特殊冷凍で変わる未来、缶入り日本酒世界に、カブトムシで食料不足解消【JA支援のスタートアップ企業】(3)2022年11月17日
農業を中心に課題解決に取り組むスタートアップ企業をJAグループが支援するJAアクセラレータープログラムの第4期成果発表会が11月9日に開かれた。報告した9社のうち最後の3社の取り組みを紹介する。
「デイブレイク」の春日大輝執行役員CCO
特殊冷凍でサステナブルな食業界を
「デイブレイク(株)」の春日大輝執行役員CCOは、すでに技術を確立している特殊冷凍を軸とした事業について説明し、食材廃棄や農家の豊作貧乏といった課題について、廃棄されていた収穫物を特殊冷凍用の流通網に乗せることで付加価値を高めることで解決し、サステナブルな食業界を実現できると強調した。
今回のプログラムで、JA関係各所の約80人に向けてオンラインで幅広く活用事例などを周知したほか、農業WEEKで講演するなど新たな販路拡大に取り組んだ。この結果、JA香川県では特殊冷凍した県産品を世界に発信する取り組みがスタートしたほか、北米ではラーメンを凍結して日本のラーメンのおいしさを現地に伝える試みも始まった。春日さんは「特殊冷凍を通して生ものに戻ることもたくさんある。JAグループと一緒に流通網を築き上げて新しい未来をつくることができると確信しています」と力強く語った。
「Agnavi」の玄成秀代表取締役CEO
缶入り日本酒を国内外に発信
「(株)Agnavi」の玄成秀代表取締役CEOは、日本酒の消費量がピーク時から77%も落ち込む中、全国の酒蔵から取り寄せた日本酒を一合180mlの缶「ICHI-GO-CAN」として販売している事業について説明、缶にすることで適量で持ち運びも便利、さらにリサイクルできるといった多くのメリットがあると述べた。
今回のプログラムを通して、販路拡大や新たな商品開発にも取り組んだ。商品開発では、神奈川県相模原市産のうるち米を原料とした日本酒の商品化を進め、ギフトや冠婚葬祭の引き出物などへの展開を検討している。販路拡大では埼玉県や神奈川県のJA直売所での販売が決まったほか、農林中金香港事務所などの支援を受けて今月から香港とシンガポールで販売を始めることになった。玄さんは「日本酒の缶はまだ3%しかなく、これをいかに早く伸ばしていくかが私たちのミッション。生産数1億本を目指して日本酒の事業展開を進めたい」と目標を語った。
「TOMUSHI」の石田健佑代表取締役COO
カブトムシで世界の食料不足解消を
「(株)TOMUSHI」の石田健佑取締役COOは、「カブトムシがめちゃめちゃ大好きな双子が兄弟で創業した会社です」と同社を紹介し、きのこ農家と連携して廃菌床などの有機廃棄物を独自の技術でエサ化してカブトムシを低コストで量産し、ペットや飼料化、タンパク質利用といった幅広い用途で事業を展開していることを説明した。
プログラムを通してさらなる農家とのマッチングや飼料としての可能性などを模索した。この結果、カブトムシ生産のプラント数は全国で4件から22件に、企業や自治体など協業数が3件から17件に拡大した。今後もJAグループと連携して、廃棄されているものなどを活用して肥料や飼料の開発や代替たんぱく質を使った商品の販売を目指している。途中からプレゼンに立った石田陽祐代表取締役CEOは「中長期的には世界展開も目指し、昆虫の力でゴミを資源化し、世界の食料不足を解消したい」と将来への意気込みを語った。
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