「酪農ヤバいです」 子牛・豚・鶏引き連れ農水省前で窮状訴え 畜産農家の思いは2022年12月1日
「酪農ヤバいです。壊滅の危機です」。11月30日、農水省前で、子牛や豚、鶏を引き連れた畜産農家が、次々と声を上げた。農民運動全国連合会(農民連)などが主催した畜産危機突破 緊急中央行動」。資材高騰でかつてない危機に直面する生産現場から上京した農家が訴えた内容とは。農民連は今後も緊急支援を求める署名活動を続けることにしている。
酪農現場の危機を訴える金谷雅史さん。
「限界にきています」 子牛引き連れた農家の訴え
生後2か月の子牛を引き連れてマイクを握ったのは、千葉市の酪農家、金谷雅史さん。祖父から3代にわたる酪農家で、50頭の乳牛を飼育している。ウクライナ戦争が起きたころから餌代が右肩上がりで上昇し、さらに夏の猛暑で電力代がかさんだ。最近、来月の運転資金も含めて新たに200万円を借りたという。
「増え続ける借金を重ねながら365日休みなく牛乳を搾っています。いつか乳価が上がるだろうと淡い期待を持っていますが、希望が持てません」。
コロナ禍前の国が増産を勧めた時期にトラクターなどを購入し、返済も続けなければいけない。「大儲けしたいのではなく、牛を飼って普通にご飯を食べたいだけだが、もう限界にきています」と訴え、現状のまま続けば廃業に向かう農家が大量に出ると警鐘を鳴らし、「酪農ヤバいです。壊滅の危機です」と語気を強めた。
スピーチのあと金谷さんは「乳価が1キロ10円上がったが、30円でトントン、50円引き上げなら子どもに継がせたいというのが本音です。ただ、消費者に負担してもらうというより、やはり国が農家を支える仕組みを考えてほしい。この訴えを農水大臣と農水省職員に受け止めてほしい」と述べた。
「令和の畜産危機」は限界 豚や鶏の畜産農家も深刻な状況訴え
農水省前には、豚や鶏を引き連れた畜産農家も訪れ、現場の窮状を訴えた。
群馬県で45年間にわたって養豚業を続ける上原正さんは「平成の畜産危機と言われた2008年の飼料価格高騰は1年で戻ったが、令和の畜産危機といわれる今回は配合飼料価格がうちの場合、2倍になり、来年以降も値上げが予定されている。借金で飼料や給与を払わなければならない状況もあり、もう限界に来ています」と危機的な状況を訴えた。
群馬県では、後継者がおらずに廃業を考える農家も出始めているが、借金で規模拡大し、辞めるに辞められない農家もいるといい、飼料価格の高騰分を全額補てんする仕組みづくりなどを改めて求めた。
埼玉県の浅子紀子さんは、さいたま市内の数少ない地鶏養鶏農家(鶏卵)で、鶏を引き連れて駆けつけた。「鶏の餌の価格が上がってかなり大変ですが、自前の餌で何とか頑張ろうと取り組んでいます。鳥も豚も牛も大事な国民の食料であり、食料を守るのが政府だと思います。国民の立場から考えてほしい」と訴えた。
署名添えた緊急要望書を提出
署名を添えた緊急要望書を提出
農民連の長谷川敏郎会長らは同日、藤木眞也農水大臣政務官に生産農家約500人分の署名を添えた「畜産経営を継続するための緊急要望書」を渡した。すでに提出した分を合わせて署名は900人に達したという。
長谷川会長が「新しい対策を考えてもらわないと農家を支援する現行のシステムは機能不全に陥っている。緊迫した気持ちで現場の声に応えてほしい」と対応を求めたのに対し、藤木政務官は「財務が固い状況にあるが、今回は平時の対応と違うという気持ちで役所の皆さんと取り組んでいる」と述べ、農家支援に向けて努力を続ける姿勢を示した。
要請後、長谷川会長は「酪農家が一番厳しい状況にあり、何らかの対策を取らないという点では一致した。本日の行動を通して農家の気持ち、叫びを表に出すことはできたと思う」と述べた。
農民連では、今後も畜産農家からの署名集めを続け、年末に改めて農水省に提出することにしている。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】野菜類・花き類にタバコガ類 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年10月20日
-
【注意報】野菜類、花き類にチョウ目害虫 県下全域で多発のおそれ 愛媛県2025年10月20日
-
【注意報】野菜類、花き類にオオタバコガ 県内全域で多発のおそれ 愛知県2025年10月20日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】今の日本経済にアホエノミクスは要らない 弱者切り捨て政策再び2025年10月20日
-
JAの良さ生かす内部統制 役員の役割、具体例から学ぶ コンプライアンス実践トップセミナー2025年10月20日
-
組織に求められるガバナンス・内部統制と理事の役割 アクセンチュア・プリンシパルディレクター信森穀博氏2025年10月20日
-
スマホやPCから入院・手術共済金請求を可能に JA共済アプリ新機能「Web請求」 JA共済連2025年10月20日
-
「ハロウィンスイカ」10月限定で出荷 約4000玉を見込む JA菊池2025年10月20日
-
すかいらーくHD発行のサステナビリティボンドに投資 JA共済連2025年10月20日
-
飛騨牛が30%OFF「JAひだ」合併30周年特別記念セール開催中 JAタウン2025年10月20日
-
石川の米や能登牛など約40商品「お客様送料負担なし」で販売中 JAタウン2025年10月20日
-
適用拡大情報 殺菌剤「パレード15フロアブル」 日本農薬2025年10月20日
-
首相選挙で見せた一部の野党の醜さ【森島 賢・正義派の農政論】2025年10月20日
-
食痕から「カモ被害」を識別する標準作業手順書を公開 農研機構2025年10月20日
-
公式キャラクター「トゥンクトゥンク」と「きぼうの種」が宇宙へ 帰還後にGREEN×EXPO 2027で展示 国際園芸博覧会協会2025年10月20日
-
鈴木宣弘氏の緊急提言 文春新書『令和の米騒動 食糧敗戦はなぜ起きたか?』発売2025年10月20日
-
福島県有数の米どころ 大玉村産初のブランド米「あだたらの恵」発売2025年10月20日
-
丸かじりできる涙の出ないタマネギ「スマイルボール」2025年収穫分を販売開始 ハウス食品2025年10月20日
-
ストレス発散に ザクッと砕ける「雷砕あげ 旨塩だれ味」新発売 亀田製菓2025年10月20日
-
物価高騰でふんばる「こども食堂」渋谷区ふるさと納税型クラファンで募集中 むすびえ2025年10月20日