米:25年産米全国JA調査
【25年産米全国JA調査】全国344JAに聞く 今年の作柄は「平年並み」2013年9月20日
・過剰米対策が急務
・夏の水害甚大な被害
・高温対策求める声も
・需給対策国の責任
・JA米担当者の声
本紙が全国の米主産地のJA担当者に25年産米の生育状況や作柄見込みなどを聞いた集計結果では、全国ベース作況100となり、平年並みの作柄となった。ただ、台風18号の被害もまだ不明な地域も多く作柄への影響が懸念されるほか、西日本を中心に収穫を前に害虫対策に追われている地域もあるなど不透明な要素も多い。また、生産量が平年並みであっても、米の大幅な需要減退で過剰感が強まることへの不安が多くの産地から聞かれ、政府による需給対策、消費拡大対策を求める声が強まっている。
◆過剰米対策が急務
調査は東京都を除く46道府県のJAのうち、管内の水田面積1000ha(北海道は2000ha)以上を対象に9月4日から13日にかけてJAの米担当者への聞き取りで実施した。ただし、今回は、9月16日に列島を縦断した台風18号の影響も考慮し、すでに聞き取りを終えていたJAのうち被害が想定されたところには再確認を行った。
回答を得たJAは344。JA管内の25年産主食用米の作付け面積について、回答のあった数値を集計したところ、あわせて約97万5000haとなった。JA全農は25年産主食用作付け面積を約152万haと推計(6月)しているが、これと対比すると64%のカバー率となった。
◆夏の水害 甚大な被害
生育状況について北海道では、春先の低温で田植えは遅れたものの6月からの天候回復で生育は順調になった、出穂期の低温がなくてよかった、などおおむね順調で品質も今のところ良好との声が聞かれた。
東北も雨が多かったが「生育に問題はない」、「生育が早まっている」との見方が多かったが、宮城などでは7月の長雨、日照不足による不稔などを懸念する声もあった。また、秋田では7月の大雨による流出、土砂流入の被害も指摘された。ただ、品質は良好との声が多かった。
関東・東山では、穂が長く「籾数が多そう」、猛暑の影響が心配だったが「適度に降雨があり生育はよかった」との声がある一方、高温障害で乳白粒が多く品質が悪いという地域もあった。ただ、刈り取りがこれからという地帯も多く、高温障害についてはまだ見通せないとの指摘が多かった。
全体として平年並みの予想だったが、一部で同一県内でも天候不順で作柄不良とする地域もあったことから、集計結果では作況見込みが下がったところもある。
なお、これらの地域では台風18号の通過による影響はほとんどないという。
ただ、北陸は順調に生育しているとの声が多かったが、福井県では一部で刈り取りが終わっていない地域もあり台風前後の豪雨で「かなり水没した。水没した田は1割ほど収穫できないかもしれない」との声もあった。
◆高温対策求める声も
東海も生育は順調との見方が多いが、高温障害対策を求める現場の声も多かった。「温暖化で品質が低下している」、「高温耐性の品種がわが県にも必要だ」といった意見があった。とくに内陸の平野部では例年より暑い夏になっていることから、九州等で品種開発された高温に強い品種の試験も行ったという。しかし、良好な結果が出ず「やはり地域にあった高温耐性品種の開発が必要ではないか」という。生産者はコシヒカリなど少しでも米価の高い品種を作ろうとするが、担い手が高齢化し大規模農家や法人などに農地が集約されてくるなか、経営安定のためにも高温対策が必要だとの声もあった。
近畿では台風18号による記録的な豪雨に見舞われた京都などが心配されたが、刈り取りは終わっていた地域もあり大きな被害はないという。
ただ、一部では冠水した水が引かず「作況99で済むかどうか……」との声も。また、米集荷施設の冠水もあり今後の作業の遅れが懸念される地域もあった。中国地方のうち島根県石見地方では夏の水害の甚大な影響が聞かれた。「あぜ道が崩れ、土砂や倒木も入って、刈り取りできるかどうかというところも…。来年の作付けも心配される」、「川が崩れて、田んぼに水が引けなかったところもある」など被害が聞かれた。四国と九州では、一部で高温障害が懸念されていた。また、調査時点でも害虫(トビイロウンカ)の発生が問題となり、防除対策が急務になっている地域もあった。おおむね良好な作柄を予想するが、まだ収穫が終わるまで気の抜けない日々が続くという声は多い。
◆需給対策 国の責任
まだ見通せない部分が多いものの、JA担当者への作況見込み調査を道府県別に集計したのが表だ。10aあたりの平年収量と25年産米の見込み収量について回答があった数値をもとに全国ベースで試算すると99.6となり、平年並みの収量が見込まれる結果となった。 ただ、平年並みの収量であったとしても、ほとんどのJA担当者が米の需要減退による過剰感を懸念した。
被災地からは「原発事故の影響で全袋検査して自信があるのに米価安。生産意欲は減退する」との声も寄せられた。
米の需要は24年産価格が高騰したから落ちたといわれ、JAでも「在庫を抱えている」との声が多かった。そこに収穫が始まり、今後、25年産米の集荷販売が課題になってくる。
JA担当者の意見では、政府による過剰米対策をとの声が強い。ただ、当面は24年産米の在庫をどう処理するかが課題、とする意見もある。とくにJA直売に取り組んでいるところは地域内での業務向け販売促進に改めて力を入れるという声や、25年産米の販売をにらみ新たな販路開拓が課題とする意見もあった。
一方、25年産米対策としては「時期を見て一定量を市場隔離するなど、国の責任で需給環境を整えるべきだ」との声に多くのJA担当者の意見が集約されるといってもいい。
米価が下落しても、22年度から始まった戸別所得補償制度(現在は経営所得安定対策)の米価変動交付金で生産者は補てんされる。しかし、米価の下落をそのままにしておけば必要となる財源も増える。どう財源を使うべきか考えるべきだとの指摘もあった。
同時にやはり消費拡大策も重要ではないかという声も根強い。「米は主食、と考えられなくなっているのだろうか」と生産現場からは不安もある。
そのほか需給が緩和する要因として過剰作付けを問題視する声もあり、今年の調査では「正直ものが馬鹿をみることがないような政策が必要だ」、「生産費が上昇しぎりぎりの状態。これでは再生産ができない」との意見を聞いた。
一方で、米価が昨年より下がるのであれば、それを消費が戻る糸口と考えるべきとの声も聞かれた。「生産する側にとってはつらいところだが、やはり値頃感がないと消費者は買わない」。
25年産米の仮渡し金は市況価格の動向をふまえて昨年よりも引き下げられた。地域によっては2000円もの引き下げも。JA担当者には「なぜこんなに安いのか」という声も寄せられたが、「生産者も米の需給が緩和していることは分かっていて、われわれの説明を冷静に受け止める人もいた」という。それに続けて生産者のこんな声があったことを聞かされた。
「何も高い価格を求めているわけではない。年によってこんなに変動しては…。とにかく米価の安定が必要だ」。
JA米担当者の声
「TPPは断固反対」
「復興と原発忘れるな」
再生産できる安定米価を
本紙の米作柄調査にJAの米担当者から米価安定対策のほか、TPP問題、震災復興などさまざまな現場での実感が寄せられた。
●国に需給安定対策を講じてもらいたい。
●食育をしなければ米の消費は減り続ける。
●販売には苦労する。早めに需給対策を。
●安売り競争が心配だ。
●被災地は復旧なかばであることを忘れないでほしい。国の施策もしっかりしてほしい。
●米価も問題だが米生産の基本がどう変わっていくのか心配。食料安保が大切で自国の生産体制を確立する必要がある。
●担い手が減少しているなか、価格も含めて生産に意欲が出るようにすべき。
●米価の乱高下が困る。
●TPP交渉、放射能汚染が米価にも影響してくると思う。
●価格の安定に尽きる。このままでは後継者が出てこない。
●24年産米の隔離を。
●TPPがいちばん問題。これが片づかないと将来が不安で何も言えない。
●TPPは公約や決議をきちんと守ること。
●激しい変動がないように。安定しないと生産者は設備投資もできない。
●正直ものが馬鹿をみるような政策だけは正してほしい。
●毎年、ばくちをやっているような状況。国策で安心して生産できる制度を。
●今年は暴落。生産者はやる気なくす。
●全袋検査しているから安全に自信を持っているのに、消費者に選ばれず残念……。
●収益や費用をみて委託が増えるのでは。今はみんな米を作っているがいつまで持つか。
●いちばんの問題はTPP。「言葉の保証」がないとやる気は出ない。
●豊作が喜べない。野放しにせず国が安定供給と安定価格を。
●全国的な米余りは国の施策できちんと対応して。
●農家にも努力してもらうが農家だけではどうにもならない状況。●米価が安く大規模農家は農地を借りず作業受託だけするようになっている。
●大規模稲作は地域のリーダー。ダメージを受けると地域への影響も大きい。
●所得補償制度があるから国は安くてもいいだろうと思っているかもしれないが、やはり市場価格が安定しないと不安になる。農家は米価で生活したいと思っている。
●これ以上、生産費を切りつめるのは難しい。もう少し生産者を向いた政策にしてもらいたい。
●弥生時代から続いてきた日本の稲作も終わってしまうのか。最大の危機的状況と思う。
●鳥獣害被害対策も忘れないでほしい。山のなかだけでなく市街地近くでも問題。
●25年産米が残れば26年産米も余り価格低下が続く。
●国民の主食である米は国がきちんと管理を。30万tも放出した備蓄米のあり方を考えて。
●生産費が上がっているところに消費税も上がる。大変なことになる。
●戸別所得補償制度になって価格の上下が激しい。価格安定策を。●作付面積は変わっていないのに米不足だ、米余りだといわれて農家はとまどう。
●24年産の過剰在庫により25年産の動き悪く価格に大きな影響。備蓄米の制度変更も必要。
●TPPの影響がどれだけ出るのか不安。今は目隠し運転しているようなものだ。
●米をもっと食べて。
●26年産米の生産数量目標が削減されることが心配。
●大規模な農家の減収は1000万円を超える。何か支援策を。
重要な記事
最新の記事
-
宮崎県で鳥インフル 今シーズン国内12例目2024年12月3日
-
【特殊報】キウイフルーツにキクビスカシバ 県内で初めて確認 和歌山県2024年12月3日
-
パックご飯の原料米にハイブリッド米契約栽培推進【熊野孝文・米マーケット情報】2024年12月3日
-
第49回「ごはん・お米とわたし」作文・図画コンクール 各賞が決定 JA全中2024年12月3日
-
大気から直接回収した二酸化炭素を農業に活用 JA全農などが実証実験開始2024年12月3日
-
江藤農相 「農相として必要な予算は確保」 財政審建議「意見として承っておく」2024年12月3日
-
鳥インフル ポーランド4県からの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月3日
-
鳥インフル ニュージーランドからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年12月3日
-
【田代洋一・協同の現場を歩く】JAみやざき 地域密着と総合力追求 産地県が県域JA実現2024年12月3日
-
今ならお得なチャンス!はじめようスマート農業キャンペーン Z-GISが4カ月無料 JA全農2024年12月3日
-
全農日本ミックスダブルスカーリング選手権「ニッポンの食」で応援 JA全農2024年12月3日
-
JAグループの起業家育成プログラム「GROW& BLOOM」最終発表会を開催 あぐラボ2024年12月3日
-
「乃木坂46と国消国産を学ぼう!」クイズキャンペーン開始 JA全中2024年12月3日
-
日本の酪農家 1万戸割れ 半数の酪農家が離農を検討 中央酪農会議2024年12月3日
-
全国427種類からNO.1決定「〆おにぎり&おつまみおにぎりグランプリ」結果発表 JA全農2024年12月3日
-
JA全農 卓球日本代表を「ニッポンの食」で応援 中国で混合団体W杯2024開幕2024年12月3日
-
「全国農業高校 お米甲子園2024」に特別協賛 JA全農2024年12月3日
-
【農協時論】協同組合の価値観 現代的課題学び行動をする糧に JA全中教育部部長・田村政司氏2024年12月3日
-
「上昇した米価が下がらない要因」などPOPデータを無料配布中 小売店で活用へ アサヒパック2024年12月3日
-
料理キット「コープデリミールキット」累計販売食数が2億食を突破2024年12月3日