(428)「春先は引越しの時期」?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年3月28日
日本社会の多くは4~3月の年度で動いています。今月は年度末であり、引越しが集中する時期でもあります。
「春先は引越しの時期」、これはその通りであり、筆者の周囲でも様々な引越しの動きが見られる。その動きに便乗する訳ではないが、時間を見て部屋の整理などをしている。
そうは言うものの、実際にどのくらいの人間が引越しをしているのか。昨年春には「物流の2024年問題」などもメディアを賑わせていたし、周囲の学生からは、かなり先の予約が必要など、いろいろな話が聞こえてきたため、この機会に調べてみた。
実は、この手の統計は比較的充実している。総務省は「住民基本台帳移動報告」というデータを公表している。話を簡単にするため、日本全体では1年間に何人くらいの人間が引越しをしているのか、これを考えてみたい。ちょっとしたクイズである。答えを記す前に少し切り口を変えてみたい。
「物流の2024年問題」、これは昨年4月からトラック・ドライバーの時間外労働の上限が、原則月45時間・年360時間、臨時的特別な事情がある場合でも年960時間となったことにより、輸送能力不足で十分にモノが運べなくなる可能性が懸念された問題である。
国土交通省による2023年8月の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」最終とりまとめには、具体的な対応を実施しなかった場合、不足する輸送能力の割合が2024年度で14.2%、2030年度で34.1%不足するという数字が示されている。これは営業用トラックの輸送トン数にすると各々4.0億トン、9.4億トンに相当する。
本日のテーマは卒業・就職・人事異動などに伴う引越しだが、現代社会を理解するためには、農林水産物・食品・自動車・機械・各種日用品など、さまざまなモノの輸送が円滑に機能しているからこそ、日常生活が快適であることを押さえておく必要がある。そのためには「引越し」というレベル以上に、国内・海外を含めた「物流」をどこで誰が担っているのかをよく見ることが不可欠であろう。
さて、そろそろ本日のテーマ、日本人は年間何人くらい引越しをしているのか、に戻る。総務省のデータによれば、過去最高は1973年の年間430万人である。人数は1954年の315万人から始まり、1973年までは一気に増加する。その後は、1990年代半ばに一時的に盛り返したが、現在までほぼ一貫して日本人は「引越し」をしなくなっていることを示している。そして、2023年には247万人と、1954年以降最低水準を記録している。これを示したのが下の図である。いくつかコメントをしておこう。
第1に、1954-1973年は高度経済成長の時期と完全に重なる点が興味深い。1973年8月15日はニクソン・ショック(金ドル兌換停止)であり、それまでの1ドル=360円の固定相場制から変動相場制へ動いた年である。快調に飛ばしていた日本経済に急ブレーキをかけられた年でもある。
第2に、なぜこの期間に引越しが急増したかと言えば、大都市圏で働いた方が稼げたからだ。当時の日本は現在では想像できないくらい都市部と農村部との間で実際の収入格差が存在したのであろう。統計数字は検証していないため、ここは筆者の感覚で記している。今では信じられないかもしれないが、高度経済成長期には農閑期に地方から大都市圏への「出稼ぎ」も相当行われていたことは記憶している。
第3に、近年の引越しの減少は、賃金格差の縮小だけでなく、終身雇用と全国転勤を当然とする働き方から、異動しても特定地域内に限定など、就業形態や価値観が変化したことも影響している。
そして、以上をより広く見れば、そもそも人口構成の中のボリューム・ゾーンであり、転勤を常態としてきた団塊の世代や団塊ジュニア世代が労働力の中心であった時期が時代とともにシフトしてきた結果とも言えるであろう。
* *
そういえば、あれだけ「引越し」をしていた筆者もここ10年以上「引越し」からご無沙汰しています。
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