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日本米は美味しいと中国で評判【馬場祥博・味千ホールディング事業発展総経理】2018年2月2日

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・中国の米事情

 中国で600店舗を展開する味千では、ラーメンだけではなく「鯖の照焼き」などご飯とセットにした定食を提供。中国米とそれより高い日本米を選択できるようにしているが、日本米のご飯が人気だという。そうした中国の外食市場からみた米事情について馬場氏が農協協会「新春特別講演会」で講演した。その要旨を紹介する。

馬場祥博・味千ホールディング事業発展総経理 味千ホールディングは、上海を中心に中国でレストラン事業を展開していますが、今の中国で、消費者がどのような生活をしているか、中国そのものがどのように発展し、どのようなものを食べているか。そうした中国の事情の中で、私たちが行っていることをお話したいと思います。
 始めに中国の米の生産・流通・販売の実情、2つ目は食味・価格など中国の人たちが求めている米はどんな米か、3つ目にこれから中国で日本米の消費は拡大するのか、4つ目に私たちは、中国で日本米をどのように販売しているか、最後にこれからの日本米に期待することについて、私の考えを述べさせていただきます。

 

◆日本米消費拡大には流通の複線化が不可欠

 まず中国国内の米流通ですが、大きくは4つのパターンがあります。それは
(1)生産者→工場→エリア代理店→問屋→外食・小売りのパターン
(2)生産者→工場→エリア代理店→外食・小売り、味千グループはこのルートを使っています。
(3)生産者→工場→各エリア代理店→ネット販売
(4)生産者→工場→ネット販売
消費の増えているパック、レトルトご飯は(3)と(4)のネット販売が中心ですが、最近はこれが急成長しています。
 中国の米流通の特徴は、日本の全農さんのような委託販売業者が存在せず、代理店を通すのが主流で、それも米を専門にしている代理店が少ないことです。またブランド米がありますが、中味が統一しているかどうかは疑問があります。

中国の米事情-生産・流通・販売の実情(味千拉麺)

 一方、中国における日本米の流通は、図のように全農の指定精米工場(燻蒸)を経由して、中国のCOFCO(中糧集団)→貿易商社→国内販売となります。この間に、日本国内での購入原価が1kg330円の米だと、流通経費やマージンが加わり、中国国内での小売価格は1200円強になります。これでは高すぎて、日本米を使いたくても使えないのが実情です。
日本米の消費を増やすには、この価格形成の仕組みを変える必要があります。
 日本米輸入についての課題は、
(1)日本での指定工場が一社しかない、
(2)燻蒸された米であることが絶対条件、
(3)燻蒸に日数がかかる、
(4)通関や衛生証明書の取得に時間がかかる(約3週間、大型連休が重なるとさらに遅れる)、
(5)小売りマージン管理費が高い
 など、解決すべき問題が多くあります。特に精米工場が1か所しかないために流通ルートが限られているのがネックで、流通の複線化が求められます。

 

◆求められる簡便な食品 大きい中国米との価格差

馬場祥博 味千ホールディング事業発展総経理 次に中国の米事情ですが、生産量は約2億950万t(2016年・籾換算)で日本のおよそ20倍です。
 小売りではコンビニが急増しており、2017年6月時点で、日本のセブンイレブンが2377店、ファミリーマートが1727店、ローソンが1399店のほか、現地の企業を含めて10万店以上あります。消費者は簡便な食品を求めており、米の消費は増えていますが、ほとんどが中国米で、これをどうしたら日本米に切り替えるかが課題です。
 価格は、現地スーパーで中国米の価格は1kg5~80元(1元16円)と大きな幅があり、日本米は60~100元です。飲食店におけるご飯一杯は1~12元で、地区や品種による価格差が大きく、飲食店では日本にない価格差があるようです。
 味千チェーンでは、中国の東北米を使っていますが、1kgで5元から6元です。輸入の日本米を使うとこの10倍になります。レストランは付加価値を付けて使うことができますが、ほとんどの日本食レストランは中国の米を使っています。
 日本米を中国で販売するには、狙うべき対象を定める必要があります。スーパーやコンビニなどで、袋で1kgいくらという売り方では安い中国の米と競争はできません。そこで寿司のような日本米の新しい食べ方のメニューを提案していく必要があります。

(写真)馬場祥博 味千ホールディング事業発展総経理

 

◆大きい潜在的な需要 1人当り消費量は日本の倍

北日本新聞2017年12月17日 では日本米の消費は拡大するのか? 結論から言うと拡大すると見ています。中国には日本米の潜在的需要はあります。1人当たりの米消費量は日本の年間54kg(2016年)に対して、中国は140kgと、2倍以上あります。人口増やネットやコンビニなど新しい販売チャネルが拡大し、ご飯を食べる機会が増えています。今後も需要は伸びる見通しです。
その中で、ジャポニカ種の需要が増え、生産も伸び、中国の短粒種である東北米の販売を伸ばすため、各省では運賃などの補助を行うなど力を入れています。その一方で生産コストが高くなってきています。このため日本米との価格差が少しずつ縮まり、日本米の消費拡大のチャンスは大きくなっています。

(写真)北日本新聞 2017年12月17日

 
 中国では、主にチャーハンなどにして米を食べますが、味千のレストランでは白い米を定食メニューに入れてみました。はたして受け入れられるだろうかと、最初は心配しましたが、結果は好評でした。
 一般にレストランでの中国米のご飯は250gで3元ほどですが、私たちは9元で出しており、価格は3倍ですが、6元の差に過ぎません。上海や広州は大都市で、美味しければ少しくらい高くても食べてくれます。ただ、そのためには、日本食といってもどこにでもあるのではなく、何か特徴のあるもの、日本にしかないもので差別化する必要があります。味千チェーンはそれを「日本産のお米」として勝負する考えです。
 もうひとつ、日本米の消費を中国で増やすには、年間800万人にのぼる来日中国人観光客にアピールすることです。
 私たちはプロモーションビデオをつくり、店で流していますが、撮影場所の富山県の美しい水田、きれいな水、それに雪を中心とした風景を見て、「富山県に行ってみたい」というお客さんの反応があります。こうした人に日本に来てもらい、美しい水田の景観をみて、観光バスの中で新米のおにぎりを食べてもらったら、中国の人はその旨さにびっくりするでしょう。
 そうした消費拡大の取り組みには、国、生産者、消費者、輸出業者がオールジャパンとして臨むことが必要です。

 

◆もっと工夫して日本米のうまさのPRを
 
 今後、日本米の輸出を増やすには、価格の高さが一つの大きな壁ですが、もう一つの壁は中国では炊飯器が不足していることです。日本のテレビでも放送されましたが、私どものレストランで13歳の男の子が炊飯の米を食べて、「あまくておいしくてびっくりした」と述べていました。親はスチームによる硬いご飯しか食べたことがないので分からないのかも知れませんが、子どもたちの舌は肥えています。子ども向けに、小学校から中学校に何か働きかけができないか思っています
 中国への日本の農産物輸出を増やすには、農協や全農そして国などの関係者みんなで、もっともっと工夫してもらいたい。海外での日本食の代表は、天ぷら寿司ときて、今はラーメンですが、日本のお米は世界で一番です。いい例は日本のお酒です。中国でも米のお酒はありますが、めちゃくちゃ高い日本のお酒が売れています。
 日本の生産者の方々は自信と希望をもって日本のお米を作り、いいお米をどんどん供給していただきたいと思います。

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