【集落営農がグローバルGAP】作業員の安全が最優先 団体認証で産地力向上も2017年9月4日
JAグリーン近江の協議会(滋賀)
滋賀県近江八幡市にある4つの集落営農法人で構成する「JAグリーン近江老蘇集落営農連絡協議会」が米で生産工程や安全管理などを評価する国際基準の「GLOBALGAP(グローバルギャップ)」の認証を取得した。動機は集落営農の作業を行う人の安全にある。集落営農は、兼業農家が慣れない作業をするという事情がある。このため経営にとって最大のリスクである作業中の事故やけがを回避するためのGAP認証を取得したのだが、これを弾みに米以外の農産物にも広げ、さらに株式会社化も視野に入れている。
GAP認証の取得は、それによって生産物の有利販売を狙うケースが多いが、老蘇地区集落営農連絡協議会のGAP認証取得へのきっかけは、構成員である作業者の安全だった。滋賀県は集落営農の先進地だが、農業以外の就業機会に比較的恵まれている。このため担い手のほとんどは兼業農家で、別に会社勤めの「本業」を持っているため、農作業でけがをしても一般労災の補償が適用されないという問題があった。
同協議会の構成法人である「ファームにしおいそ」の顧問・安田惣左衛門さんは「作業中の事故が増え、特に規模が大きくなって大型機械が入るようになると事故が一番の心配事になった」という。そのころJAから紹介されたグローバルGAPが、労働者の安全衛生管理体制を柱の一つにしていると知った。3年近くかけて準備し、ことしの8月に取得した。
「当初、GAPを農産物の販売につなげようとは思っていなかった」というが、認証取得を弾みに米のほか大豆、麦についてこの秋と来春、そして来年秋には野菜でも認証を取得する予定だ。特に、米の先行き不安から、野菜の導入に力を入れている。
こうした動きに対してJAは積極的に支援。GAPは半年、あるいは1年ごとの内部検査が欠かせず、これに40~50万円の費用がかかる。これをJAの職員がフォローする。同JAのTAC和田洋さんは、「GAP認証は個々の構成法人でなく、協議会がどのように生産・経営管理しているかがポイントになる。それもJAの組織として団体取得したものであり、生産資材の購入も、農産物の出荷も当然、統一して行わなければならない。JAとして究極の組織運営といえるのではないか」という。
同協議会は、さらに構成員が高齢化する集落営農は、作業員の雇用も必要になることなどから株式会社化も視野に入れている。
(写真)GAP認証取得を三日月県知事(前列中央)に報告する協議会の関係者、GAP認証で水田を回る老蘇地区の集落営農法人のメンバー
(関連記事)
・【横田敏恭・GAP普及推進機構理事長に聞く】グローバルGAPは世界への通行手形(17.07.31)
・GAP狂騒曲批判(17.06.28)
・GAP認証の飛躍的拡大めざす 農水省が「全国GAP推進会議」開催(17.05.30)
・G-GAP「輸出も視野にいれた取得を」 東京野菜普及協会(17.05.12)
・GAP実践・認証取得 支援体制を整備(17.05.12)
・GAP認証農場 3倍以上に-自民PT(17.05.10)
重要な記事
最新の記事
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(1)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(2)2025年9月18日
-
【座談会・どうするJAの担い手づくり】JA鳥取中央会・栗原隆政会長、JAみえきた・生川秀治組合長(3)2025年9月18日
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(3)病気や環境幅広く クリニック西日本分室 小川哲郎さん2025年9月18日
-
【全中・経営ビジョンセミナー】伝統産業「熊野筆」と広島県信用組合に学ぶ 協同組織と地域金融機関の連携2025年9月18日
-
【石破首相退陣に思う】米増産は評価 国のテコ入れで農業守れ 参政党代表 神谷宗幣参議院議員2025年9月18日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】協同組合は生産者と消費者と国民全体を守る~農協人は原点に立ち返って踏ん張ろう2025年9月18日
-
「ひとめぼれ」3万1000円に 全農みやぎが追加払い オファーに応え集荷するため2025年9月18日
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
石川佳純の卓球教室「47都道府県サンクスツアー」三重県で開催 JA全農2025年9月18日
-
秋の交通安全キャンペーンを開始 FANTASTICS 八木勇征さん主演の新CM放映 特設サイトも公開 JA共済連2025年9月18日
-
西郷倉庫で25年産米入庫始まる JA鶴岡2025年9月18日
-
「いざ土づくり!美味しい富山を届けよう!」秋の土づくり運動を推進 富山県JAグループ2025年9月18日
-
日本初・民間主導の再突入衛星「あおば」打ち上げ事業を支援 JA三井リース2025年9月18日
-
ドトールコーヒー監修アイスバー「ドトール キャラメルカフェラテ」新発売 協同乳業2025年9月18日
-
「らくのうプチマルシェ」28日に新宿で開催 全酪連2025年9月18日
-
埼玉県「スマート農業技術実演・展示会」参加者を募集2025年9月18日
-
「AGRI WEEK in F VILLAGE 2025」に協賛 食と農業を学ぶ秋の祭典 クボタ2025年9月18日
-
農家向け生成AI活用支援サービス「農業AI顧問」提供開始 農情人2025年9月18日
-
段ボール、堆肥、苗で不耕起栽培「ノーディグ菜園」を普及 日本ノーディグ協会2025年9月18日