日本農業の未来をTACの力で 期待大きい担い手支援 【JA全農 TACパワーアップ大会】2019年11月15日
いま農業の現場で、T(とことん)、A(会って)、C(コミュニケーション)を目的とするTAC(タック)の活動に期待が高まっている。TACは特に営農支援のほか、資金や販売など幅広く担い手の所得アップを支援するもので、全国261JAで1841人(2018年現在)が活動している。JA全農は11月14、15日、横浜市内のホテルで「TACパワーアップ大会2019」を開き、JA全農会長賞のJA新いわてをはじめ優秀な活動をしているJAとTACを表彰。担い手とともに活力ある地域社会づくりを目指し、日本農業の未来を切り拓くことを申し合わせた。
開会のあいさつをする長澤豊全農会長
TACは1996年「肥料農薬専任渉外制度」の流れから、2004年「営農経済渉外による出向く体制構築」を経て、2008年から「TAC」を全国統一名称として定め、地域農業の担い手に出向く活動を進めてきた。
パワーアップ大会は、優れた活動を行ったJAとTACを表彰して励まし、その活動体験を共有し、併せてその時に最も重要と思われることをテーマに意見交換する。
今回のテーマは、(1)労働力支援の実践やITCなど先進営農技術の導入等による農業生産の維持拡大、(2)JAグループの総合力を発揮した担い手への総合事業提案、(3)出向く態勢の拡充によるTACの活動強化の3つ。
12回目となる今回の大会のあいさつで全農経営管理委員会の長澤豊会長は、「消費者のため、国民のため、日本の農業、かけがえのない自然を守るわれわれの取り組みが全国に広がるように」と、パワーアップ大会およびTACの活動に期待を込めた。
JA表彰を受けたJA新いわて(全農会長賞)、JAたじま、JA筑前あさくら、JAふくおか八女の4JAが事例発表した。
◇ ◆

JA表彰を受けた4JAの代表
JA新いわては担い手訪問のなかで農家の手取り向上に向け、コスト低減、労働力の軽減、収量の増大など、トータルで指導して欲しいと言う声が多かったことから「担い手ニーズが多様化し、単独部門での対応は困難になっている」と判断し、TAC設置に踏み込んだ。
専任TAC4人、兼任3人を営農経済センターに配置し、全農県本部と連携した農家手取り最大化プロジェクトを設置。水稲を中心に地域のリーダー的な個人・法人の6経営体をモデルに資材費低減・省力化、生産性向上につながる11のトータル提言実践メニューを提案し、農家手取り最大化に取り組んでいる。
JAたじまはTACを中心に集落営農の組織化、法人化への対応を強化している。訪問活動から、大規模農業者は経営者であり、栽培方法の悩みだけでなく経営の悩みを抱えていることが分かった。平成28年に専務直轄の「担い手支援センター」を設け、6人の専任TACを配置し、「何を作るか」でなく、販売、設備投資、資金繰りなどを中心に相談に応じる。
JA筑前あさくらは管理者1名(兼任)を含め4人のTAC専任を配置。同JAは特に平成29年の九州北部豪雨災害を受けた地域であり、生産者の営農意欲喪失が問題になっていた。このためJAは地域農業振興策として新規にアスパラガスの栽培を提案。耕作放棄地40aを確保し、JAが2年間栽培して、令和3年3月から希望者に引き継ぐ。また被災地の生産組合からの要望で、災害土砂を活用した水稲栽培の実証試験にも取り組んだ。
JAふくおか八女は管理者(兼任)1人、専任2人のTAC体制。水稲、大豆、麦、普通作共通、イチゴの5品目でモデル法人を選び実証試験を行っている。特に水稲では、一定の成果があった「密苗」「カスミン液」「流し込み施肥」「畦畔除草剤」「麦わらすき込み」「明渠による排水対策」などが、他の担い手にも広がっている。
◆経営継承は計画的に
大会では石川県能美市の、たけもと農場取締役の竹本彰吾氏(36)が基調講演し、問題提起した。同農場は9人のスタッフで47haの農地で、米、麦、大豆などを生産。特にリゾットに向くイタリア米の栽培とその加工、スマートフォンによる営農記録、Z-GISによる圃場管理など、能美市を代表する農家集団となっている。
竹本氏は特に経営継承について話し、そのポイントを、(1)バトンタッチの期限を決める、(2)元気なうちにバトンタッチする、(3)定期的な振り返り、を挙げる。特に3番目のポイントは、継承した後も親と話し合うことは重要だが、「親子が相対するのでなく、TACなど事情の分かっている第3者を交える方がよい」と言う。
同氏は、これを就農後10年の経営継承計画を作って実行した。10年を3つに分け、大学卒業後の23歳から32歳までの初期は「社員」、中期は「役員」、後期は「専務取締役」として、それぞれやるべきことを定めた。

TAC表彰を受賞した8人のTAC
担い手向けTAC通信表彰の4JA
なお大会では、優れたTAC活動を展開しているJAとTAC、およびTAC通信表彰の取り組み事例報告も行った。
そして、大会宣言で「担い手の声に向き合い、JAグループの力を結集して応えます」「担い手とともに活力ある地域づくりを目指します」「TACの輪を広げ、日本農業の未来を切り拓きます」を採択し、参加者約400人がTAC活動への意識を新たにした。
◎表彰を受けたJAおよびTACは次の通り。
▽JA表彰=JA新いわて(岩手県)(全農会長賞)、JAたじま(兵庫県)、JA筑前あさくら(福岡県)、JAふくおか八女(福岡県)
▽TAC表彰=宮澤直樹(埼玉・JA埼玉中央)、松井輝暉(石川・JA石川かほく)、井口太輔(滋賀・JAグリーン近江)、和田洋(同)、片寄俊一(島根・JAしまね)、山田光俊(同)、川内辰彦(佐賀が・JAさが)、山下清弥(熊本・JA本渡五和)
▽担い手向けTAC通信表彰=髙橋華奈(新潟・JA佐渡)、岡田幸司(滋賀・JA東びわこ)、國友隆之(滋賀・JA北びわこ)、谷口富美彦(兵庫・JAたじま)
(関連記事)
・JA全農改革実践レポート
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