【浜矩子が斬る! 日本経済】消費税問題の基本を考える 減税連呼より本質迫れ2026年2月5日
にわか衆院選が目前に迫っている。争点なく大義ない選挙だ。前回もご一緒に分析した通り、この選挙は筆者がタコ市さんと命名した高市早苗首相の自己都合選挙だ。「あんたが総理大臣でいいよ」。有権者からこのお墨付きをゲットする。それが狙いだ。
エコノミスト 浜矩子氏
この点を再確認した上で、この選挙の中で、争点ではないにも関わらず、大きな焦点となっているテーマについて、改めて考えてみたい。消費税減税である。争点でないのは、「チーム未来」を除いて他の与野党全党が何等かの形で消費税減税を公約に掲げているからだ。それにも関わらず焦点となっているのは、その効用や正当性について、疑念が渦巻いているからだ。
食料品に関する消費税をゼロ%にすれば、人々の生活は楽になるのか。物価高対策として有効なのか。消費の盛り上がりに寄与するのか。消費税減税に伴う税収源をどう補うのか。代替財源について与野党ともあれこれ対策を提示している。だが、それらがいずれも、どうも絵に描いた餅で取らぬ狸の皮算用に見えてしまう。先行きいたって不透明である。
そこでこの際、この不透明な現実から一歩遠ざかることとしたい。そもそも、消費税なんのためにあり、どういう税金であるべきなのか。
まず、今日における日本の消費税は社会保障財源だ。ただし、導入当初は財政の健全化のための直間比率の是正が基本目的だった。直間比率は直接税がもたらす税収と間接税がもたらすそれの比率を意味する。直接税は、人々の所得に直接課せられる税金、すなわち所得税だ。消費税は人々が購入する商品の販売価格に課せられる税金だ。この方式を取る場合、消費税は間接税になる。実を言えば消費税にも直接税方式のものがある。だが、この話を持ち出すと厄介なので割愛する。
日本の場合、戦後に構築された租税体験はあまりにも所得税依存型だった。特にサラリーマンから源泉徴収方式で頂く所得税が主要財源だった。ところが、人々の脱サラが進んだり、非正規雇用者が増えていく中で、この所得税頼み一辺倒のやり方の徴税力が低下し、財政状況の悪化につながった。だから、新たな税源として消費税を導入しようということになった。これが出発点だった。
その後、消費税収をより明確に社会保障費に結び付ける展開になった。現行消費税法は、消費税収を年金・医療・介護・少子化対策のいわゆる「4経費」に充てるべしと定めている。つまり、消費税は今日の日本にとって最大の課題である社会保障制度を支える基幹税となっているのである。ただし、消費税という支柱があっても、それで社会保障費を全て賄えているわけではない。現状でも、不足分を国債発行で補っている。こんな状況で消費税収を減らす方向に動いていいのか。
次に、消費税はどういう税金であるべきなのか、という問題に進もう。これについては、経済学の生みの親にご指導を仰ぎたい。「国富論」の著者、アダム・スミス大先生である。「国富論」の中で消費税が取り上げられている。そこで、スミス先生は消費税とはすなわち迂回所得税であると明言されている。人々の所得を正確に把握する能力に欠ける徴税当局が、仕方がないから、人々の消費行為への課税をもって代用する。それが消費税だと、先生は仰せなのである。そこから出て来る結論が、消費税は応能負担の原則にのっとっていなければならないということだ。つまり、金持ちが買うような商品には高い消費税率を課し、貧乏人の必需品には低い消費税を課す。これでなければならないと言っている。
すなわち、低所得者向け商品に関する軽減税率と、高額商品に関する重増税率の併用である。経済学の生みの親がこう言っているのである。今日の日本の消費税には、改善の余地が極めて大きい。減税合戦をやっている場合ではないだろう。
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