コメコスト指標は食管復活の足掛かりになり得るのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2026年1月6日
コメ仲介業者各社の売り買いメニューや成約情報を見ると、中には7年産米検査1等米が2万5000円以下での売り物も散見されるようになっている。にもかかわらず買い意欲が低調でなかなか成約に結び付かず、下値の目途が見えない状況が続いている。今やコメ業界は神頼みならぬ国頼みにすがるしかないような状況になりつつある。国頼みの第一段階は8年産政府備蓄米買入入札で、ここでの落札価格が8年産米価格の下値目途になると見られているため何とか下支え機能を発揮してもらいたいところ。

農水省が公表しているスーパーでの5kg当たりの精米販売価格は昨年12月15日の週が4337円と高止まりしたままだが、ディスカウントスーパーやドラッグストアーなどを回ってみると5kg3000円台の銘柄米が多く販売されている。
中には新潟コシヒカリが3999円で販売されている中堅スーパーもある。また、大手スーパーでもブレンド米を3500円から3600円程度で販売しており、すでに精米価格の値崩れが始まっている。
この他、外食企業など業務用米の売込みも熾烈を極めており、納入業者側から外食企業に対して「いくらなら買ってくれるのか指値して欲しい」と言う申し入れがあるが、外食企業側は指値しないように指示が出ているという厳しい対応を見せている。納入業者としては高値で仕入れた7年産米を早めに換金しないと在庫差損が膨らむばかりで危機的な状況を迎えかねない。
しかし、消費者の精米購買動向は高値を嫌気して低調に推移しており、7年産米の販売数量は前年同時期に比べ3割程度落ち込んでいる。このため集荷業者段階、販売業者段階の在庫も膨らんでおり、このまま推移すると食糧部会で示された民間在庫より多くなる可能性さえある。
こうした状況を改善するには何らかのカンフル剤が必要で、目下最も期待されているのが1月から実施が計画されている8年産政府備蓄米買入れ。総量で21万tの買入枠があり産地別に18万tの優先枠が設定されている。
政府備蓄米応札資格者にとって最大の関心事は言うまでもなく「落札できる価格」であるが、例年以上にその持つ意味が重要になっている。
これまでの落札価格の推移(推計)は安値が平成27年産米の1万450円、高値は令和2年産米の1万3880円であった。直近の6年産米は落札率が83.7%に留まったが1万3450円であった。これは相対販売価格の5中3の平均価格に諸経費1俵1600円を引くと大体落札できる最高価格が推計できた。
ところがこの方法を採用すると相対販売価格が急激に値上がりしているため8年産米の落札最高価格は3万3000円以上になってしまうのでさすがにこれはない。このため応札資格業者は、農水省が設定する最高落札価格についてさまざまな要素が加味されると見ている。
具体的には、相対価格が大幅に上昇する前の6年産価格を参考にする、買入れの予算要求額から逆算した1俵当たりの額、6年産買戻し条件付き備蓄米の売価格と同じ価格で買い戻す―などが取り沙汰されている。その要素の中には「食料システム法に基づくコスト指標」も入る可能性がある。これは与党の申し入れの中に「令和8年産米の買入価格については、食料・農業・農村基本法に基づき、〈合理的な価格形成に向けた取引を促していることも踏まえ、今後の対応を検討すること〉」と言う項目が入っているからである。
ここでいう合理的な価格形成とは、食料システム法で定められるコスト指標を指している。コメは米穀機構が昨年末「コスト指標作成委員会」の初会合を開催し、1月下旬には各段階のコストデータを取りまとめたコスト指標案を提示することになっている。ご丁寧にも農水省は新年度予算に合理的な価格の形成に向けた、コスト構造等に関する調査、取引状況監視体制(フードGメン)の強化として2億円の予算を計上している。このフードGメンは不公平と思われる取引を調査・指導するという権限が与えられている。食糧の配分が今もって行われているどっかの国を真似たとしか思えない時代錯誤の法律が施行されようとしている。わかりやすく言ってしまうとこのコスト指標はコメの配分主義がまかり通っていた食管時代の生産者米価と同じである。
このコスト指標価格を8年産政府備蓄米買入価格の最高価格に設定して、下落する米価を下支えして、さらに民間備蓄で売り先のない7年産米を隔離して米価下落を防ぐという2段階の対策が行われるのではないか。この政策にはコメの需要者はもちろん消費者視点というものは全くない。買い手の存在が無視されたコメ政策を続けていては産業として成り立たないばかりか益々市場はシュリンクしていくばかりで死に体になってしまう。
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