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シンとんぼ(110) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(20)-2024年9月21日

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シンとんぼは令和3512日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まり、みどり戦略の大義である「安全な食糧を安定的に確保する」を実現するために、現場は何をすべきなのかを考察している。シンとんぼなりの結論は、「現在ある技術を正しく活用すれば、新たな技術開発やイノベーションを待たずとも、みどり戦略の大義は達成可能だろう」ということだった。そこで、みどり戦略対応のために農業現場はどう動くべきなのかについて検証しながら持論を展開しており、現在は有機農業の取組面積拡大に向けた新技術である「生物学的手法を駆使した害虫防除技術」の具体的な内容を検証している。その技術の1つに「共生生物を利用した害虫防除技術」があり、そのアプローチ手法には、①産雌性単為生殖化の利用、②細胞質不和合成の利用、③宿主の生存日数を減少させる微生物の利用、④抗生物質殺菌剤の利用、⑤耐性や適応性の変化の利用、⑥パラトランスジェネシスの利用の6つがある。

今回は、6つ目の⑥パラトランスジェネシスの利用を紹介する。

パラトランスジェネシスとは、遺伝子組換え技術を駆使した技術であり、害虫の共生微生物に対する遺伝子を組み替えることに使われる。この技術は、もっぱら害虫が媒介する病害防除への活用が期待されている。

例えば、害虫Aが媒介する病原体Bがあるとする。病原体Bを体内に宿した害虫Aが作物を加害する際に病原体Bが作物体内に注入されて作物が感染し病害を発症する。害虫Aには共生微生物Cがいるとすると、この共生微生物Cに、遺伝子組換え技術で病原体Bを攻撃する遺伝子を組み込むことができれば、病原体Bの増殖を阻止する共生微生物C'ができる。この共生微生物C'を害虫の体内に戻せば、病原体Bを体内に取り込んでも害虫体内で増殖できない害虫A'ができあがる。全ての害虫Aに共生微生物C'を感染させて害虫A'ばかりにすることができれば、病原体Bは害虫A'体内で増殖できず、作物への病原体Bの感染を回避することができるようになる。

ちょっとややこしい感じがするが、共生微生物の活用の仕方が前回までの①~⑤と異なり、共生微生物自体を遺伝子組換えによって防除に役立つものに変身させようというものだ。

実用化には、病原体を駆逐することができる遺伝子の探索やその遺伝子を組み込むことができる共生微生物の探索、組換え遺伝子の安全性など、今後の研究の進展を待つことが多く、2050年までに実用化されるのはかなり難しそうだ。

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