(422)学位と卒論【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年2月14日
この時期の大学は意外と多忙です。
2月13〜14日にかけて、勤務先の大学では卒論の発表会が開催された。朝9時から夕方16時まで昼休みと若干の休憩時間を除けばビッシリのスケジュールである。
学生達にとっては4年間の大学生活の総まとめであり、これが終われば後は卒業式となる。
ところで、最近の大学では卒業式とは言わずに学位授与式と呼ぶ、あるいは卒業式・学位授与式などと併記するところが多い。1980年代までに大学を卒業した世代、つまり現在の50代後半以上の方々の時代はほぼ卒業式であった。卒業式で卒業証書を授与された訳だ。
変化が起きたのは1991年に学校教育法が改正されて以降である。この改正により、大学卒業時に学士の学位が授与される事が明確に規定された。
それまではどうであったかと言えば、いわゆる卒業証書に記されているとおりである。典型的な文言は、例えば、「本学所定の課程を修めた事を証する」あるいは「○○学部〇〇学科所定の課程を修めたため、〇〇学士と称することを認める」など、実に様々であった。この機会にご自身の卒業証書を家族間で確認してみるとその文言の違いがわかり面白いかもしれない。
制度が変更された1991年以降、卒業時に得られる証書は卒業証書から学位記となり、式典も卒業式から学位授与式という名称が普及してきた。なお、「卒業証書 学位記」のように両者を併記している大学もある。
ちなみに、この改正により、学位の表記もそれまでの「〇〇学士」から学士(〇〇学)という形になった。これは大学院の修士や博士も同様である。
では、卒業論文、つまり卒論はどう変化してきたか。以下はしっかりと調べた訳ではないので感覚的な話である。かつては卒論論文とはあくまで「論文」であることが大前提であった。そして、論文である以上は論文としての作法や体裁を厳格に求められた時期が存在した。
ところが、文章を用いて仮説を検証あるいは論証する方式だけでなく、実験や製作、あるいは演奏など、様々な形が大学教育の成果として広く認められるようになった結果、大学の卒業要件は卒業「論文」に限らず、卒業「研究」や卒業「制作」なども含めて考える形が普及してきた。芸術・音楽系大学などでは卒業制作や卒業公演などがある事を考えればよくわかるであろう。
さらに言えば、筆者が大学生であった1980年代当時から既に卒業論文は学部によっては存在しなかったし、存在しても必修ではなく選択とする大学もあった。卒業要件は所定の単位を修得する事、卒論は選択で自由のような仕組みの記憶がある。
大学生の卒論レベルでどこまでの研究が可能かは一概には言えない事はもちろんである。だが、今になって自分自身を振り返ると、卒論の時間は貴重な機会であった事がよくわかる。
社会に出て日々の仕事と生活に追われると、ひとつの事をしっかりと調べ、自分で文章にまとめる機会は意外と少ない。仮にあったとしても仕事で行う調査と学生が自分自身の興味と関心に基づいて行う実験や調査はやはり異なるであろう。
筆者の職場で実施している卒論発表会は1人6分の発表と4分の質疑応答で全員が実施する。発表を聞いていると、それぞれの学生がこんな事を研究していたのかと思う時もあれば、筆者の知識不足で全くわからない時もある。自然科学系の特定分野に特化した研究などは筆者には外国語のように聞こえる。そういう時は、聞き慣れない語彙をAやBに置き換え、要はAとBからCがどの程度できるか...などと発表の構造から推定するのは年に一度の楽しみでもある。
これが終われば今シーズンも終わり、学生には春休み、教員には息をつく暇もなく新学期が迫ってくる。
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