野菜・果実のコスト積み上げの販売は空論【原田 康・目明き千人】2024年3月30日
毎日の食事に不可欠な野菜、果実等の農産物を確保するためにそれらの販売価格に農家の生産費を積み上げた価格で販売して、安定した数量を確保する必要があるという意見がある。理論としてはまことに結構であるが現実には難しい。
野菜や果実等の取引をする時の価格、相場は卸売市場の早朝のセリ価格が昼過ぎには公表されているのでこれが基準となっている。東京の大田市場が有名であるが、卸売市場が全国の主要な都市にあり、各地方のセリ価格も広報されている。
全国で行われている卸売市場以外の場所での野菜、果実、畜産物などの販売、例えば、農家の庭先販売で農家と仲買人や卸売業者との取引の価格は公表された卸売市場の価格を基準として現物を見ての取引となる。業務用の農産物も同様な取引が行われている。
農家の生産コストを個別品目ごとに計算することは不可能である。農家の生産コストをトータルで計算することは出来るがこれを時期別、品目別に分けることは不可能である。この様に野菜、果実等の農産物の取引価格に農家の生産コストを積み上げるのは難しい。
更に、輸入品が加わる。輸入品がどの程度のウエイトを占めているかは、スーパーの店頭で野菜、果実、肉類を種類別に産地を見るとよくわかる。アメリカをはじめヨーロッパ、アフリカ、アジアの世界の国からあらゆる商品がきている。国際化を再認識する。
スーパーの売り場でお客さんがどの商品を手に取るか、小売りの店頭は激しい競争の場である。消費者へのアンケートでは、「安全・安心な国産で農家の生産費を考慮した商品であれば少しくらい高くても消費者はそのような商品を求めている」となるが、現実はこのような商品は売れ残り、残品となる。次の仕入れでは外される。
日常の食事に必要な野菜、果実、畜産物を農家に作ってもらわなくてならない。農家が出荷をして赤字となったら個別品目の価格保証方式ではなく農業を継続出来る様に農家の所得全体の保証方式が現実的な効果のある方法である。ヨーロッパではこの方式が定着している。
(原田 康)
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