シンとんぼ(105) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(15)-2024年8月10日
シンとんぼは令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まり、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実現するために、現場は何をすべきなのかを、同戦略のKPIとその有効性や今後の農業に与える影響などをひととおり検証しながら考察を加えてきた。そして行きついたシンとんぼなりの結論が、現在ある技術を正しく活用すれば、新たな技術開発やイノベーションを待たずとも、みどり戦略の大義は達成可能だろうということだった。そこで、みどり戦略対応のために農業現場はどう動くべきなのかの持論を展開しており、現在は有機農業の取組面積拡大をテーマに、有機農業拡大に関するKPIを実現するための「次世代有機農業に関する技術」のうち、前回の続きで2040~2050年までに確立するとしている技術の1つである「生物学的手法を駆使した害虫防除技術」の具体的な内容を検証してみる。
みどり戦略の新技術紹介資料には、生物学的手法として「共生生物を利用した害虫防除技術」が紹介されている。この技術には次のアプローチ手法があるとされており、それは、①産雌性単為生殖化の利用、②細胞質不和合成の利用、③宿主の生存日数を減少させる微生物の利用、④抗生物質殺菌剤の利用、⑤耐性や適応性の変化の利用、⑥パラトランスジェネシスの利用の6つである。いずれも文字面を見ただけでは、技術のイメージが沸かないと思うので、1つずつ概要を紹介してみようと思う。
まず、①の産雌性単為生殖化の利用である。産雌性単為生殖とはアブラムシのように未交尾のまま雌だけで生殖することをいい、通常の雄と雌が交尾して生殖する様式と比べ、増殖効率が2倍になる生殖様式である。通常の雄と雌が交尾する生殖様式の場合、未交尾の雌は雄を産むのだが、この時、雌の細胞にある種の共生微生物が感染すると、その雌は産雌性単為生殖化してしまい、雌だけで世代交代するようになる。じゃあ、これをどのようにして害虫防除に役立てるかというと、通常は雄と雌の交尾で生殖する天敵(寄生蜂など)の細胞に産雌性単為生殖化を促す微生物を感染させ、天敵の増殖効率を2倍にして害虫の捕食効果を高めて害虫の防除効率を向上させようというものだ。さらに、近親交配による捕食能力の低下などを防ぐ効果も認められており、強い天敵を維持するのにも役立つとのことだ。
(つづく)
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