(410)米国:食の外部化率【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月15日
かつてはほぼ毎年のように訪問していた米国ですが、コロナ以降はすっかりご無沙汰しています。その間に、食をめぐる状況もかなり変化したようです。
米国人の食生活パターンはここ数年で大きく変化したようだ。米国農務省の資料を見ると、食費に占める家庭での食事(FAH:Food at home)の割合と外食(FAFH:Food away from home)の割合は興味深い推移を示している。
2000年代中盤まではFAHが圧倒的に中心であったが、2010年前後から両者の割合は概ね同水準となった。そして2010年代が進展するとともに、いわゆる外食の割合が急増した。ここで注意すべきは外食といってもかつてはレストランなどで食べる文字通りの外食が中心であったが、近年では持ち帰り(テイクアウト)の食品や、スーパーなどで作られている総菜、さらに調理済食品なども外食に含まれている点だ。
先に示したグラフでは、単純にFood at homeとFood away from homeと記されているが、このグラフが示されている元記事の文章は冒頭で、food intended to be prepared at home (FAH)とfood prepared away from home(FAFH)という形で、家庭で準備(調理)されることを目的とした食品、あるいは家庭外で準備された食品のような表現が用いられている。後者は調理済食品と考えて良いであろう。
言うまでもなく、これは家庭での食事における調理済食品、つまり中食を活用する機会の急増を示している。日本の統計では食の外部化率と外食率を明確に分けており、例えば前者は食費のうち食を外部に依存している支出額の割合である。つまり、単なる外食費だけでなく中食費を含めた費用が食費全体に占める割合を言う。これに対し、外食率は文字通り食費に占める外食費の割合である。
このような視点をもとに米国のグラフを見ると一瞬、FAFHはどちらであるかを悩むが、前述のやや長い英文の説明通りとすれば、食の外部化率(つまり、外食と中食の合計が食費全体に占める割合)と考えて良いであろう。
それにしても、このグラフを見ると何とも激しい変化である。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの時期に大きく減少したことは想定内だが、2011年から2019年までの外部化率の増加、そしてパンデミック終了後の回復・急増が極めて大きい。
2023年に米国人が食費に費やした金額は1人当たりに換算すると年間7,672ドルであり、前年より7.5%多いようだ。この原因は、FAFHが4,004ドルから4,485ドルへと12.0%伸びたことが大きい。同時期にFAHは3,130ドルから3,187ドルへと1.8%しか伸びていない。
米国人は、家庭で調理をするよりレストランで食事をする、あるいは他のテイクアウト可能な調理済食品を購入して食べる...、という生活スタイルに急速にシフトしているように見える。
実際、2023年のFAHの価格は年間5.1%上昇している。これに対し、FAFHの価格は年間で7.1%上昇したにもかかわらず、消費者はとにかく外で食べるか、外で調理された食品を購入して食べる強い傾向が継続している。背景は何か。ざっと考えてみたところ、利便性、総菜・調理済食品等の品質向上、種類の豊富さなどがある。とくに調理済食品の品質向上と種類の豊富さは近年の日本の食品でも著しい。
この他には、雰囲気、友人・知人等とのつきあい、そして、恐らくは食後の食器洗い等の手間の少なさ、などが思い当たる。それ以外にも何等かの理由があるかどうかは機会を見て確認してみたい。誰か若い研究者がこうした点をしっかり調査してくれることを期待する。研究テーマとしても悪くはないはずだ。
なお、公益財団法人食の安心・安全財団が公表している食の外部化率の推移を見ると、パンデミックの2020-21年は36%程度であり、それ以前の43%前後から大きく低下した後、2022年には38%まで回復している。ただし、米国の水準とは依然として大きな乖離がある。日米両国の食の外部化率は、今後どこまで上昇するのだろうか。
* *
単身者や少人数家庭には、調理済食品の味や品質の向上は極めてありがたいのではないでしょうか。
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