コメ・水田農業の将来に危機感示した渡辺会長【熊野孝文・米マーケット情報】2024年5月17日

全国米穀工業協同組合は5月13日に千代田区のルポール麹町で第42回の通常総会を開催した。総会後の講演会に渡辺好明氏(一般財団法人米麦改良協会会長)が登壇、「基本法の改正とコメ・水田農業の行く末」をテーマに1時間講演した。講演では冒頭に自身が今年3月まで学長を務めた新潟食料農業大学の1年生がコメと水田農業がなくなるとき、中山間の地域社会が消滅するというイラストを紹介、現在のコメ政策が続くことへの強い危機感を示した。
渡辺学長はエピソードとして小学校に出前授業に出向いた際、豊島区の小学5年生から「日本のおコメは余っているのか?余っているなら困っている国や人々に輸出・援助してはどうなのですか」という質問があった。これに対して日本はコメの生産を制限しながら、一方で年間77万tも輸入するという世界でも有数な輸入国であるといった常識が通用しない世界であることをわかるように説明しなくてはいけないとしたうえで、各機関が予想した将来のコメ需要を示した。
それによると2030年には587万t、2040年493万t、2050年には397万tまで減少するという予想で、価格政策では維持できない段階に来ている。しかも消費者は生産制限で価格を維持しているのに加え、転作・生産調整への助成で二重の負担になっているとした。
基本法の改正については、まず、スイスの事例として1996年の改正で農業の役割として「食料安定供給への寄与、生存の自然的基礎の確保、農村景観の保全、国土の分散的利用」に加え、「農業の公益的機能を賄う直接支払い」の規定を追加した。さらに2017年の改定では食料安全保障の条項を追加、国が促進すべき事項として「農地など農業生産基盤を保全すること、効率的な資源利用、市場志向、持続可能な農業発展のための貿易、資源を節約する食料利用」などが含まれているとし、食料安全保障、環境の保全・調和、政策手法は『直接支払い』が世界の潮流である。
ポルトガル憲法における農業政策の規定では「総生産・生産性の増大、品質の向上、効率的な流通、国内供給と輸出の振興、地域社会の発展、農地所有構造の合理化、農業従事者・他産業従事者の条件の均衡、土壌・自然資源の合理的利用を通じた持続の保持等」で生産制限よりは総生産の増大、輸出の振興、持続的発展がカギになっている。
これに対して日本はこの35年間で農地は25%も減少しており、日本だけが大きく農地を減らしており、これで「なんの食料安保ぞ!」と言わざるを得ない。農業の重要な4要素とは①土地(農地)②水③人(担い手)④技術であり、これらを組み合わせて効率的に活用することで食料供給の安定が確保される。国際社会(FAO)が考える食料安全保障とは「すべての人々が、活動的で健康な生活のための食事のニーズと食品の好みを満たす十分で安全で栄養価の高い食料に、物理的、社会的かつ軽税的に常時アクセスできる場合に存在する状況」である。
そのうえで日本がとるべき最大の食料安全保障政策は「水田の確保・維持」と「コメの輸出」であるとした。
水田については、亀岡高夫元農水大臣の「畑作文明は2000年、稲作文明は永遠なり」という言葉を引用、精いっぱいコメを作って①自給率を上げ②いざというときの安全保障へ③稲作が維持されれば農村地域(コミュニティ)も維持される。輸出を可能にするには、価格維持政策から直接支払制度に転換、価格は国際市場に委ねて、所得は直接支払いすべきで、そうした声は識者の間でも高まっているほか、有力政治家でもそうした認識が強まっているとした。
基本法と同時にスタートする実施法には①農地法等の1部改正(農地の確保)②スマート農業技術活用促進法③食料供給困難事態対策法④特定農産加工法の一部改正⑤みどり法(クロスコンプライアンス)があるが、この中で食料困難事態対策法について、統制時代の悪夢がよみがえるとし、ナチスの非常事態法、国家総動員法、ソ連のゴスプランをあげ、戦後日本でも食糧事務所4万人、多数の警官、GHQの権力を総動員しても上手く行かなかったことを上げ、この法律の実効性に疑問を呈した。
また、価格転嫁に関しては、イノベーションは参入と競争によって価格が低下して普及、需要限界を超えて起きるものであり、価格転嫁を法で位置付けるとイノベーションを遅らせ、価格を高止まりさせる政策には将来はないとした。
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