採血せずに牛の血液検査実現 画期的技術を開発 北里大、東京理科大2025年9月8日
北里大学獣医学部の鍋西久准教授、東京理科大学先進工学部の相川直幸教授らの研究グループは、マルチスペクトルカメラで牛の尾静脈付近(尻尾裏側)を撮影することで、非侵襲的にかつ瞬時に複数の血液成分の同時分析が可能となる新たな手法を開発した。これまでに、血液成分のうち牛の飼養管理上重要な12項目について検討を進め、いずれも80%以上の予測精度を実現。この新技術による牛の代謝プロファイルテストが普及し栄養状態の管理に活用されることで、生産性の向上が期待される。この研究成果は、9月3日に開かれた第168回日本獣医学会学術集会で発表された。

牛の血液検査は代謝プロファイルテストと呼ばれ、疾病予防や生産性向上のために有用な手法だが、実施にあたっては、採血とそれに伴う牛の保定、採取した血液の分析にかかる労力、費用および時間が大きな制限となる。生産現場で広く普及する技術体系になっていないため、これらの課題を解決できる新技術の開発が望まれていた。
そこで研究グループは、マルチスペクトルカメラで牛の尾静脈付近(尻尾裏側を撮影することで、非侵襲的にかつ瞬時に複数の血液成分の同時分析が可能となる新たな手法を開発。この技術は、牛の尻尾裏側の尾静脈をマルチスペクトルカメラで撮影することによって生成される血管の画像データから、波長に応じた複数の値に関する特徴量を取得し、人工知能による機械学習で血液成分の濃度(範囲)を推定するもの。
同研究グループでは、血液生化学成分のうち牛の飼養管理上重要な12項目グルコース、コレステロール、ビタミンAなどについて検討を進め、現時点でいずれも80%以上の予測精度を実現。生産現場での活用が期待できる技術になりつつある。
同技術によって牛の代謝プロファイルテストの機動性と普及性が高まるとともに、栄養状態の精密
化および最適化が実現することによって、生産性の改善に寄与できる。また、高い生産性と両立する持続的生産体系に必要不可欠なアニマルウェルフェアに配慮した飼養管理技術としても期待される。
今後は、更なる測定精度の向上を進めながら、クラウド上で個体ごとや農場ごとにデータを管理できる代謝プロファイルテストプラットフォームのシステム化を進める。また、使用者に対して最適な飼養管理方法を助言できるアドバイスシステムの開発を目指している。
なお、同技術の基本技術は、北里大学と東京理科大学との共同で特許出願済みで、北里大学発ベンチャーのライブストックジャパン株式会社において、事業化に向けた検討を進めている。
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