オレンジ果汁 世界で100万t生産減 輸入価格3倍に急騰 農中総研が原料調達でセミナー2024年10月24日
農林中金総研は10月23日、「調達環境の変化に伴う食品産業の注目点」をテーマにWebセミナーを開いた。
そのなかで河野駿哉研究員は「オレンジ果汁の調達環境と企業の取り組み」を報告した。
オレンジ果汁の輸入量は2023年で5.34万klで輸入果汁のなかで1位(28%、2位りんご果汁5.07万kl、3位ぶどう果汁3.65万)を占め、ブラジルからの輸入量が5割を超す。
世界のオレンジ果汁の生産と輸出はブラジルだけで7割以上を占め、輸入はEUと米国が半分以上を占める。
ただし、オレンジ果汁の世界生産量は大きく落ち込んでおり、2006/07年の世界生産量は約242万tだったのが、2023/24年では約147万tと約100万t減少している。
生産減の要因はカンキツグリーニング病。媒介中によって広がり、感染すると早期落果や未熟果が発生するだけでなく、徐々に衰弱してやがて枯れてしまうという。有効な薬剤などはなく、切り倒して園地から隔離するしかない。
米国はかつては主要産地だったが、2005年にフロリダでグリーニング病が発生して生産量が低下した。ハリケーンの影響も大きいといい、2007/08年に80万tあった生産量は2023/24年では10万t切っている。その反動で輸入が増加し、かつては15万t~25万tだったが、近年は40万t前後となっている。
最大の産地であるブラジルもグリーニング病や干ばつで生産が停滞している。生産量が落ちても翌年にはリカバリーしてきたが、河野研究員によると2019/20と20/21シーズンは需要に対して生産が大きく不足、それ以降も需要に追いつかず「期末在庫はほぼ尽きている」という。
こうしたなか国際指標となる冷凍オレンジ果汁のニューヨーク商品取引所の先物価格は3倍以上高騰し過去最高の1ポンド5ドル水準となっている。
日本の冷凍オレンジ果汁の輸入価格も急騰し2016年から2021年までは1kg200円台だったのが、23年には同500円近くになり、さらに高騰しているという。
こうした状況でも米国は輸入量を38%増やしたが、日本は34%低下、購買力が低下し「買い負け」している状況だ。在庫ひっ迫によってアサヒ飲料「バヤリース」、森永乳業「サンキスト」、「雪印メグミルク「ドール」など相次いで販売休止をしている。
今後はどうなるのか。河野研究員によるとブラジルの柑橘産地でのグリーニング病はの発生率は40%を超えており、感染初期の樹木も多いため潜在的なリスクが高いという。専門家のなかには今後10年間で生産量は20%低下するとの見方もあり、今後も世界需給はタイトな状況が続くことが予測されると見る。
今後の飲料メーカーの対応について輸入先の変更や多角化、果汁ミックスジュースの場合はオレンジ果汁の割合を下げて他の原料で代替するなどが考えられるという。ただ、輸入先としてイスラエルやメキシコが考えられるが、品質や香味、価格などに課題があるという。
一方でこれを機に国産の温州みかん果汁での代替も考えられる。実際、協同乳業は4月に「農協果汁温州みかん100%」を新発売した。えひめ飲料の「ポンジュース」も国産果汁比率を増やし、原材料表示では国産が一位表示となった。セブンイレブンもブラジル産オレンジと国産果汁をミックスした商品を4月から新発売している。
国産温州みかん加工仕向け量は1992年のオレンジ果汁輸入自由化で安価なオレンジ果汁が輸入されるようになり減少し、産地に打撃を与えた。それから30年、安価な輸入原料による国内製造という構図が変わるのか。原料の調達が困難になるなかで、改正基本法では農業と食品産業の連携を重視している点からも食品産業の動向が注視される。
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