米価回復も資材高騰で所得確保待ったなし 食糧部会の議論から2022年10月24日
10月20日に開かれた食糧部会では2023年産の適正生産量を669万tとするなどの基本指針を了承した。生産量を作付け面積に換算すると22年産と同じ125.1万haとなる。食糧部会では今年産と同じ作付け水準だが、「誰かが作付け転換すると主食用米に戻る可能性がある。産地にしっかり説明を」と農水省に求める意見が出たほか、作付け転換するにも「飼料用米でも専用品種に絞るなど望ましい品目への転換を進めることも必要」との指摘もあった。また、米価が回復しても資材が高騰しており「所得確保が待ったなし」と厳しい現状も聞かれた。
農水省内で開かれた食糧部会
22年産は5.2万haの作付け転換に取り組み、主食用の予想収穫量は670.3万tで前年より30.3万tの減少が見込まれている。
農水省は需給はかなり改善してきたとしており、9月の相対取引価格は60㎏1万3961円と前年より1420円高かった。前年より価格が上昇したのは3年ぶり。
委員の菅原紋子ファーム菅久常務は「概算金が1000円上がりありがたいが、資材価格が上昇しており厳しい状況が続く」と話し、平田勝越山形川西産直センター代表取締役社長も「販売価格上昇は一安心だが、所得確保が課題。収入保険はあくまで収入の補てんで資材価格の高騰に対応できない。23年産米は今年より経営的に厳しいと思う」と農業経営の厳しさを指摘した。
需給が改善し、米価の上昇が見られるが、主食用米の需要は最近では年間10万t減少する傾向が続く。経営改善のためにも23年産も作付け転換の推進が必要になっている。
山波農場の山波剛代表取締役社長は「需給が均衡してくると、誰かが作付け転換してくれると主食用米に戻る可能性もある。引き続き産地に丁寧な説明を」と農水省に対応を求めた。
農水省は「政策の1丁目1番地は需要に応じた生産。需給が締まってくるので主食用米を作っていいというメッセージにならないようしっかり作付け転換の推進を図る」(穀物課)と説明した。
作付け転換をどう進めていくかについても多くの意見が出た。
22年産の戦略作物の作付面積は54.2万ha。このうち飼料用米が14.2万haともっとも多く、昨年より2.6万ha増えた。
飼料用米への作付け転換が主食用米の需給調整機能を果たしてきたとする評価がある一方、いつでも主食用に戻る懸念があることや、麦、大豆などの産地形成を阻害してきたなどの指摘もあり、「今後は麦・大豆や飼料用米でも専用品種に絞るなど望ましい品目への転換を進めていくことが必要」(宮島香澄日本テレビ解説委員)との意見も出ている。
一方、今後の主食用米の需要動向については見方が分かれた。
農水省はこれまでのデータから60㎏当たりの米価が300~400円の上昇、または下落があると1万tの需要量の増減があると推計している。
これに対して山田貴夫日清製粉グループ本社取締役常務執行役員は、小麦価格の高騰で麦の需要が減り「米へのシフトがあるのではと見ている。全体の価格が上がっているので米の消費が減るかどうか」と指摘する。
一方、藤尾益雄神明ホールディングス社長は中食・外食向けの米の販売が4月から前年比約10%となるなど全体に好調だが、需給状況には「価格以上のタイト感を感じている。さらに価格が上がっていくのではないか。店頭価格が上がると消費が減少するのではないか」と懸念を示す。
精米製品価格の上昇は米価だけでなく、電気代と包装資材の上昇もある。7工場を持つ神明は月2200万円の電気代が増えたという。「諸経費が上がって価格が上がり、消費が落ちる可能性も。対応を考えるべき」と話した。
そのほか、円安は「国産米への追い風。輸出チャンス」であり「生産者だけでなく販売者への支援も議論していいのではないか」との意見も。コロナ禍とウクライナ戦争の影響で食料や生産資材を海外に依存していることを国民が理解し「農業と食料自給の重要性を感じ始めている。いかに大切がSNSなどで発信していくことが大事ではないか」との指摘もあった。
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