水田農業改革を政府が決定2013年11月26日
政府は11月26日午前、農林水産業・地域の活力創造本部を開き、25日夜に農水省が提示し自民党が了承した経営所得安定対策の見直しと日本型直接支払い制度の創設について、これを「制度設計の全体像」として正式に決めた。今後は来年の通常国会に向けて関連法案の作成作業などを進める。
◆地域活動に直接支払
政府は12月半ばにもこれを核にした「農林水産業・地域の活力創造プラン」を打ち出す。26日の記者会見で林農相はこのプランを「農政改革のグランドデザイン」とする考えを示した。
今回の水田農業政策改革は以下のようにまとめられる。
▽主食用米の需要が毎年8万t減少するなか、麦・大豆による転作では水田維持に限界があることから主食用以外の生産で水田フル活用を誘導する(=飼料用米等の支援拡充)
▽担い手への農用集拡充積を農地中間管理機構の仕組みを使って促進するとともに、農業の多面的機能を維持・発揮するための地域の共同活動を支援する(=日本型直接支払制度の創設)
▽担い手を中心とした経営所得安定対策への移行(=中期的に収入保険制度の導入検討)
▽米の生産調整の見直し(=5年後を目途に生産数量目標の配分に頼らず需要に応じた生産)
など。
具体策として、米の直接支払交付金は26年産米から単価を10a7500円に削減し、30年産から廃止する。
日本型直接支払制度は、26年度は予算措置として実施、27年度からは法律に基づいて実施する。単価は都府県の田で「農地維持支払」が10a3000円、「資源向上支払」が同2400円の計5400円。中山間地直接支払と環境保全型農業支援支払についてはこれまでどうり交付される。
したがって、中山間地域直接支払の対象地域には、これに加えて農地維持支払と資源向上支払が交付されることになる。
◆数量支払いを導入
水田のフル活用を進めるため飼料用米と米粉用米については数量支払いを導入する。上限は10a10万5000円とされた。
そのほか水田活用の麦、大豆、飼料作物、加工用米の直接支払交付金単価は現行どおり(例:麦・大豆10a3万5000円)とした。
地域の裁量で活用可能な産地交付金も確保し、▽飼料用米・米粉用米での多収性専用品種の取り組み▽加工用米の複数年契約(3年間)の取り組みに対し10a1万2000円を交付することも決めたほか、麦・大豆への助成もこの産地交付金で充実させる方針だ。
◆ナラシ対策は実施
米価の基準価格からの下落分を全額国費で補てんする米価変動補てん交付金は26年産米から廃止する。
一方で米についても畑作物の収入減少影響緩和対策、いわゆるナラシ対策を農業者拠出によって実施する。対象農業者は規模要件を課さないものの、認定農業者、集落営農、認定農業者とした。今後、具体的な対象はさらに議論になりそうだ。実施は法改正により27年産からとなる。
そのため26年産に限って、ナラシ対策非加入者(米直接支払交付金加入が前提)には、かりにナラシ対策が実施された場合、農業者の拠出なしで国費分の5割相当を交付することにした。
そのうえで、5年後にはすべての品目を対象に収入保険制度を導入して、セーフティネットを実現するというのも今回盛り込まれた方針だ。
米の生産調整については需要に応じた生産を推進することが基本。国による生産数量目標の都道府県別配分は29年産まではこれまでと変わらず実施されることになる。
ただし、中食・外食などのニーズに応じた生産と安定取引を進めるほか、需給・価格情報、販売進捗・在庫状況などを情報提供する。また、主食用以外の定着状況なども点検をしながら、「5年後を目途に行政による生産数量目標に配分に頼らずとも」需要に応じた生産が行える状況になるよう、行政・生産者団体・現場が一体となって取り組む方針としている。
(関連記事)
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