイン研究所 代表 伊藤喜代次

40年間のコンサルや調査の仕事を通じて、実際に体験したこと、成功したことで記録していることで、他の会社組織にも適用できることはたくさんある。こうした経験的な法則は、方法や手順を変更するだけで、かなりの確率で成果に結びつく。

なかでも、女性の社員や管理職に関することは、期待も込めて、多くの事例があるが、なかなか活用場面に遭遇しないために、活かされない経験が多い。
もちろん、業界による違いはある。たとえば、小売業では、フロントもバックヤードも、業務のほとんどを女性が担っている。しかし、管理職は男性、という店が多い。しかし、女性の管理職が多い店は、スタッフやチーム管理の話合いなどが適宜行われ、決断・行動が早い。だから、ロスが少なく、収益性が高く、労働生産性が高い店が多いのだ。

また、女性の社員もパートも、離職率が低い。流動性の高い業種なのだが、女性のアイデアの活用で好結果が生まれる。事業・収益目標への強い達成意欲は女性の方が高い。責任感も強い。これは、業種を超えて言えることでないか。

このほか、一般のサービス業の会社では、子育て中の女性社員が多い会社は持続的な成長度が高く、若年の退職者が少ない。平均勤続年数も高いという実績がみられ、何よりも働いている女性たちが明るく、元気度が高い、という印象があった。

また、女性管理職の比率が高い会社は、優秀な人材の獲得につながるともいわれ、女性活躍の実情を積極的に公表している企業は、「女性が働きやすい」という企業イメージの向上につながっている。企業名が話題になるだけで、人材募集の際の問合せ件数、サイトへのアクセス件数が格段に上昇し、これまでとは異なる優秀な人材の応募が増えたという。それに関連して、男性の応募者も増加したという話も聞いた。

たしかに、私のように、コンサルや調査の"仕事場"が、地方都市の中小企業の場合では、女性の労働に頼らざるを得ないという事情も大きい。小売・卸売業、飲食・宿泊業、医療・介護業などは、女性に活躍してもらわないと事業が進まないという状況は見落とせない。そんな理由もあって、女性への期待は大きく、必然的に地方都市の中小企業の女性管理職比率が30%を超える地域も生まれるのである。

JAの女性職員の労働条件や環境は自慢できることが多い!?

15年ほど前、コンサルティングを行ったJAでの話。

JAの支店の再編整備計画の調査と提案書作成に加え、既存の「支店力強化プログラム」のコンサルを行った。各支店から選出された職場リーダーと、本店の担当部門の職員を対象にした研修と課題検討の会議がメイン業務。支店から選出され、支店長が推薦した職場リーダーのほとんどは女性。これは、支店長から見て、頼りになる30歳前後の職員は女性である、という判断なのだ、と理解した。

そのメンバーとの雑談のなかで、このJAが、女性職員に働きやすい職場であることが話題になり、なかでも、子育て中の女性には、労働環境に加えて、職場のサポートもあって恵まれている、という。そこで、私は、彼女たちに、具体的にどんなところが、他の会社組織と比較して子育てしやすいなどの優位性があるか、レポートをお願いした。

詳細は記憶にないが、このメンバーのレポートは、人事教育部門に話をし、新採用の資料として活用することとした。子育てに励む女子職員の目線で、JAの労働条件や環境、実際に女性職員の生活実態などのレポートによって、応募人数は増加し、毎年、応募してくれる高校・大学の関係者からも評価をいただいた。

JAは地域社会と密接に連携した組織であり、地道な活動を重ねてきているが、素晴らしい労働環境にあることを自覚していない点がある。それを、対外的に、効果的にPRすること。新規採用時だけの情報ではなく、JAの組合員や利用するお客様にも知ってもらうことで、組織的な評価にもつながることを理解してほしいし、丹念に自己評価、自己点検をして、組織の変革につなげてほしい。

360°評価で"部下なし女性管理職"を増やす方策も検討しよう

現在のJAにおける女性の管理職の割合は1割前後。増えない理由の一つとして、私は女性職員の入職からの教育研修プログラムが、画一的で変化がないこと。業務場所を支店の窓口、渉外に特定しているためではないか。

ところが、先の支店力強化プログラムのメンバー選出でも、実際の現場の支店長は、男性職員よりも女性の方が学習、研究、議論、取りまとめなどの業務上の優位性、真面目に取り組む姿勢が高いと判断しているのだ。私も賛同する。したがって、教育や育成のプログラムを多様化し、画一性の変革によって、潜在的な能力や力量のある女子職員を見出すことで、多様な道の創造と選択が可能になると考える。

そういえば、私が長く行ってきたJAの指導機関の教育研修で、管理職や支店長を対象にする研修参加者での女性の割合は1割程度。といって、女性を対象にした管理職研修プログラムを行うところは少ないか、ほとんどない。JAは、民間の教育プログラムを研究して、一定の条件をクリアした女性職員を積極的に参加させることを奨めたい。また、隣接のJAと相談して、合同での女性対象のマネジメント研修の実施も企画してほしい。機会の増加は、女性の能力の発揮を飛躍的に発展させる。

こうした状況を考えれば、JAにおける女性の管理職が、増加していく"景色"が見える。それを意識して各種の報告や検討、会議等へのオブザーバー出席など、中堅の女性職員に参加の機会を提供し、実学経験を積めば、管理者としての総合的な能力向上が期待できる。

そして、もう一つは、女性職員の評価についてである。①上司・同僚・部下の評価、②実績・成果の活動評価、③ファイナンシャルプランナーの資格のほか、宅建・不動産などの資格取得とその活用評価、④相談力、相談実績、組合員・お客さまの評価、といった4つの角度からの評価(360°評価)を行い、一定の評価点を超えた者は、部下のいない管理職として昇格させる新ルールを検討してほしい。

JAの現場には、相応の力量を持つ女性職員が多い。現実に、組合員対応力、相談力、各種資格取得、事業・業務実績に優れた女性職員は少なくない。私は、このほかにも、JAの現場で働き、組合員やお客さまと接する女性職員のマーケティングのすすめ方、また、スタッフ育成・管理、マネジメント思考・ノウハウなどには、大いに期待する一人である。女性管理職の増加が、JAの組織変革を確実に前進させると確信する。

本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)より、『コラム名』を添えてご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。

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