2023年シーズン高病原性鳥インフルエンザウイルスの特徴を公表 農研機構2024年9月25日
農研機構は、2023年シーズンに国内で検出された高病原性鳥インフルエンザウイルスゲノムを解析し、遺伝子型からその由来を推定した。野鳥由来の多様なウイルスの出現・国内侵入による家きんでの発生が4シーズン連続していることから、今後も国内家きん飼養施設へのウイルス侵入に対する警戒を呼びかけている。
2023年シーズン(2023年11月25日から2024年4月29日まで)は、11事例の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が家きん飼養施設で発生し、国内では初めて2020年シーズンからの4シーズン連続発生となった。
農研機構は国内に侵入する高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)ウイルスの全ゲノムを解析し海外のゲノム情報と比較することで、世界規模のウイルスの流行動態のモニタリングを続けている。2023年シーズンのHPAIウイルスについては、家きんから分離された10株のH5N1亜型および1株のH5N6亜型HPAIウイルス計11株の全ゲノム解析を行い、2種類の遺伝子型(H5N1亜型10株はG2d0、H5N6亜型1株はG2c-12)に分類されることを明らかにした。
そのうち遺伝子型G2d0は2021年と2022年シーズンにも国内で検出されており、3シーズン連続での検出となったが、G2c-12は2023年シーズンに新たに検出された遺伝子型で、一部の遺伝子分節が国外の野鳥由来の鳥インフルエンザウイルスに由来していた。
鳥インフルエンザウイルスは、カモなどの野鳥集団で感染を繰り返して生存を維持し、渡りに伴い国内に侵入すると推察されている。2023年シーズンに検出されたG2c-12のウイルスも同様に、ウイルスが野鳥集団で感染を繰り返すことで、遺伝子再集合が起こり出現した可能性がある。夏季の間に国内の家きんや野鳥からウイルスは検出されていないことから、国内に同じ遺伝子型のウイルスが残っている可能性は極めて低く、国内発生と同時期に国外(韓国)の家きんから、同じ遺伝子型のウイルス(G2d-0、G2c-12)が検出されていることからも、これらのウイルスは2023年シーズンに渡り鳥によって両国に運ばれてきたと推測される。
一方、環境省が2023年10月4日から2024年4月30日までに回収・採取した156事例の野鳥、野鳥糞便及び湖沼の水などの環境試料からは、H5N1亜型およびH5N6亜型に加え、H5N5亜型のHPAIウイルスが検出。そのうち、これまでに農研機構で解析した50事例の検体からは、家きん由来ウイルスと同じ2種類の遺伝子型に加え、2種類の遺伝子型(G2a-2とG2d-4:ともにH5N5亜型)を検出した。これにより、2023年シーズンは少なくとも4種類の遺伝子型のウイルスが国内に侵入していたことが明らかになった(図1)。
図1:遺伝子解析から推定される国内へのHPAIウイルスの移動経路
また、発生事例の家きんから分離した2種類の遺伝子型の代表ウイルス株について、鶏の自然感染経路である経鼻接種による感染実験を行ったところ、いずれも鶏に対して高い致死性を示し、遺伝子型による差異はなかった。
なお、2023年シーズンに分離された株の推定アミノ酸配列解析の結果、一部のウイルスを除いて抗ウイルス薬への耐性及び哺乳類でのウイルス増殖に関連する変異は見つかっておらず、これらのウイルス株が直ちにヒトでの流行を引き起こすリスクは低いと考えられる。
2023年シーズンの家きん飼養施設での発生事例数は前シーズンの84事例と比較して大幅に減少したものの、野鳥での検出事例数は過去4シーズンの中で2番目に多かった。HPAIウイルスの全ゲノム解析により、2023年シーズンの家きん由来ウイルスは国内に飛来する野鳥集団で維持されており、野鳥および野鳥の生息環境中のウイルス濃度の高まりが4シーズン連続発生の一要因となったと推測。世界ではHPAIの感染が継続的に報告されていることから、今後もより一層、農場へのウイルス侵入に対する警戒が必要となる。
重要な記事
最新の記事
-
令和7年秋の叙勲 西沢耕一元JA石川県中央会会長ら93人が受章(農協関係)2025年11月3日 -
シンとんぼ(166)食料・農業・農村基本計画(8)農業の技術進歩が鈍化2025年11月1日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日 -
農薬の正しい使い方(56)細菌病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第322回2025年11月1日 -
酪農危機の打破に挑む 酪農家存続なくして酪農協なし 【広島県酪農協レポート・1】2025年10月31日 -
国産飼料でコスト削減 TMRと耕畜連携で 【広島県酪農協レポート・2】2025年10月31日 -
【北海道酪肉近大詰め】440万トンも基盤維持に課題、道東で相次ぐ工場増設2025年10月31日 -
米の1等比率は77.0% 9月30日現在2025年10月31日 -
2025肥料年度春肥 高度化成は4.3%値上げ2025年10月31日 -
クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT2025年10月31日 -
(459)断食:修行から管理とビジネスへ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月31日 -
石川佳純が国産食材使用の手作り弁当を披露 ランチ会で全農職員と交流2025年10月31日 -
秋の果実王 旬の柿を堪能 福岡県産「太秋・富有柿フェア」開催 JA全農2025年10月31日 -
「和歌山県産みかんフェア」全農直営飲食店舗で開催 JA全農2025年10月31日 -
カゴメ、旭化成とコラボ「秋はスープで野菜をとろう!Xキャンペーン」実施 JA全農2025年10月31日 -
食べて知って東北応援「東北六県絆米セット」プレゼント JAタウン2025年10月31日 -
11月28、29日に農機フェアを開催 実演・特価品販売コーナーを新設 JAグループ岡山2025年10月31日 -
組合員・利用者に安心と満足の提供を 共済事務インストラクター全国交流集会を開催 JA共済連2025年10月31日 -
JA全農と共同開発 オリジナル製菓・製パン用米粉「笑みたわわ」新発売 富澤商店2025年10月31日 -
【スマート農業の風】(20)GAP管理や農家の出荷管理も絡めて活用2025年10月31日


































