総合力発揮で課題解決 担い手コンサルで初のコンペ 農林中金2024年3月7日
農林中央金庫は3月6日、東京・大手町のJAビルで担い手コンサルティングコンペティションを開いた。会場参加のほかウェブで約230人が視聴し、優良事例の共有化を図った。
初めて開催された担い手コンサルコンペティション
JAや県域の営農経済部門とともに、担い手の経営分析や課題解決提案を行う担い手コンサルティングは2021年度から本格展開をしている。23年度も300件のコンサルが実施され、「JAバンクが発揮すべき金融仲介機能として農業融資と並ぶもう1つの柱」(八木正展代表理事常務)と位置づけている。
この日のコンペティションは全国で取り組みを共有する目的で初めて行われたもので、応募41事例のうち6件が優良事例として表彰された。
農林中金仙台支店は自社鶏卵ブランドを確立した宮城県の採卵鶏業をコンサル。販売価格設定のルールがないことに着目し、飼料単価の改定に応じてコスト積み上げで価格交渉を行うことを提案し業績向上につなげた。
長野県のJA信州うえだは水稲を中心に54haを耕作する農業法人へのコンサル事例を報告した。近隣の離農により生産規模は拡大しているが、労働力に限界があった。解決策として新品種「風さやか」の導入による作期の分散と倒伏回避、さらに水管理システムの導入、土壌分析に基づく無駄のない施肥などを行って収益性向上を図っている。
香川県信連はイチゴを生産販売する法人に対して、エリア別の収支や出荷箱別の収益率などを分析した。解決策として単収向上にはビニールの二重張りなどエリアごとに収量管理や、出荷調整での収益向上には出荷規格の変更や、パッキング目標時間の設定などを導入したて成果を上げた。
JA山口県は地域の営農組合を基盤とした大規模法人に対してコンサル。離職により正社員が不在で高齢者で作業をしている現状に対して、人材確保プロジェクトチームを組織し、就労規則や賃金水準の見直しや他法人の視察などを行うなど、魅力ある職場づくりの取り組みに力を入れた。また、年間作業行程の見直しから小麦の品種転換なども行った。
人材確保では行政の協力も得るなど、役員からは「最初はコンサルに懐疑的だったが、課題が見える化され、多岐にわたる検討ができた」などの評価を得た。
農林中金宇都宮支店は県下10JAすべてで担い手コンサルに取り組むという実績を上げた。そのためにJAが悩む担当者不足やコンサルのノウハウなどをサポートした。JAでは「今後のJAにとって必要な取り組みだ。今後は、営農指導だけでなく経営指導にもつなげていかなければならない」との声が出ているという。2025年度の担い手コンサルティングのJAでの「自走」をめざしている。
茨城県信連は小松菜、水菜、レタス、ホウレンソウなどを生産販売している法人をコンサル。他県に第2ほ場を開設する計画があることや、輸出にも意欲的なことから基礎的な財務強化と品目別の収支を分析。とくにグラフ化により、小松菜の栽培面積は6割を占めるものの、経常利益では25%程度にとどまり、逆に栽培面積7%のレタスが小松菜を上回る経常利益を上げていることを明らかにした。また、有償コンサルティングも行っていることも紹介した。担い手コンサルによって系統との取引が深化したという。
農林中金の川田淳次常務は現場での部門間連携の重要性を指摘するとともに、担い手コンサルという「型」として担い手に対応することで課題解決につなげる可能性を強調した。
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