【Jミルク緊急会議】生乳廃棄回避へ具体策 年末年始など3億円支援 農政ジャーナリスト・伊本克宜2021年10月25日
生乳需給緩和が深刻さを増す中で、Jミルクは26日に緊急全国説明会を開く。緩和がピークとなる年末年始に「数千トン規模」の生乳廃棄も懸念されるためだ。年度内に緊急特別対策として総額3億円を支出し、出荷抑制と消費拡大を支援する。
■危機迫る年末年始
Jミルクが26、27の2日間にわたり緊急オンライン会議を開くのは、これまでにない生乳需給緩和の危機感からだ。
特に、学校給食牛乳の供給停止で生乳不需要期のピークとなる年末年始の10日間で処理不可能乳、つまり生乳廃棄が「数千トン規模」で出かねない。そこで、酪農、乳業、行政の関係者に現況と危機回避の支援策を示し、最悪の事態を避けたい考えだ。26日からの説明会、質疑はメディアにも公開する。
■在庫対策と切り離し
年末年始の不需要期に、果たして生乳を保存の利く乳製品加工向け処理できるのか。
生産は、畜産クラスター事業などで増頭から北海道に加え都府県でも前年度伸び率がプラスに転じている。一方で需要はコロナ禍で、業務用を中心に低迷が続いており、前年の巣ごもり需要も一服感が強い。需給ギャップは広がる一方だ。
こうした中で、乳製品在庫は記録的に積み増ししている。特に脱脂粉乳は使用率が高いヨーグルト需要が伸び悩み深刻となっている。
ただ、今回は乳製品在庫問題と切り離し、緊急性が高い当面の年末年始の対応に対策を絞った。在庫対策は別途、週後半にもJミルク会長ら幹部が国に要請する見込みだ。
■業界挙げ四つの対策
業界挙げた取り組みは四つ。
業界共通は、酪農家、乳業関係者自ら牛乳利用拡大、消費拡大への行動だ。
次に、生産者には一時的な出荷抑制を促す。また、乳業者はヨーグルトなど製品における生乳使用率の引き上げ。加工処理するため現在の1日2交代から3交代にするなど乳製品工場のフル稼働。積極的な販促活動を行う。4番目は、生乳を受託する各ブロックの指定生乳生産者団体と乳業者が連携し、各工場や一時的に保存するCS(クーラーステーション)での貯乳能力の維持、フル活用を挙げている。
■まず緊急出荷抑制に2・5億円
Jミルクは需給ギャップに伴う生乳廃棄を避けるため、生産現場や消費地などの具体的な取り組みに支援を行う。20日開催の理事会で、酪農乳業産業基盤強化特別対策事業の実施要綱を一部改正し、生産から処理、流通、販売までのミルクサプライチェーン各段階での取り組みを支援できるように決定。「新型コロナ緊急対策事業」を新たに措置した。
まず、「入り口」対策として生産段階での生乳出荷抑制の取り組み。年末年始、さらには小中学校の春休み休校も踏まえた3月の年度末対策も想定した。
酪農経営や牛へのダメージにつながらないことを前提に、早期乾乳、低能力牛や体細胞数などの多い牛の早期出荷、子牛に生乳を飲ませる全乳哺育、濃厚飼料を減らすなど飼料設計の見直しなどが想定されている。
「緊急酪農生産基盤堅持対策事業」として2億5000万円、うち年末年始対策として約7割に当たる1億7000万円を財源に、関係機関を経由し対応した酪農家を支援する。残りは年度末対策に充てる。具体的な計画は今後、中央酪農会議、指定団体と地域別に検討を進める。需給改善に向けた出荷抑制の「協力金」の位置づけだ。
■消費拡大へも支援
次に「出口対策」として生乳需要底上げ。
不需要期の緊急的な牛乳消費促進対策に取り組む。地域などの取り組みに5000万円を充てる。先の出荷抑制を柱とした「基盤堅持対策」2億5000万円に、消費拡大5000万円を加えJミルクとして全体で3億円の予算を組んだ。
消費拡大策では、まずJミルク自ら現況の危機的状況の業界内の共有を徹底する。その上で、メディア対策、SNS企画、緊急的な消費促進策を練る。
地域段階での創意工夫ある不需要期の牛乳消費拡大への取り組みにも支援することにしている。
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