経営支え夢を応援 地域農業の発展、金融の力で 先進事例にみるJA・信連の取り組み(上)2025年4月28日
農業融資のニーズ掘り起こし、強みを生かしたコンサルティング、ほ場に出向いて深い対話……。金融サービスを通じて地域農業を発展させていく取り組みが少しずつ広がっている。
●部門間連携で融資ニーズつかむ
JA山梨みらい(本店・山梨県甲府市)では、部門間連携の強化をきっかけに農家の資金ニーズを把握し、経営改善を提案しつつ融資につなげた。
対象農業者は2021年に新規就農した、なす・とうもろこし生産農家で、減価償却費や人件費の負担、労働力確保といった課題を抱えていた。
同JAでは、営農・経済事業部門の農家訪問で把握した情報を融資部門と共有することで資金ニーズをつかみ、設備資金を対応した。規模拡大に伴う運転資金は、JAのプロパー融資で支援した。
2024年度はこの農家に、信連、農林中金と連携してコンサルティングを実施。品目別収支分析を行い、経営改善を提案している。同JAでは、「経営を数字で見える化した。労働力確保ではバイトアプリなどを紹介した。法人の支援も強めている」(融資課)とする。
●作物別収支出すことで課題を「数字」で可視化
JAアルプス(本店・富山県中新川郡上市町)では、農業者が直面する課題にきめ細かい解決策を提案した。
対象農業者は、里芋、ハトムギ、水稲の農家で、水稲の収益確保、多数のほ場の水管理、鳥獣(イノシシ)被害といった課題を抱えていた。
同JAでは水稲栽培について肥料農薬等の適切な組み合わせを提案するとともに、各品目の収入・費用を算出し品目ごとの改善策を見える化。自動水門を100機導入することで作業が効率化した。中干し延長のデータが取れるようになり、J-クレジット獲得への取り組みも始めた。イノシシ対策では自治体と協議し、補助事業を使って防止柵を設置した。
同JAでは「作物別の収支を数字で出したことで課題が可視化できた。融資業務の中でのコンサルは、『貸付ありき』というイメージを持たれがちだが、決してそうではなく、農業者の経営を良くするために行っている」(担当者)と話す。
●大規模農家との深い対話が高評価に
JAいずみの(本店・大阪府岸和田市)は大阪府信連と連携し、大規模農家を定期的に訪問。財務分析、品目別収支分析、営農課題の抽出を行い、支援・改善策を提案した。
対象農業者は水なすを主に、彩誉(あやほまれ)にんじん、きゅうり、春菊などを生産し、漬物店・飲食店・卸会社等に直接販売、道の駅「愛彩ランド」にも出品している。
きっかけは融資の相談だった。「希望額が大きかったこともあり、まずはコンサルティングをしましょうとなった」(営農経済部の担当者)。
信連とJAが連携してほ場にも足を運び、将来の経営ビジョンを聴き取った。信連は財務分析や品目別収支分析を、JAは営農課題の分析を担当。営農データの見える化(農作業アプリの提案)、土壌成分分析、ニーズに沿った農業融資提案、法人化の手続きやメリット・デメリットの提示を行った。
「利益の高い栽培品目への集約ができた」「5年後、10年後の経営ビジョン(法人化、観光農園開設)に向け、現状や課題が把握できた」と農業者も支援を評価した。
同JAの担当者は「営農データの見える化、土壌成分分析、農業融資提案などJAならではの支援ができた。農業者と深く対話したことが基礎となった」と振り返った。
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