組合員が働く協同組合で課題解決を ワーカーズコープ連合会の古村伸宏理事長が講演 JA全中のアカデミー①2024年12月5日
JA全中教育部主催の第4回オンラインJAアカデミーが11月22日に東京都内で開かれ、ワーカーズコープ連合会の古村伸宏理事長が「組合員が働く協同組合」をテーマに講演した。アカデミーはJA内外の優れた経営者らの講演・報告を柱に、JA・中央会・連合会の役員や職員がJAの将来ビジョンを考える機会としている。今回は会場参加20人、オンラインで40人が参加した。
古村伸宏ワーカーズコープ連合会理事長
古村理事長はまず、2022年10月1日に施行された「労働者協同組合法」の意義や、第30回JA全国大会決議での労働者協同組合に関する記述にも触れ「公益性を持った組織地域づくりということが非常に大事なスキームと評価された」ことを歓迎した。
すべての党・会派で法制化
労働者協同組合法について四つの特徴を挙げた。一つ目は「すべての党・会派の参加で作り上げた議員立法」。二つ目に「自分たちで試して内容を定めた市民立法」。三つ目に「"働く"ことにテーマを置いた、おそらくは日本で初めての非営利団体」。四つ目に「持続可能で活力がある社会の実現に資する」という理念から「組織の中だけでなく地域に解き放っていく、共益と公益を掛け合わせた」法律であるとした。
法制化にあたっては、労災の適用や失業手当を受けるための「労働者性の確保」が争点になった。また「雇用労働とは違う労働を明示する意味で、協力し合って働く"協同労働"という言葉を使ってきた」ことなどを説明した。
他の法人制度との違いでは農村の地域運営組織(RMO)を例に挙げた。さらに、国交省の「小さな拠点」を核にした「ふるさと集落生活圏」形成推進事業も「集落全体を活性化していく際に、住民参加型、多機能型の地域運営、あるいは事業運営」など協同組合の役割に注目している。
「意見反映」は労働者性の担保
労働者協同組合法自体は第1条(目的)を軸に説明した。一つは「ワークライフバランス、ディーセントワークを内包した組織」。二つ目に、基本原理として「出資、意見反映、従事」が明記され、特に「意見反映は(他の法人では)経営だが、労働者性を担保するために一番重要な意味を持つ」と説明。三つ目に、目的を①多様な働くニーズを満たす就労の機会の創出(個性の発揮、多様性を認め合う職場コミュニティー)②地域ニーズに応じて、労働者協同組合が仕事を作り出していく(仕事おこし)③持続可能で、活力ある地域社会の実現に資する、とする。
主な特徴は、第一に多様な就労ニーズを地域で満たすこと。最近は首都圏で歯医者の労働者協同組合が認可を受けた例や、現在のフリースクールの状況などから「近い将来には学校も登場するだろう」と予想した。二つ目は組合員が平等に1人1個の議決権と選挙権を持つこと。三つ目に設立手続きが「他の法人のように認可や認証ではなく、法律上の要件を満たし、登記すれば法人格が付与される準則主義であること」。四つ目は前出の「意見反映」、五つ目は「労働者性を担保するため、組合員の半分以上は労働契約を結ぶ」こと。六つ目は「非営利組織なので出資配当はできない」ことだ。
多種多様な形態
労働者協同組合の設立状況は、今年10月1日現在で110団体となり「現在は120を超えている」。施行前には「介護など福祉や保育園の運営などが多かったが、キャンプ場の経営やフェスティバルの運営など多種多様」だ。こうした状況から「ディーセントワークで自分らしく働きたい人たちが集まり、お互いの力を生かし、つながりあって働く、一人一人の主体性」が具体化されているとした。
組合の仕組みをどう活用していくか。古村理事長は「農水省関係では農福連携による『森の幼稚園』」や「鹿児島県の地域おこし協力隊による地域おこしプラス労働者協同組合」などの例を挙げ、「労働者協同組合の事業と組織運営が地域に開かれていく」可能性を示唆した。
法の周知期間を終え、今年8月からは「自治体と協同組合、中小企業経営者が協議会を作り、仕組みを周知する労働者協同組合活用促進モデル事業」が始まっている。
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