イネカメムシ37都府県で確認 24年 不稔防ぐには出穂直後の薬剤散布2025年4月8日
斑点米カメムシ類の一種のイネカメムシは国内で発生量が増加し、農水省のまとめによると2024年は南東北から関東以西の37都府県で発生が確認されている。イネカメムシが出穂期から登熟初期に籾を吸汁すると不稔を引き起こし減収となるため深刻だ。25年産米の作付けに向けてイネカメムシ対策が重要になってくる。農研機構の資料などから対策のポイントまとめた。
絶滅危惧種だったイネカメ
イネカメムシは体長12~13ミリの茶褐色の大型のカメムシで1950年代までは斑点米被害を出す稲の主要害虫だった。
1960年代以降は、発生量が激減し一部地域では絶滅寸前となった。たとえば埼玉県は1996年に絶滅危惧ⅠA類(ごく近い将来に絶滅する危険性が極めて高いもの)としていた。
実際2020年までは捕獲なしだったが、21年に県内一部地域で確認されると、その後は大きく増え、深刻な被害も出ている。農研機構は埼玉県に隣接している栃木県南部や群馬県東部も同じような状況だと推測している。
農水省が3月に都道府県への聞き取り結果をまとめたところ、2024年は37都府県で確認された。未確認は北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、長野、新潟、富山、そして沖縄の10道県だった。
イネカメムシの増加は気候の温暖化に加え、稲作経営の規模拡大と、それにともなって作期を分散させるよう複数品種を栽培するようになっていることも要因だ。農研機構の調査によると、イネカメムシの成虫は出穂日前後に飛来し、出穂した水田へと次々に移動するという。つまり、作期の異なる複数品種が栽培されている農場とは、イネカメムシが好む出穂直後の穂が常に存在している農場だということになる。
水田で増えるイネカメ
早生種、中生種、晩生の順で出穂期を迎えるごとにイネカメムシは移動し穂を吸汁、また、産卵して増える。つまり、イネカメムシは水田で増えるため出穂前に畦畔の草刈りでは制御が難しいという。そして雑木林などで成虫として越冬し、翌年、田んぼが出穂期を迎えると雑草地を経由せず、雑木林から直接水田に飛び込むと農研機構は報告している。
他の斑点米カメムシ類と違って稲への嗜好性が高く、畦畔や水田周辺のイネ科雑草で確認されることは少ないのだという。
また、近年の高温でイネカメムシは他の斑点米カメムシよりも発育速度が増し、生存率も高くなっていることも考えられている。
稲に不稔を引き起こすのは、出穂期から乳熟期での加害。不稔を引き起こす能力は高く1株当たりイネカメムシ1頭で6%の不稔が起こるという。
対策は殺虫剤による適期防除。不稔を防止するには出穂期直後に液剤を散布機またはドローンで散布する。斑点米を防止するには出穂期1週間後に追加散布を行う。
殺虫剤はエトフェンプロックス乳剤、ジノテフラン水和剤、エチプロール水和剤、スルホキサフロル水和剤が有効。ただ、同一系統の連用には注意が必要だ。防除後もほ場の観察が大切になる。
出穂期を揃える対策も
耕種的対策としては、出穂期が近いほ場を集めるようにゾーニングすることも指摘されている。出穂期に一斉に防除を行う面積が広いほど効果が高まる。また、周辺ほ場と出穂がずれると、そのほ場が集中的に被害を受ける可能性も高まる。
そのほか地域のなかで周囲より出穂が早いほ場や、極端に遅いほ場に被害が出ている傾向も報告されており、そうした場合は作型、品種の変更を検討することも必要だ。
気象庁の3月から5月までの向こう3か月見通しでは気温は北日本で高く、東日本では平年並みか高い。平均気温が高い見込みの地域では早期にカメムシ類が活動を再開する
おそれがあるとしている。
6月から8月は暖かい空気に覆われやすいため、気温は全国的に高く、カメムシ類の発生量の増加、発生時期の長期化を警戒する必要がある。
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