稲の直播栽培促進で提携 IRRIとBASF2017年12月6日
国際稲研究所(※1)とBASF(ドイツ)は、稲の直播栽培用のツールと技術をさらに普及、導入するため、3点の合意書に署名したと発表した。
稲の直播栽培は、条件が整えば労働力や水など必要なリソースの量が少なく、他の栽培方法と比べると温室効果ガスの排出も低減でき、手作業で稲を植えるよりも効率が良く、安価な栽培方法だと考えられている。
そして、直播栽培は米国や南アメリカでは広く実践されているが、気候条件もあり雑草の蔓延による収量ロスが多いため、アジアでは広範な導入が進んでいない。
今回のIRRIとBASFの提携では、IRRIとBASFがマルチステークホルダー方式のDSRコンソーシアムを設立し、非遺伝子組み換えの除草剤耐性を備えた稲の利用に関する以下の3点を目的を掲げている。
▽水稲直播栽培、および乾田直播栽培 の安定した機械化システムの開発
▽雑草管理ソリューションの調査
▽直播栽培を行うアジアの稲作農家に適した農学実践の構築
この提携によってIRRIは直播栽培技術を開発し、アジアの環境条件に適した稲の品種を試験できるようになるとともに、官民両セクター、研究組織、NGO、生産者団体もコンソーシアムに加入できるようになるという。
BASFでは、米(稲)は世界的な主食であり世界の米のほとんどはアジアで生産、消費されている戦略的な作物の一つと位置づけ、稲作に対応した除草剤や殺虫剤、殺菌剤などをインドやアジア地域で積極的に上市している。今回の提携によって「稲の直播栽培システムにおいて雑草の侵入を確実に防除するため、非遺伝子組み換えの除草剤耐性を備えた稲に関する研究」を進めていくことにしている。
また、BASFは昨日、フィリピンに「Rice Knowledge Center」を開設することを発表した(詳細は後日)。
IRRIの研究担当副所長であるジャクリーン・ヒューズは、「世界中の人々に食糧を供給することは、公的機関だけの問題ではありません。民間セクターを含む、あらゆる人々の貢献が必要です。今回のパートナーシップにより、IRRIのような組織がBASFのような企業と、持続可能な開発という共通の目標に向けて緊密に連携することができます」と述べている。
また、アジア太平洋地域でBASF農薬事業本部を率いるグスタボ・パレロシ・カルネイロは、「今回のIRRIとのパートナーシップにより、当社の領域と専門知識はさらに拡大していくでしょう。それが、Clearfield Production System(クリアフィールド生産システム)やProvisia Rice System((プロビジアライスシステム)(※2)などの稲作技術がより迅速かつ広範に普及することに貢献し、米の生産性と稲作農家の収入の向上にもつながると私たちは確信しています。今回の提携により、重要かつ環境的に持続可能な形で、食糧確保に貢献する製品やプログラム支援を提供できることを私たちは嬉しく思います」と語った。
(※1)国際稲研究所(International Rice Research Institute=IRRI)は、国際協定のもとに1960年に設立された非営利の自律的な非政治国際組織。共同研究やパートナーシップ、国による農業研究や拡張システムの強化を介し、ライスサイエンスを通して貧困と飢餓を撲滅し、稲の生産者と消費者の健康を促進し、環境の持続可能性を確保することを目指している。
(※2):いずれも、地域の特性に合わせて開発された、非遺伝子組み換えの高収量の種子と幅広い雑草に効果のある除草剤を組み合わせたシステム。「Clearfield」はイミダゾリノン系の成分の除草剤と、それに耐性を持つ種子、「Provisia」はキザロホップという成分の除草剤とそれに耐性を持つ種子を組み合わせたシステムのこと。
(関連記事)
・バイエルの種子事業と非選択性除草剤買収で合意 BASF(17.10.16)
・新殺菌剤 世界各地で登録申請を加速 BASF(17.09.01)
・新規殺菌剤開発で戦略的協力関係を構築 住友化学とBASF(17.06.13)
・「クロリダゾン」の国内事業権を継承(17.03.15)
・2016年業績発表 売上高は576億ユーロ BASF(17.03.01)
・六本木でマルシェ 農薬会社とJA(17.02.09)
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(3)病気や環境幅広く クリニック西日本分室 小川哲郎さん2025年9月18日
-
【石破首相退陣に思う】米増産は評価 国のテコ入れで農業守れ 参政党代表 神谷宗幣参議院議員2025年9月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】協同組合は生産者と消費者と国民全体を守る~農協人は原点に立ち返って踏ん張ろう2025年9月18日
-
「ひとめぼれ」3万1000円に 全農みやぎが追加払い オファーに応え集荷するため2025年9月18日
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」三重県で開催 JA全農2025年9月18日
-
西郷倉庫で25年産米入庫始まる JA鶴岡2025年9月18日
-
日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」打ち上げ事業を支援 JA三井リース2025年9月18日
-
ドトールコーヒー監修アイスバー「ドトール キャラメルカフェラテ」新発売 協同乳業2025年9月18日
-
「らくのうプチマルシェ」28日に新宿で開催 全酪連2025年9月18日
-
埼玉県「スマート農業技術実演・展示会」参加者を募集2025年9月18日
-
「AGRI WEEK in F VILLAGE 2025」に協賛 食と農業を学ぶ秋の祭典 クボタ2025年9月18日
-
農家向け生成AI活用支援サービス「農業AI顧問」提供開始 農情人2025年9月18日
-
段ボール、堆肥、苗で不耕起栽培「ノーディグ菜園」を普及 日本ノーディグ協会2025年9月18日
-
深作農園「日本でいちばん大切にしたい会社」で「審査委員会特別賞」受賞2025年9月18日
-
果実のフードロス削減と農家支援「キリン 氷結mottainai キウイのたまご」セブン‐イレブン限定で新発売2025年9月18日
-
グローバル・インフラ・マネジメントからシリーズB資金調達 AGRIST2025年9月18日
-
利用者が講師に オンラインで「手前みそお披露目会」開催 パルシステム東京2025年9月18日
-
福島県に「コメリハード&グリーン船引店」10月1日に新規開店2025年9月18日
-
鳥インフル 米モンタナ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年9月18日